【F1 2023】第8戦スペインGP続報:フェルスタッペン3連勝、メルセデス2-3で復活の兆し
2023.06.05 自動車ニュース![]() |
2023年6月4日、スペインのサーキット・デ・バルセロナ・カタルーニャで行われたF1世界選手権第8戦スペインGP。マシンの総合力が問われるバルセロナのコースで、今季最強のマシン&ドライバーが独走した。
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スペインの英雄、母国に凱旋
アストンマーティンのフェルナンド・アロンソとフェラーリのカルロス・サインツJr.、2人のスペイン人ドライバーの母国凱旋(がいせん)には――特に今季6戦して2位1回、3位4回と計5回も表彰台にのぼっていたアロンソの八面六臂(ろっぴ)の活躍もあり――例年以上に、地元ファンの期待感が高まっていた。
今から22年前の2001年にF1デビューを飾ったアロンソ。ミナルディを駆って最高峰カテゴリーに打って出た若獅子は、長いキャリアのなかでルノー、マクラーレン、フェラーリ、アルピーヌ、そしてアストンマーティンと渡り歩いてきた。
ルノー時代の2005年と2006年は、フェラーリ&ミハエル・シューマッハーという当時の常勝軍団を倒し2年連続チャンピオン。その後はタイミングや運に恵まれず2冠のままで、一時はF1を離れインディ500やルマン24時間レースに挑戦するなど、この現役最年長ドライバーは異色のレーシングキャリアを送っている。
アストンマーティンでは、チームの支柱として監督のような広い視野で状況を把握しながら、的確な指示を出してはスタッフらを鼓舞。チームメイトのランス・ストロールには、レース中にもかかわらず無線でドライビングをアドバイスし、「ランスは素晴らしいドライバーだ」と、アストンマーティンのオーナーでありランスの父であるローレンス・ストロールへのリップサービスも絶好調だ。
最後にポディウムの頂点に立ったのは、フェラーリで勝った2013年、場所はここスペインだった。レッドブルが全戦全勝してきた2023年シーズン、今年で33回目のバルセロナでのスペインGPで、英雄アロンソがキャリア33勝目を勝ち取ることができればファンは狂喜乱舞するはずだったが、さしもの2冠王者も気合が入り過ぎてしまったようだった……。
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フェルスタッペンが大差をつけスペインGP初ポール
今年から最終コーナー手前のシケインが廃止されたバルセロナのコースだったが、マシンの総合力が試されるという点では変わらず。そうなれば今季最速のレッドブルの独壇場となるだろうという予想は、3回のプラクティスすべてでマックス・フェルスタッペンがトップタイムを記録したことで、いよいよ真実味を増していった。
小雨が降り、所々がわずかにぬれた路面で行われた予選では、ドライタイヤを装着してのアタックということもあり、スピン、コースオフするマシンが続出。難しいコンディションに翻弄(ほんろう)されて、昨年のポールシッター、フェラーリのシャルル・ルクレールは19位、レッドブルのセルジオ・ペレス11位、メルセデスのジョージ・ラッセル12位と、上位陣がグリッド後方に埋もれるという番狂わせが起きた。
トップ10グリッドを決めるQ3で最速だったのは、大方の予想どおりフェルスタッペン。後続に0.462秒もの大差をつけて、今季4回目、通算24回目、スペインGPでの初ポールポジションを獲得した。予選2位につけたのはフェラーリのカルロス・サインツJr.で、ホームGPで初めてのフロントロー。3位には復調著しいマクラーレンをドライブしたランド・ノリスがつけた。
アルピーヌのピエール・ガスリーが4番手タイムを記録するも、他車の進路を2度妨害したことで合計6グリッド降格のペナルティーを受け10番グリッドにダウン。代わってメルセデスのルイス・ハミルトンが4番グリッドに繰り上がり、その後ろにアストンマーティンのランス・ストロール、アルピーヌのエステバン・オコン、ハースのニコ・ヒュルケンベルグが続いた。
