【F1 2023】第11戦イギリスGP続報:フェルスタッペン破竹の6連勝、レッドブルは11連勝で1988年の大記録に並ぶ
2023.07.10 自動車ニュース![]() |
2023年7月9日、イギリスのシルバーストーン・サーキットで行われたF1世界選手権第11戦イギリスGP。レッドブルのマックス・フェルスタッペンが破竹の勢いで6連勝を飾る一方、2人のイギリス人ドライバーの活躍で、サーキットに詰めかけた観衆は大いに盛り上がったのだった。
![]() |
![]() |
ハミルトンの本音、フェルスタッペンの懸念、レッドブルの記録
来季に向けたマシン開発の開始時期に決まりを設けてはどうか──レッドブル独走が続く2023年シーズンが折り返しに近づく頃、そんな提言を持ちかけたのが7冠王者のルイス・ハミルトンだった。
今季のレッドブルのように、シーズン前半からライバルを圧倒してきたチームは、早々に開発リソースを次年度のマシンに振り分けることができる。こうした開発の前倒しは、すでに十分なアドバンテージを得ているチームにさらに優位性を拡大するチャンスを与えることになるため、いわゆる全チーム共通の「解禁日」を設定し、それまで開発を制限してはどうか、というのがハミルトンのアイデアであった。
2014年からコンストラクターズチャンピオンシップ8連覇を達成したメルセデス独走時代に、合計6つのドライバーズタイトルを獲得したハミルトンだからこその説得力があり、逆に彼だからこそ「どの口が言うか」と突っ込まれても仕方がない意見ではあったが、それほどまでにレッドブルを止める糸口をつかみかねている、競合チームの本音と捉えることができた。
そのレッドブルからは、2026年型マシンのシミュレーターを試したマックス・フェルスタッペンのコメントに注目が集まった。同年にはレギュレーションが大きく変わり、特にパワーユニットは、内燃機関たるエンジンと電気モーターの出力が均等になることが決まっている。フェルスタッペンは、ストレートでシフトダウンしなければならないなど好ましくないアクションを強いられる可能性を指摘しつつ、「現段階の数値は相当ひどいもの」と、ルールメーカーへのけん制とも捉えられる発言がメディアに取り上げられた。
そんな折、来る2024年のレースカレンダーも発表された。3月2日決勝のバーレーンGPから12月8日のアブダビGPまで、史上最多24戦が組まれ、2019年以来となる中国GPが復活。鈴鹿サーキットでの日本GPは、恒例の秋開催から4月7日決勝と春に移行され、これまで悩まされてきた台風の影響はほぼなくなった。
かように将来に向けた動きが活発化してきたF1は、多くのチームが本拠を置くイギリスに“帰還”。今季9戦全勝、昨季最終戦アブダビGPを含めれば10連勝中と破竹の勢いで勝ち続けるレッドブルにとって、イギリスGPで勝利をおさめれば、1988年にマクラーレンが打ち立てた11連勝に肩を並べることになっていた。
![]() |
![]() |
フェルスタッペンが5連続ポール、大健闘のマクラーレンが2-3
土曜日の予選は、ウエットからドライへと変わるコンディションがドライバーたちを翻弄(ほんろう)。最速のドライバーは大方の予想どおりだったが、それに次いだ伏兵の出現に観客は大いに沸いた。
フェルスタッペンが5戦連続、今季7回目、通算27回目のポールポジションを獲得。翌日にレッドブルでの出走150戦目を控えたポイントリーダーにとって、自身50回目のフロントロースタートとなった。なおチームメイトのセルジオ・ペレスはQ1敗退の憂き目に遭い、5戦連続でQ3進出を逃した。
その後ろに続いたのはマクラーレン勢だ。マシンアップデートの効果もあって、ランド・ノリスはポールから0.241秒差で自身3回目の最前列。新人オスカー・ピアストリも過去最高の3位につけることができた。
