【F1 2023】第8戦スペインGP続報:フェルスタッペン3連勝、メルセデス2-3で復活の兆し

2023.06.05 自動車ニュース bg
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F1第8戦スペインGPを制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン(写真中央)、2位に入ったメルセデスのルイス・ハミルトン(同左)、3位でレースを終えたメルセデスのジョージ・ラッセル(同右)。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
F1第8戦スペインGPを制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン(写真中央)、2位に入ったメルセデスのルイス・ハミルトン(同左)、3位でレースを終えたメルセデスのジョージ・ラッセル(同右)。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

2023年6月4日、スペインのサーキット・デ・バルセロナ・カタルーニャで行われたF1世界選手権第8戦スペインGP。マシンの総合力が問われるバルセロナのコースで、今季最強のマシン&ドライバーが独走した。

スタート直後のターン1を目指す20台のF1マシン。ポールシッターのフェルスタッペンに2番手スタートのカルロス・サインツJr.が並びかけるも、レッドブルがトップを守った。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
スタート直後のターン1を目指す20台のF1マシン。ポールシッターのフェルスタッペンに2番手スタートのカルロス・サインツJr.が並びかけるも、レッドブルがトップを守った。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大
レッドブルのフェルスタッペン(写真)が独走して完勝。スペインでもフェルスタッペンの前方視界はすこぶる良好で始まり、3回のプラクティスともトップ、予選では後続に0.462秒もの大差をつけて今季4回目のポールポジションを獲得した。レースではスタートから一度も首位を失わず、ファステストラップも記録してのグランドスラム達成。ポイントリードは53点と2勝分以上ついたことになる。チームメイトのセルジオ・ペレスは、予選ではぬれた路面でタイヤを滑らせコースオフ、Q3に進むことはできず11位。レースでは4位まで挽回してゴールした。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
レッドブルのフェルスタッペン(写真)が独走して完勝。スペインでもフェルスタッペンの前方視界はすこぶる良好で始まり、3回のプラクティスともトップ、予選では後続に0.462秒もの大差をつけて今季4回目のポールポジションを獲得した。レースではスタートから一度も首位を失わず、ファステストラップも記録してのグランドスラム達成。ポイントリードは53点と2勝分以上ついたことになる。チームメイトのセルジオ・ペレスは、予選ではぬれた路面でタイヤを滑らせコースオフ、Q3に進むことはできず11位。レースでは4位まで挽回してゴールした。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

スペインの英雄、母国に凱旋

アストンマーティンのフェルナンド・アロンソとフェラーリのカルロス・サインツJr.、2人のスペイン人ドライバーの母国凱旋(がいせん)には――特に今季6戦して2位1回、3位4回と計5回も表彰台にのぼっていたアロンソの八面六臂(ろっぴ)の活躍もあり――例年以上に、地元ファンの期待感が高まっていた。

今から22年前の2001年にF1デビューを飾ったアロンソ。ミナルディを駆って最高峰カテゴリーに打って出た若獅子は、長いキャリアのなかでルノー、マクラーレン、フェラーリ、アルピーヌ、そしてアストンマーティンと渡り歩いてきた。

ルノー時代の2005年と2006年は、フェラーリ&ミハエル・シューマッハーという当時の常勝軍団を倒し2年連続チャンピオン。その後はタイミングや運に恵まれず2冠のままで、一時はF1を離れインディ500やルマン24時間レースに挑戦するなど、この現役最年長ドライバーは異色のレーシングキャリアを送っている。

アストンマーティンでは、チームの支柱として監督のような広い視野で状況を把握しながら、的確な指示を出してはスタッフらを鼓舞。チームメイトのランス・ストロールには、レース中にもかかわらず無線でドライビングをアドバイスし、「ランスは素晴らしいドライバーだ」と、アストンマーティンのオーナーでありランスの父であるローレンス・ストロールへのリップサービスも絶好調だ。

最後にポディウムの頂点に立ったのは、フェラーリで勝った2013年、場所はここスペインだった。レッドブルが全戦全勝してきた2023年シーズン、今年で33回目のバルセロナでのスペインGPで、英雄アロンソがキャリア33勝目を勝ち取ることができればファンは狂喜乱舞するはずだったが、さしもの2冠王者も気合が入り過ぎてしまったようだった……。

