【人とくるまのテクノロジー展2019 横浜】ダイハツは往年のレーシングカー「P-5」を展示

2019.05.22 自動車ニュース 鈴木 真人
ダイハツP-5
ダイハツP-5拡大

ダイハツ工業は2019年5月22日、神奈川・横浜で開催中の「人とくるまのテクノロジー展2019」(開催期間:2019年5月22日~24日)に出展。2018年秋にレストアが完了した51年前のレーシングマシン「P-5」を展示した。

風洞実験を重ねて開発された「P-5」の流麗な空力ボディーはFRP製、シャシーはスチール製のパイプフレームとなる。ボディーサイズは全長×全幅×全高=3850×1650×990mm、ホイールベース=2250mm。
風洞実験を重ねて開発された「P-5」の流麗な空力ボディーはFRP製、シャシーはスチール製のパイプフレームとなる。ボディーサイズは全長×全幅×全高=3850×1650×990mm、ホイールベース=2250mm。拡大
戦うマシンならではのスパルタンなコックピット。メーターパネル中央に最も大きなメーターとしてエンジン回転計が配置されている。
戦うマシンならではのスパルタンなコックピット。メーターパネル中央に最も大きなメーターとしてエンジン回転計が配置されている。拡大
バケットタイプのシートを2座搭載。シフトレバーは運転席右側に位置する。
バケットタイプのシートを2座搭載。シフトレバーは運転席右側に位置する。拡大
「ダイハツ・コンパーノ」に搭載されていた1リッター直4の排気量を1.3リッターに拡大し、DOHC 16バルブヘッドとした「P-5」のエンジン。最高出力140psを発生。
「ダイハツ・コンパーノ」に搭載されていた1リッター直4の排気量を1.3リッターに拡大し、DOHC 16バルブヘッドとした「P-5」のエンジン。最高出力140psを発生。拡大
ダイハツブースの様子。人とくるまのテクノロジー展」と題した最新技術をお披露目するイベントではあるものの、“51年前の最新技術”が来場者には人気で、記念写真を撮る人が引きも切らずブースは終日にぎわっていた。
ダイハツブースの様子。人とくるまのテクノロジー展」と題した最新技術をお披露目するイベントではあるものの、“51年前の最新技術”が来場者には人気で、記念写真を撮る人が引きも切らずブースは終日にぎわっていた。拡大

半世紀前の最新技術に興味津々

自動運転技術やコネクティッドサービスなどの最新技術をアピールする企業展示が並ぶ中、異彩を放っていたのがダイハツブース。真ん中にどーんと置かれていたのは鮮やかなイエローとレッドにペイントされたマシン。低いノーズにガルウイングドア、ミドシップのレーシングカーである。

パネルを見ると、「P-5 レストアに賭けた熱い思い」と書いてある。“懸けた”が正しい表記だと思うが、要するに過去のダイハツが誇った技術をよみがえらせる温故知新の精神なのだ。「P-5」は、日本で本格的にモータースポーツが始まった時代の名車である。1963年に第1回日本グランプリが開催され、各自動車メーカーがこぞって参戦。この年に「コンパーノ」で乗用車市場に進出したばかりのダイハツは、1967年の第3回大会からレースに挑む。

当初はコンパーノをベースにマシンを仕立てていたが、初めて挑戦したピュアレーシングカーがP-5だった。コンパーノの1リッター直列4気筒エンジンをボアアップして1.3リッターに拡大し、DOHC 16バルブヘッドを与えて最高出力は140ps。鋼管フレームとFRPボディーの組み合わせで510kgという軽量を実現。小排気量ながら高い戦闘力を得たという。

1968年の日本グランプリで、P-5は総合10位、GP-1クラス優勝という戦績を残している。「トヨタ7」「日産R381」「ポルシェ・カレラ10」といったモンスターを相手に戦った結果なのだから、快挙と言えるだろう。驚くべき技術力なのはわかるが、なぜ今このクルマを展示するのか。

パネルには「当時の技術から今に通じる新たな発見」と書かれていた。旋回時にオイル切れしないオイルストレーナーの構造やフレームパイプ内に冷却水を流す軽量化の手法が紹介されているが、さすがに無理があるだろう。

苦しまぎれの言い訳で、ダイハツも本当は最新テクノロジーを展示したかったようだ。ただ、それは近々デビューする新型車に搭載されているものなので、大々的に発表するわけにはいかない。代わりに51年前のレーシングカーを出品することになったわけである。倉庫から見つけ出されたP-5のボディーをレストアしていたところ2年前に旧車ショップからエンジンを譲り受け、2018年10月に走行テストを成功させていたのだ。

ダイハツブースは大人気で、P-5を撮影しようと群がる人々でごった返していた。いまだ全容がわからない次世代技術より、半世紀前の最新技術のほうがクルマ好きにとっては興味深かったようだ。

(文=鈴木真人)

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