フェラーリは、シャルル・ルクレール4位、昨季ここシルバーストーンで初優勝を飾ったカルロス・サインツJr.が5位。新しいフロントウイングを投入したメルセデス勢は、ジョージ・ラッセル6位、ハミルトン7位と、才能あるイギリス人コンビをもってしても上位に食い込めなかった。マクラーレン同様、メルセデスのパワーユニットで善戦したのがウィリアムズで、アレクサンダー・アルボンが3戦連続Q3に進出、8位からスタートすることとなった。
シーズン前半のダークホース、アストンマーティンは、フェルナンド・アロンソのみがトップ10グリッドに入り今季最低の9番グリッド。アルピーヌのピエール・ガスリーが10番手タイムを記録した。
![]() |
スタートでノリスがフェルスタッペンを抜きトップへ
52周のレースは、抜群の蹴り出しを見せたノリスがトップでターン1に飛び込んでスタート。2位に落ちたフェルスタッペンは、一瞬ピアストリにも並ばれるも辛くもそのポジションを守り、その後ろにはルクレール、ラッセル、サインツJr.、アロンソらが続いた。
早々に先頭に躍り出たノリスだったが、DRSが解禁となると後ろから弾丸のようにレッドブルが近づき、5周目にはフェルスタッペンに首位を奪われてしまった。これで2-3に戻ったマクラーレンは、4位ルクレールがラッセルに追われ防戦に忙しかったことが幸いし、レース序盤は表彰台圏内で周回を重ねることができた。
おおかたはタイヤをマネジメントしながら1ストップで走り切ろうとしていたが、早めにタイヤ交換を済ませたドライバーは、結果的に不利な状況に陥ることになる。33周目、ケビン・マグヌッセンのハースから炎が上がり、バーチャルセーフティーカー。後にセーフティーカーの出動となった。フェルスタッペン、ノリス、ハミルトンらはこの徐行中にタイヤ交換を行うことで順位を落とすことなくコースに復帰、それ以前にピットストップを終えていたルクレールやサインツJr.、ラッセルやピアストリらは後退を余儀なくされたのだ。
![]() |
![]() |
フェルスタッペン6連勝、レッドブルは11連勝で記録に並ぶ
セーフティーカー後の上位は、1位フェルスタッペン、2位ノリス、3位ハミルトン、4位ピアストリ、5位ラッセル、6位アロンソ。39周目にレースが再開すると、今度はそれぞれが装着するタイヤにより有利・不利が分かれた。
2-4位となったマクラーレンは、なかなかあたたまらないハードを履いていたのに対し、3-5位のメルセデスはハミルトンがソフト、ラッセルはミディアムを装着。分が悪いはずのマクラーレンだったが、2人の若手ドライバーの必死の防戦に加え、メルセデスの2人が感心するほどのマシンの速さにより、見事それぞれのポジションを守り切った。
敵なしのフェルスタッペンはこれで破竹の6連勝。これはアルベルト・アスカリ、ミハエル・シューマッハー、セバスチャン・ベッテル、ニコ・ロズベルグに次ぐ史上5人目の快挙である。今季のチャンピオンシップでは99点もの大量リードを築いたことになる。またレッドブルにとっては、昨季最終戦アブダビGPから11連勝で、1988年にマクラーレンが打ち立てた大記録に肩を並べたことになる。レッドブルとマクラーレンによるいずれの記録でも、ホンダが関わっているのは興味深い事実である。
こうしたレッドブルとフェルスタッペンの偉業もさることながら、サーキットに詰めかけた大観衆の声援は、2位に入ったノリス、そして今季4度目のポディウムとなる3位に終わったハミルトンという、2人のローカルヒーローにも惜しみなく注がれた。マクラーレンがイギリスGPで表彰台にのぼったのは2010年以来のことで、その時のドライバーは若きハミルトンだったということもあってか、表彰台でのシャンパンファイトはいつもにも増して熱が入っていたように見えた。
次の第12戦ハンガリーGP決勝は、7月23日に行われる。
(文=bg)