メルセデスのハミルトン(写真)は、今季2度目の2位フィニッシュ。前戦モナコGPで大幅アップデート版「W14」を投入したメルセデス勢は、金曜日こそセッティングを合わせ込むのに苦労し、ハミルトンも「Q3突破はできないかも」と不安のコメントを残していたが、土曜日の予選になると見違えるようなスピードで上位進出、ハミルトンは5番手タイム、ピエール・ガスリーの降格ペナルティーで4番グリッドとポディウムが狙えるポジションを得た。レースではスタート直後にランス・ストロールに抜かれるもすぐに抜き返し、フェラーリのサインツJr.がタイヤ交換のためピットに入ると2位へ。以後、そのポジションを脅かすものは出なかった。(Photo=Mercedes)
メルセデスのハミルトン(写真)は、今季2度目の2位フィニッシュ。前戦モナコGPで大幅アップデート版「W14」を投入したメルセデス勢は、金曜日こそセッティングを合わせ込むのに苦労し、ハミルトンも「Q3突破はできないかも」と不安のコメントを残していたが、土曜日の予選になると見違えるようなスピードで上位進出、ハミルトンは5番手タイム、ピエール・ガスリーの降格ペナルティーで4番グリッドとポディウムが狙えるポジションを得た。レースではスタート直後にランス・ストロールに抜かれるもすぐに抜き返し、フェラーリのサインツJr.がタイヤ交換のためピットに入ると2位へ。以後、そのポジションを脅かすものは出なかった。(Photo=Mercedes)拡大
メルセデスのラッセル(写真)は3位でゴール。予選では、行き違いでハミルトンと接触してしまうハプニングもあり12位となるも、レースではスタートで8位にジャンプアップ、その後も順調にポジションを上げ、今季初のポディウムを勝ち取った。レース中「雨が降ってきた!」と無線で叫ぶも、ヘルメット内の自らの汗だったことが判明し、記者会見の場でも苦笑い。それでも改良型マシンの出来に上々の感触をつかんだようで、レース後に笑顔が絶えなかった。(Photo=Mercedes)
 
メルセデスのラッセル(写真)は3位でゴール。予選では、行き違いでハミルトンと接触してしまうハプニングもあり12位となるも、レースではスタートで8位にジャンプアップ、その後も順調にポジションを上げ、今季初のポディウムを勝ち取った。レース中「雨が降ってきた!」と無線で叫ぶも、ヘルメット内の自らの汗だったことが判明し、記者会見の場でも苦笑い。それでも改良型マシンの出来に上々の感触をつかんだようで、レース後に笑顔が絶えなかった。(Photo=Mercedes)
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フェルスタッペンが大差をつけスペインGP初ポール

今年から最終コーナー手前のシケインが廃止されたバルセロナのコースだったが、マシンの総合力が試されるという点では変わらず。そうなれば今季最速のレッドブルの独壇場となるだろうという予想は、3回のプラクティスすべてでマックス・フェルスタッペンがトップタイムを記録したことで、いよいよ真実味を増していった。

小雨が降り、所々がわずかにぬれた路面で行われた予選では、ドライタイヤを装着してのアタックということもあり、スピン、コースオフするマシンが続出。難しいコンディションに翻弄(ほんろう)されて、昨年のポールシッター、フェラーリのシャルル・ルクレールは19位、レッドブルのセルジオ・ペレス11位、メルセデスのジョージ・ラッセル12位と、上位陣がグリッド後方に埋もれるという番狂わせが起きた。

トップ10グリッドを決めるQ3で最速だったのは、大方の予想どおりフェルスタッペン。後続に0.462秒もの大差をつけて、今季4回目、通算24回目、スペインGPでの初ポールポジションを獲得した。予選2位につけたのはフェラーリのカルロス・サインツJr.で、ホームGPで初めてのフロントロー。3位には復調著しいマクラーレンをドライブしたランド・ノリスがつけた。

アルピーヌのピエール・ガスリーが4番手タイムを記録するも、他車の進路を2度妨害したことで合計6グリッド降格のペナルティーを受け10番グリッドにダウン。代わってメルセデスのルイス・ハミルトンが4番グリッドに繰り上がり、その後ろにアストンマーティンのランス・ストロール、アルピーヌのエステバン・オコン、ハースのニコ・ヒュルケンベルグが続いた。

アロンソはといえば、Q1中の最終コーナーでコースオフしたことでフロアにダメージを負い、十分なパフォーマンスを引き出せずに8番グリッド。マクラーレンのピアストリが9番グリッドからレースに臨むこととなった。