アロンソはといえば、Q1中の最終コーナーでコースオフしたことでフロアにダメージを負い、十分なパフォーマンスを引き出せずに8番グリッド。マクラーレンのピアストリが9番グリッドからレースに臨むこととなった。
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フェルスタッペン首位、メルセデスが2-3へ
雨の予報が出ていたものの、結局雨雲がサーキットの上にかかることはなかった。66周のレースがスタートすると、フェルスタッペンがトップ、サインツJr.は2位を守り、ストロール3位、ハミルトン4位、オコン5位、アロンソ6位といった順位でオープニングラップが終了。3番グリッドのノリスはハミルトンと接触したことでマシンを壊し、大きく後退した。
ミディアムタイヤを履く1位フェルスタッペンは、ソフトを装着する2位サインツJr.に対してリードを広げていき、10周もすると4.6秒のギャップができていた。その後ろでは、ハミルトンが8周目にストロールをオーバーテイクし3位に躍進。勢いづくメルセデスはフェラーリとの差をどんどん詰めていくも、16周目にサインツJr.がピットに飛び込みソフトからミディアムに換装すると、労せずしてハミルトンが2位に。さらに前車がピットに入ったことで、12番手スタートのラッセルは3位に浮上した。
ソフトタイヤ勢が次々とタイヤ交換に踏み切る一方、メルセデスの2台は同じソフトながらロングランを続けることができ、2位ハミルトンは25周目にソフトからミディアムへ交換、翌周にはラッセルもミディアムに履き替えた。続いてピットに入ったフェルスタッペンはハードを選び、首位のままコースに戻った。
最初のタイヤ交換を終えた上位の順位は、1位フェルスタッペン、11秒差で2位ハミルトン、サインツJr.は3位にドロップ、ラッセル4位、ストロール5位となっていた。
3位に落ちたサインツJr.は、2位ハミルトンを追うどころか、4位ラッセルにどんどん差を詰められた。フェラーリの弱点はレースペース。特に、タイヤをもたせることができないという点はシーズンを通して改善しておらず、サインツJr.は35周目に4位に後退。メルセデスは2-3に躍進した。
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フェルスタッペン40勝目、レッドブル99勝目
2度目のタイヤ交換では、42周目にサインツJr.がハード、46周目にラッセルがソフト、51周目にハミルトンがソフト、53周目にフェルスタッペンがソフトへとチェンジすると、順位は1位フェルスタッペン、2位ハミルトン、3位ラッセル、そして11番手スタートのペレスが4位まで挽回。サインツJr.はフロントローから5位と大きく後退した。
首位独走状態のフェルスタッペンは、ターン10のトラックリミット違反を3回記録され、あと1回でペナルティーが科されるところだったが、それでも最終的に24秒ものマージンを築いたのだから、もはや脅威はどこにもなかった。今季7戦して5勝目では、ポール、全周リード、ファステストラップのグランドスラムを達成。マイアミGPから3連勝、モナコGPから2戦連続でポール・トゥ・ウィンを決めたことになる。また彼にとっての通算40勝は、歴代5位のアイルトン・セナにあと1勝と迫る記録。チームとして通算99勝目を飾ったレッドブルは、過去3戦すべてのラップをリードしており、フェルスタッペンもレッドブルも、その勢いはとどまるところを知らない。
ハミルトン2位、ラッセル3位と、今季初めて2台そろってポディウムにのぼったメルセデスにとっては、“ゼロポット”を捨てた改良型マシンのポテンシャルが高いことを示せたレースだった。ストロール6位、アロンソ7位と活躍することなく終わったアストンマーティンを抜き、メルセデスはコンストラクターズランキング2位へ。シルバーアローは復活の糸口をつかんだかに見えた。
次の第9戦カナダGP決勝は、6月18日に行われる。
(文=bg)