MVアグスタ・ドラッグスターRR SCS(6MT)
アグレッシブなイタリア美人 2026.07.15 JAIA輸入二輪車試乗会2026 宝石とも形容される伊MVアグスタのバイクのなかでも、アグレッシブなデザインと前のめりな走りで異彩を放つ「ドラッグスター」。自動クラッチシステム「SCS」が搭載されたモデルに試乗し、刺激的でありながら懐の深さも合わせ持つ走りに触れた。イタリアのバイクならではの官能性
MVアグスタ・ドラッグスターRR SCSを紹介する前に、そのルーツとなるネイキッドスポーツ「ブルターレ」のことを説明しておかなければなるまい。
最初にブルターレが登場したときは、メチャクチャに元気がいいバイクだと思ったものである。コンパクトな車体にパワーのあるエンジンを搭載していたし、今みたいにパワーマネジメントとかトラクションコントロールもなかったから、走りたくてたまらないバイクをなだめているような印象。「まるで元気のよすぎる大型犬を散歩させているみたい」と当時編集長をしていた『クラブマン』誌で書いたら、オーナーの方から、「まったくその通り」と連絡をいただいた。そんなバイクとして生まれたのである。
2010年代に入るとスーパースポーツ「F3」由来の軽量コンパクトな3気筒エンジンを採用したブルターレ675/800系が登場し、2014年にはブルターレ800をベースに、極端に短いテールや200mm幅のリアタイヤを採用して、より攻撃的なストリートファイターへと仕立てたドラッグスターが生まれた。
今回試乗したMVアグスタ・ドラッグスターRR SCSは、電子制御も進化してずいぶんと乗りやすくなっていたし、SCSという自動クラッチシステムも採用されて簡単に走れるようになったけれど、基本的な性格は変わらない。スロットルを開ければグォンという排気音が背筋をゾクゾクさせる。加速のフィーリングだって官能的。こういうフィーリングをつくり出すのは、やっぱりイタリア人はうまい。
刺激的でかつ懐が深い
200mmサイズのぶっといリアタイヤもあって、ハンドリングは以前のようなカミソリがごとき切れ味ではないけれど、それでも俊敏。かつての激しいスポーツネイキッドのなかには、ライダーが意識してフロント荷重を高めてやらないと旋回性を引き出せないような難解なマシンもあったけれど、初期のブルターレは比較的乗りやすいスポーツネイキッドだった。この特性がさらに洗練されている感じである。
ちなみにSCSは、ホンダの「DCT」やBMWの「ASA」のような自動変速機ではなく、言ってみれば遠心力を利用して作動する自動クラッチだ。これに双方向クイックシフターが組み合わされているため、低速での変速では若干コツンというショックを感じることはあるが、一番面倒なスタート/ストップではスムーズだし、クラッチを握る必要はない。ライバルと比べて緻密な制御を行っているわけではないのだけれど、走っているとこれで十分というライダーも少なくないはずである。
高級なパーツで美しく着飾っていて、人々の目を引きつけるようなあでやかさがあり、一緒にいるといつもワクワクするような刺激に満ちている。そして疲れたときは優しく助けてくれる。たぶんイタリアの男たちが求める理想の女性をバイクにしたら、MVアグスタ・ドラッグスターRR SCSになったんじゃないかなあ、なんて思うのである。
(文=後藤 武/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2035×935×--mm
ホイールベース:1400mm
シート高:845mm
重量:197kg(燃料を除く)
エンジン:801cc 水冷4ストローク直列3気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:140HP(103kW)/1万2300rpm
最大トルク:87N・m(8.87kgf・m)/1万0250rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:325万円
◇◆JAIA輸入二輪車試乗会2026◆◇
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後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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