第2戦マレーシアGP「2連勝のベッテルとレッドブルは安泰なのか?」【F1 2011 続報】
2011.04.11 自動車ニュース【F1 2011 続報】第2戦マレーシアGP「2連勝のベッテルとレッドブルは安泰なのか?」
2011年4月10日、マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権第2戦マレーシアGP。またもレッドブルのセバスチャン・ベッテルによるポール・トゥ・ウィンに終わったが、肉薄してきたマクラーレン、レッドブルのKERS不調など、最高の出だしにも不安要素が見え隠れした。
■ハミルトン対ベッテル、白熱のポールポジション争い
レッドブル&ベッテルの圧勝で幕を開けた2011年シーズン。2週間を経て行われたマレーシアでの第2戦では、前年チャンピオンに2008年王者が肉薄するシーンが見られた。
土曜日の予選Q3、最初のアタックでマクラーレン駆るルイス・ハミルトンが1分35秒フラットで暫定首位に立つ。ベッテルは0.122秒後方、マーク・ウェバーが0.268秒差、ジェンソン・バトン0.371秒差と、上位はマクラーレンがレッドブルを挟み込むカタチとなった。
2回目のアタックでも、ハミルトンが自身のタイムを更新し34秒台に突入、ポールポジションに王手をかけたかにみえたが、ベッテルも負けじと渾身の力を振り絞り、ハミルトンのタイムを0.104秒上回り逆転に成功。2戦連続、通算17回目の最前スタートを決めた。
スターティンググリッドは、1位ベッテル、2位ハミルトン、3位ウェバー、4位バトン、5位フェルナンド・アロンソと、トップ5は開幕戦オーストラリアと同じオーダー。レッドブルとマクラーレンがリードし、フェラーリはアロンソが約1秒も遅れをとり苦戦するという構図もしかりだ。
オーストラリアで3位入賞、幸先よいスタートを切ったルノーは、ニック・ハイドフェルド6番グリッド、ビタリー・ペトロフは8番グリッドを獲得し、レースでの活躍に期待を抱いていた。
■黒い閃光、ルノーの好スタート
決勝スタート前の天候は曇天、気温31度、湿度80%以上で、熱帯特有のスコールが懸念されたものの、レースを通じて注目のピレリウェットタイヤはデビューならなかった。
スタートでベッテルの背後にハミルトンが迫ったが、レッドブルが首位を守り1コーナーへ向けてステアリングを切った。ハミルトンが2位で通過すると思われたが、その外側から突如黒い一団があらわれ、シルバーのマシンの前に立ちはだかった――ルノーである。
ハイドフェルドは6位から2位、ペトロフは8位から5位にジャンプアップ。ハイドフェルドの2位走行は、トップのベッテルにとっては加勢となり、また3位に落ちたハミルトンにとっては障壁となった。予選での余勢を駆り優勝を狙っていたハミルトンとマクラーレンだったが、レース序盤にベッテルに直接勝負を挑めなかったのは大きなハンデとなった。
ベッテルは2位ハイドフェルド以下にリードタイムを築きはじめ、オープニングラップで1.9秒、その後徐々に開き、56周のレース中10周時点では7.4秒まで拡大していた。
いっぽうベッテルのチームメイト、ウェバーは悪夢をみていた。スタートする前からKERSが機能せず、3番グリッドからごぼう抜きにあい一気に10位までドロップ。最終コーナーを挟み長いストレートが2本あるセパンで、KERSの“電気ブースト”が使えないのでは到底トップは狙えない。さらにタイヤに厳しい走りも災いして、上位ドライバーと比べ1回多い4度のタイヤ交換をしなければならず、それでも最終的に4位12点を加算できたのは不幸中の幸いだった。
■レッドブルのKERS機能不全
最初のピットストップで目の上のコブだったハイドフェルドがいなくなり、2位にあがったハミルトンは、1位ベッテルとのギャップを徐々に狭めていく。18周目に5.7秒、21周目4.9秒、22周目4.4秒、そして23周目には3.9秒とジリジリとつめられるベッテル。しかしハミルトンはタイヤの消耗度合いが顕著でライバルより先にピットへ飛び込まなければならず、作戦上劣勢をしいられた。
首位を守らんとするベッテルはといえば、ウェバー同様にKERSの機能不全を抱えており、レース中盤の29周目にはチームから無線で「KERS使用不可」を言い渡された。だが不思議なことに、ベッテルは以降ハイペースで再びギャップを拡げはじめ、35周には7.9秒ものマージンを築いてしまった。
ハミルトンは(予定では最後の)3ストップ目を37周に行ったが、この際チームメイトのバトンに2位の座を譲ってしまう。タイヤをいたわることにかけては定評のあるバトンは以降2位をキープ。その後方の3位では、アグレッシブでキレのある走りは天下一品のハミルトンが、またもタイヤに足を引っ張られペースが伸び悩み、4位のアロンソに表彰台の一角を狙われていた。
■3位を争うハミルトンとアロンソ、接触
予選では最悪の結果だったフェラーリだがレースペースはまずまず。しかしアロンソのマシンは、いわゆる可変リアウイングのDRSが動かないトラブルに見舞われていた。サイド・バイ・サイドのつばぜり合いの末、46周目、ハミルトンのスリップストリームを使ってオーバーテイクを企てたアロンソのフロントウイングに、ハミルトンのリアタイヤが接触、フェラーリはノーズを壊し予定外のピットインを余儀なくされた。
その後も3位走行を続けたハミルトンだったが、そもそものタイヤの悪化には歯止めがきかず、コース上でハイドフェルドに抜かれ、次はコースをはみ出しウェバーにもかわされ、たまらず予定外の4度目のタイヤ交換に踏み切った。
アロンソは6位、ハミルトンは7位でチェッカードフラッグを受けたのだが、レース後この接触に絡む違反でそれぞれのリザルトに20秒が加算され、ハミルトンは8位という結果に終わった。
■タイヤとどう付き合うか
2戦2勝、しかもいずれもポールポジションからの勝利。ベッテルにとっては最良のシーズンスタートとなったが、レッドブルのKERSは、開幕戦で搭載されず、マレーシアでもトラブルが発生し、「RB7」のアキレス腱ともいっていい。僚友ウェバーの苦戦もチャンピオンチームの不安要素のひとつである。
そして全チームにとって共通にいえる課題は、新しいピレリタイヤとどう付き合っていくか、ということだろう。それまでのブリヂストンと違い、ピレリの特性は走るたびに着実にパフォーマンスが低下し、あるポイントで崖から落ちるようにタレがひどくなるという。各チーム、ドライバーがこの特性を把握しきるまでには時間が必要である。
2位に入ったバトンは、レース後、「非常に混乱したレースだった」と語った。ピットストップについてや、このタイミングでタイヤをいたわるべきか、あるいはそうしなくてもいいのかがまだわからないのだ、という。
タイヤといい、予選でのマクラーレンの善戦といい、2011年もベッテル&レッドブルの年、と言い切るには、まだまだ時期が早すぎるということなのだろう。
次戦は1週間後の中国GP。決勝レースは4月17日に開催される。
(文=bg)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |