【F1 2021】待望の新シーズン、ハミルトン対フェルスタッペンの新旧対決で幕開け
2021.03.29 自動車ニュース![]() |
2021年3月28日(現地時間)、バーレーン・インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権の開幕戦バーレーンGP。絶好調だったプレシーズンテストでの勢いそのままに、レッドブル&マックス・フェルスタッペンが予選まで全セッションを席巻。しかしレースでは、劣勢に立たされた王者メルセデス&ルイス・ハミルトンによる必死の応戦が見られた。
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話題に事欠かないF1新シーズンの始まり
ホンダF1第4期の最後の年、7年ぶりの日本人ドライバーとしてアルファタウリからデビューする角田裕毅、シーズン前のテストで絶好調だったレッドブル&マックス・フェルスタッペン、8度目の戴冠を狙う王者メルセデス&ルイス・ハミルトン、パワーユニットをルノーからメルセデスに替えたマクラーレン、昨季大苦戦したフェラーリの復活、2冠王者フェルナンド・アロンソの復帰、ルノーからアルピーヌ、レーシングポイントからアストンマーティンに名前を変えた中団チーム、ミハエル・シューマッハーの息子ミックのGPデビュー……。何かと話題に事欠かない2021年のF1が、ついにバーレーンで開幕した。
咋2020年は、コロナ禍でカレンダーを急きょ変更しながら、全17戦のチャンピオンシップを無事完了させたF1。そこで自信をつかんだからなのか、今季は鼻息荒く、パンデミック終息前というのに史上最多となる23戦という強行軍が組まれている。
レギュレーションでは、技術面は基本的に前年度のキャリーオーバーで開発が大幅に制限されたが、ダウンフォース削減のためにマシン後方の空力パーツなどが削減、簡素化された。そして今季から歴史上初めてとなるコストキャップ制度が始まり、さらに2022年からはパワーユニット開発が凍結されるなど、F1は大きな変革の波にさらされている。自動車業界は“100年に一度の大変革”の時期を迎えているというが、F1も例外ではないのだ。
だが、多くが制限された状況下でも、新たなイノベーションやヒーローが誕生してきたことは、1950年から続くF1の長い歴史が証明していることでもある。史上まれにみる長いシーズンは、果たしてどんな展開となるのだろうか。
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フェルスタッペン、王者を突き放しポール奪取
F1には、「いかにプレシーズンテストが順調だったとしても、開幕戦が終わってみないと本当の勢力図は分からない」という決まり文句があるが、バーレーンGPでは、レッドブルがテストでの勢いそのままに快調な滑り出しをみせた。
フェルスタッペンは3回のフリー走行すべてでトップ。予選Q3では、王者ハミルトンを0.388秒も突き放し、自身4度目、昨季最終戦アブダビGPから2戦連続となるポールポジションを獲得したのだ。「全力を出し切った」というハミルトンは2番手。メルセデスが開幕戦でポールを取れなかったのは、2014年に始まったターボハイブリッド規定下では初めてのことである。
メルセデスのバルテリ・ボッタスが予選3位、フェラーリのシャルル・ルクレールは4位、アルファタウリのピエール・ガスリー5位。その後ろにはマクラーレンの2台が並び、移籍後初戦のダニエル・リカルド6位、ランド・ノリスは7位。フェラーリでの最初のレースとなるカルロス・サインツJr.は8位からスタート。2年のブランクを経て復帰したアロンソは、アルピーヌを駆り早々にQ3に進出し9位、ランス・ストロールのアストンマーティンは10位につけた。
Q1セッションをフェルスタッペンに次ぐ2番手で終え周囲を驚かせたアルファタウリの角田だったが、Q2では決勝を見据えてミディアムタイヤでアタックするもグリップ不足に悩み、予選13位から初陣に臨むことになった。
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ハミルトン、早めのピットストップ作戦で首位へ