フェラーリのサインツJr.(写真)は5位でチェッカードフラッグを受けた。スペインGPで、サイドポッドの後端形状を後傾させ、やや“レッドブル寄り”にしたアップデート版「SF-23」を投入したスクーデリア。予選では2人のドライバーで明暗が分かれ、ホームGPを戦うサインツJr.は2位と好位置を獲得するも、昨年のポールシッター、シャルル・ルクレールは原因不明のハンドリングの不具合を訴え、4年ぶりとなるQ1敗退の19位、レースではピットレーンスタートを選択した。レースになると、サインツJr.はフロントローからずるずると後退し5位。「タイヤをセーブしなければならず、プッシュできなかった」と母国GPで錦を飾れなかったことを残念がった。ルクレールは11位でポイント獲得ならず。(Photo=Ferrari)
フェラーリのサインツJr.(写真)は5位でチェッカードフラッグを受けた。スペインGPで、サイドポッドの後端形状を後傾させ、やや“レッドブル寄り”にしたアップデート版「SF-23」を投入したスクーデリア。予選では2人のドライバーで明暗が分かれ、ホームGPを戦うサインツJr.は2位と好位置を獲得するも、昨年のポールシッター、シャルル・ルクレールは原因不明のハンドリングの不具合を訴え、4年ぶりとなるQ1敗退の19位、レースではピットレーンスタートを選択した。レースになると、サインツJr.はフロントローからずるずると後退し5位。「タイヤをセーブしなければならず、プッシュできなかった」と母国GPで錦を飾れなかったことを残念がった。ルクレールは11位でポイント獲得ならず。(Photo=Ferrari)拡大
アストンマーティンのフェルナンド・アロンソ(写真)は7位でレースを終えた。母国ファンの前で気合十分だったが、路面が所々ぬれた状態の予選では、Q1中に最終コーナーでコースオフ、グラベルでフロア下にダメージを負ったことで、マシンのポテンシャルを引き出せずに9番手タイム、ピエール・ガスリーの降格ペナルティーで8番グリッドとなってしまった。レースでも過去6戦の勢いは見られず、アロンソは今季初めて4位以下でのフィニッシュ。僚友ランス・ストロールは5番グリッドから6位。今季これまでランキング2位をキープしていたアストンマーティンは、メルセデスに逆転を許すこととなった。(Photo=Aston Martin)
 
アストンマーティンのフェルナンド・アロンソ(写真)は7位でレースを終えた。母国ファンの前で気合十分だったが、路面が所々ぬれた状態の予選では、Q1中に最終コーナーでコースオフ、グラベルでフロア下にダメージを負ったことで、マシンのポテンシャルを引き出せずに9番手タイム、ピエール・ガスリーの降格ペナルティーで8番グリッドとなってしまった。レースでも過去6戦の勢いは見られず、アロンソは今季初めて4位以下でのフィニッシュ。僚友ランス・ストロールは5番グリッドから6位。今季これまでランキング2位をキープしていたアストンマーティンは、メルセデスに逆転を許すこととなった。(Photo=Aston Martin)
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フェルスタッペン首位、メルセデスが2-3へ

雨の予報が出ていたものの、結局雨雲がサーキットの上にかかることはなかった。66周のレースがスタートすると、フェルスタッペンがトップ、サインツJr.は2位を守り、ストロール3位、ハミルトン4位、オコン5位、アロンソ6位といった順位でオープニングラップが終了。3番グリッドのノリスはハミルトンと接触したことでマシンを壊し、大きく後退した。

ミディアムタイヤを履く1位フェルスタッペンは、ソフトを装着する2位サインツJr.に対してリードを広げていき、10周もすると4.6秒のギャップができていた。その後ろでは、ハミルトンが8周目にストロールをオーバーテイクし3位に躍進。勢いづくメルセデスはフェラーリとの差をどんどん詰めていくも、16周目にサインツJr.がピットに飛び込みソフトからミディアムに換装すると、労せずしてハミルトンが2位に。さらに前車がピットに入ったことで、12番手スタートのラッセルは3位に浮上した。

ソフトタイヤ勢が次々とタイヤ交換に踏み切る一方、メルセデスの2台は同じソフトながらロングランを続けることができ、2位ハミルトンは25周目にソフトからミディアムへ交換、翌周にはラッセルもミディアムに履き替えた。続いてピットに入ったフェルスタッペンはハードを選び、首位のままコースに戻った。

