TOM'S、最終戦で初勝利【SUPER GT 2010】
2010.10.25 自動車ニュース【SUPER GT 2010】PETRONAS TOM'S SC430、最終戦で初勝利
2010年10月24日、栃木のツインリンクもてぎでSUPER GT最終戦の決勝レースが行われた。勝利を収めたのは、予選5番手スタートのNo.1 PETRONAS TOM'S SC430(脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー組)。激戦を制しての今季初勝利だ。
シリーズチャンピオンは、今大会で2位に入ったNo.18 ウイダー HSV-010(小暮卓史/ロイック・デュバル組)が獲得。両ドライバーともSUPER GTでのタイトル獲得は初となる。3位には、No.17 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大組)が入った。
GT300クラスは、予選トップからスタートしたNo.3 TOMICA Z(星野一樹/柳田真孝組)が優勝。ランキング上位のチームが苦戦するなか、見事なまでの独走でタイトル獲得を果たした。
ウイダーHSV-010、今季3度目のポール
富士の第7戦が、大雨の影響で開催中止になり、全7戦で競われる格好となった今季のSUPER GT。わずかな差で繰り広げられてきたタイトル争いの行方は、今回の最終戦にゆだねられた。GT500クラスでチャンピオン獲得の可能性があるのは、全13チームのうち9チーム。まれに見る激戦である。今回は、獲得ポイントに応じて搭載されるウェイトハンデは適用されず、開幕戦同様、ノーウェイトでのレースとなった。シーズンを通して進化を続けたマシンによる“ガチンコ決戦”だ。
予選は、出走台数をセッションごとにふるいにかける「ノックアウト」方式で行われた。3度にわたるセッションを経て、トップタイムをマークしたのはNo.18 ウイダー HSV-010の小暮卓史。2番手にはおよそ100分の6秒差でNo.6 ENEOS SC430の伊藤大輔がつけた。シリーズタイトルを争う2台が決勝グリッドのフロントローにつくという、できすぎた展開である。
これまでの2台のポイント差は、わずか1点。決勝で相手より先にゴールすることがタイトル獲得の最低条件となる。小暮は「自分の仕事をこなすだけ」と控えめなコメントを残したが、そのまなざしからは、ポール・トゥ・フィニッシュを狙う闘志が感じられた。
GT300クラスは、ランキング4位につけるNo.3 TOMICA Zの柳田真孝が今季初めてポールポジションを獲得。タイトル獲得にはこのレースでの優勝が絶対条件というさしせまった状況のなか、まずは第一目標をクリアした。
ENEOS SC、まさかのミス
決勝レースのスタートは午後2時。これに先立ちスタート前チェックのためにコースを周回したマシンは、いったんピットに戻って、ダミーグリッドに向かう“その時”を静かに待った。
だが、ここで1台のクルマが痛恨のミスを犯す。なんと予選2番手のNo.6 ENEOS SC430がピットロード出口の赤信号を無視してコースインしたのだ。その代償は大きく、No.6 SCには「全車配列についてスタートした後、20秒ペナルティストップする」という判定が下された。
予想外の幕開けとなった最終戦。レースは序盤からNo.18 ウイダー HSV-010がトップをキープする。ライバルの後退でその後の展開が楽になるかと思われたが、新たな刺客が登場。それがNo.1 PETRONAS TOM'S SC430だった。
ディフェンディングチャンピオンの1号車は今季、表彰台には上っているものの、幾度となく勝てるチャンスを落としてきた。是が非でも勝ちたい、という強い執念によるものか、そのポジションは5番手からみるみる上がり、ついに18号車をパス。トップに躍り出た。譲った18号車のデュバルは、「リスクを負いたくなかったから、(1号車の)ロッテラーを先に行かせた」と後に振り返ったように、優勝よりもタイトルを優先したのだ。そのままトップ2台は適度な距離を保ちながら周回を重ねていった。
最後まで激しいバトル
上位陣は、レース中盤の早い段階でルーティンワークをこなした。まずピットインしたのは1号車で、ロッテラーから脇阪寿一へドライバーチェンジ。1週遅れて、18号車もデュバルから小暮卓史へとスイッチ。彼らに追随する他車も続々ピットインを行い、レースは後半戦へと突入する。
再び1号車がトップに立つと、2番手を走る18号車の小暮は、1号車の脇阪に猛烈なアタックを開始。現状維持でのタイトル獲得ではなく、あえて勝利にこだわったのである。脇阪と小暮の攻防戦は、周回を重ねるごとにヒートアップ。トップドライバー同士の火花散るバトルに、見守る観客からは大きな歓声が上がった。
小暮の「守りに入らない走り」に、ベテラン脇阪もきっちり応戦。ときには軽く接触しながらも相手をけん制、激しくもクリーンなバトルが繰り広げられた。結局、コンマ数秒の戦いを脇阪がものにし、チームに待望の今季初勝利をもたらした。ランキングは暫定4位から2位へと引き上げられた。
2位フィニッシュの小暮は「トップが狙えるクルマだったし、勝てるチャンスもあった。だから最後まで攻めようと思った」とレース中の心境を吐露。レース直後は、チャンピオン獲得のうれしさと優勝に届かなかった悔しさとが入り混じったというが、チームをシリーズチャンピオンへと導いただけでなく、HSV-010にもデビューイヤーのタイトルをもたらすという大役を果たし、最後には満面の笑みを見せた。
GT300はトップ独走
ウェイトハンデのない戦いは、GT300でも数々の名勝負を生み出した。勝てばチャンピオン獲得となるNo.3 TOMICA Zが序盤からズバ抜けた速さで後方を大きく引き離しにかかる。2位以下は目の前のライバルとの攻防戦で手一杯の状態だったが、そこでノーウェイトならではの真剣勝負が繰り広げられたのだ。
ランキングトップのNo.43 ARTA Garaiya(新田守男/高木真一組)やNo.7 M7 MUTIARA MOTORS雨宮SGC7(谷口信輝/折目遼組)らが、思いどおりのレースを展開できないでいるなか、レースを盛り上げたのは、No.86 JLOC ランボルギーニ RG-3(山西康司/関口雄飛組)とNo.11 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP F430(田中哲也/平中克幸組)の2台。ルーティンワークの後で始まった2台のバトルは順位を入れ替えながら、GT500のトップ争いに巻き込まれながら、粘りある走りを披露した。2位の座は、タイヤ無交換でポジションを上げたNo.2 アップル・K-one・紫電(加藤寛規/濱口弘組)が獲得。3位争いは最終的にNo.86 JLOCが制し、今季初表彰台を獲得した。
ライバル不在の恵まれた状況で勝利し、逆転チャンピオンに輝いたNo.3 TOMICA Z。今季は着実なレース運びで、第6戦以外はすべてポイントを獲得しており、その底力が最終戦で一気に開花するかたちとなった。
シーズンを飾るお楽しみイベントも
今回のもてぎ戦をもって2010年のシリーズ戦を終了したSUPER GTだが、今年はフォーミュラ・ニッポンとの合同レースイベントも実施される。「JAF Grand Prix SUPER GT & Formula NIPPON FUJI SPRINT CUP 2010」と銘打たれた試みで、国内2大カテゴリーによるスプリントレースを3連戦で実施。SUPER GTのドライバーはそれぞれ単独で1レースずつ走る。ローリングスタートが基本のGTでスタンディングスタートが行われるのも、観客にとって見どころとなりそうだ。
イベントの日程は11月12から14日までの3日間。富士スピードウェイがその舞台となる。
(文=島村元子/写真=オフィスワキタ KLM Photographics)
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