フォーメーションラップ途中、11番グリッドからスタートするはずだったレッドブルのセルジオ・ペレスがストップ。マシンは再スタートできたものの、ペレスはピットスタートを余儀なくされた。
ポールにフェルスタッペン、隣にハミルトン。チャンピオン候補2人がフロントローに並び、56周のレースがスタート。まずフェルスタッペンが首位をキープし、ハミルトン2位、ルクレール3位、ボッタス4位、ガスリー5位となったが、ハースの新人ニキータ・マゼピンがオープニングラップでクラッシュしたことで、セーフティーカーが入った。
4周目にレースが再開すると、今度はここまで好調だったガスリーがリカルドと当たりフロントウイング脱落、バーチャルセーフティーカーが出る。ガスリーは最後尾に落ち、また角田も16位までポジションダウン、アルファタウリは出だしからつまずいてしまった。
ファステストラップをたたき出してトップを快走するフェルスタッペンは、無線でマシンの違和感を訴えつつも、10周して2位ハミルトンに対し1.8秒のリードを築いていた。このままでは勝てないと思ったメルセデス陣営は、14周目にハミルトンをピットに呼び、ミディアムからハードに換装するという作戦に打って出た。
ニュータイヤで最速タイムを刻むハミルトンに先を越されたかっこうのレッドブル陣営は、フェルスタッペンを18周目までコースに残し、ハードではなく再びミディアムタイヤを与えて第2スティントに向かわせた。
1位はハードを履くルイス・ハミルトン、その6秒後方にミディアムの2位フェルスタッペン。作戦が異なる2人の戦いは、ファイナルラップまで続くことになった。
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残り4周でフェルスタッペンが1位奪還するも……
レースの折り返し地点となった28周目、ハミルトンが2度目のタイヤ交換でまたもハードを選択。順位は3位に落ちたが、このタイヤで走り切って優勝しようという算段だった。
一方、ここで1位に返り咲いたフェルスタッペンは、40周目までミディアムで走ってハードにスイッチ。この時点で首位に立ったハミルトンと2位フェルスタッペンの間には8.6秒の差があったが、フェルスタッペンはライフの新しいタイヤのアドバンテージを生かし、一周につき0.5秒速いペースで猛追を開始した。
44周目には5秒、47周目には3秒を切り、49周目にはいよいよ1秒台にギャップは縮まった。51周目、フェルスタッペンの鬼気迫る勢いに、さしもの7冠王者もラインを外すミスをおかし、間隔は1秒以下に。そして残り4周となったターン4で、ついにフェルスタッペンがハミルトンを抜きトップに返り咲いたのだった。だが程なくしてレッドブルは速度を緩め、ハミルトンに先行を許してしまった。
ターン4は、FIA(国際自動車連盟)がトラックリミットをはみ出すなと指示していた場所だった。フェルスタッペンはアウト側にコースを外れてオーバーテイクしたため、レッドブル首脳はフェルスタッペンに2位に後退するよう告げ、ドライバーはその指示に従ったということだった。
結局ハミルトンが1位の座を死守し、0.7秒差で勝利。惜しくも2位に終わったフェルスタッペンは、ハミルトンを先に行かせたチーム側の判断には納得していなかったが、「メルセデスにここまで挑めるレースができたのだから総じてハッピーというべき」と前向きな姿勢をみせた。
結果的にメルセデスの1-3フィニッシュだったが、36歳のハミルトンと23歳のフェルスタッペン、新旧ドライバーによる手に汗握る激闘に、今シーズンの期待はいよいよ高まるばかりだ。そして期待といえば、デビュー戦で見事9位入賞を果たした角田裕毅。39周目にアルファ・ロメオのキミ・ライコネンを抜き入賞圏の10位に入ると、最終周にはストロールをオーバーテイク。序盤の遅れをしっかりと取り戻し、チームに2点を献上できたのは上出来というべきだろう。史上最多23戦の2021年シーズンは始まったばかりだが、楽しみな一年となりそうである。
次戦はイタリアはイモラでのエミリア・ロマーニャGP。決勝は4月18日に行われる。
(文=bg)