最初のタイヤ交換を終えた上位の順位は、1位フェルスタッペン、11秒差で2位ハミルトン、サインツJr.は3位にドロップ、ラッセル4位、ストロール5位となっていた。

3位に落ちたサインツJr.は、2位ハミルトンを追うどころか、4位ラッセルにどんどん差を詰められた。フェラーリの弱点はレースペース。特に、タイヤをもたせることができないという点はシーズンを通して改善しておらず、サインツJr.は35周目に4位に後退。メルセデスは2-3に躍進した。

アルファタウリの角田裕毅(写真前)は、9位でチェッカードフラッグを受けるも、5秒ペナルティーを受けて12位に降格、悔しいレースを終えた。予選では所々ぬれた路面でスピンを喫し、またQ3進出をかけたQ2中のラップではトラックリミットを越えてしまい、11番手だったタイムを抹消され15位。ばたついた予選から一転し、レースではスタートで13位に上がり、程なくして入賞圏の10位以内に駒を進め、終始安定して力強い走りを披露した。しかし、アルファ・ロメオのジョウ・グアンユーとのポジション争いでジョウを押し出したとする裁定が下され、5秒加算という厳しいペナルティーが科されてポイントを逃した。「とてもがっかりしてフラストレーションを感じている。厳しいペナルティーだったが受け入れるしかない」と語るも、今季の力走は誰もが認めるところであり、ここは前を向きたい。チームメイトのニック・デ・ブリースは、予選で角田を上回り14位、レースでもそのポジションのままゴールした。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
 
アルファタウリの角田裕毅(写真前)は、9位でチェッカードフラッグを受けるも、5秒ペナルティーを受けて12位に降格、悔しいレースを終えた。予選では所々ぬれた路面でスピンを喫し、またQ3進出をかけたQ2中のラップではトラックリミットを越えてしまい、11番手だったタイムを抹消され15位。ばたついた予選から一転し、レースではスタートで13位に上がり、程なくして入賞圏の10位以内に駒を進め、終始安定して力強い走りを披露した。しかし、アルファ・ロメオのジョウ・グアンユーとのポジション争いでジョウを押し出したとする裁定が下され、5秒加算という厳しいペナルティーが科されてポイントを逃した。「とてもがっかりしてフラストレーションを感じている。厳しいペナルティーだったが受け入れるしかない」と語るも、今季の力走は誰もが認めるところであり、ここは前を向きたい。チームメイトのニック・デ・ブリースは、予選で角田を上回り14位、レースでもそのポジションのままゴールした。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
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フェルスタッペン40勝目、レッドブル99勝目

2度目のタイヤ交換では、42周目にサインツJr.がハード、46周目にラッセルがソフト、51周目にハミルトンがソフト、53周目にフェルスタッペンがソフトへとチェンジすると、順位は1位フェルスタッペン、2位ハミルトン、3位ラッセル、そして11番手スタートのペレスが4位まで挽回。サインツJr.はフロントローから5位と大きく後退した。

首位独走状態のフェルスタッペンは、ターン10のトラックリミット違反を3回記録され、あと1回でペナルティーが科されるところだったが、それでも最終的に24秒ものマージンを築いたのだから、もはや脅威はどこにもなかった。今季7戦して5勝目では、ポール、全周リード、ファステストラップのグランドスラムを達成。マイアミGPから3連勝、モナコGPから2戦連続でポール・トゥ・ウィンを決めたことになる。また彼にとっての通算40勝は、歴代5位のアイルトン・セナにあと1勝と迫る記録。チームとして通算99勝目を飾ったレッドブルは、過去3戦すべてのラップをリードしており、フェルスタッペンもレッドブルも、その勢いはとどまるところを知らない。

ハミルトン2位、ラッセル3位と、今季初めて2台そろってポディウムにのぼったメルセデスにとっては、“ゼロポット”を捨てた改良型マシンのポテンシャルが高いことを示せたレースだった。ストロール6位、アロンソ7位と活躍することなく終わったアストンマーティンを抜き、メルセデスはコンストラクターズランキング2位へ。シルバーアローは復活の糸口をつかんだかに見えた。

次の第9戦カナダGP決勝は、6月18日に行われる。

(文=bg)

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