トライアンフ・タイガースポーツ660(6MT)
正真正銘の万能マシン 2026.07.08 JAIA輸入二輪車試乗会2026 英国の老舗、トライアンフが擁するスポーツツアラー「タイガースポーツ660」が2026年モデルに進化! 最高出力を95PSまで高めた最新バージョンは、いかなる走りを身に付けているのか? スポーツネイキッドに比肩するその実力に触れた。進化は続くよどこまでも
タイガーじゃなくてタイガー“スポーツ”。ロードタイヤを履いたアドベンチャーツアラーだ。兄弟車の「トライデント660」をベースに設計・開発された成り立ちで、オンロード重視のマシンセッティングによってコンセプトを煮詰めている。確かに前後17インチだしね! ざっくり言えば「アップライトなライディングポジションのワインディングランナー」といった感じか。いや、「アドベンチャーマシンの衣をまとったストリートトリプル」と表したほうが、立ち位置の真実をとらえているかもしれない。
当日タイガースポーツ660と対面したタイミングでやっと、「あ、4年前の2022年にもこのJAIAで乗っていたな~」と古い記憶を呼び覚ました筆者。そのときから外観の印象は大きく変わってはいないものの、細部デザインが更新されたことは2車を見比べると分かりやすい。でも大切なのはそこではなく、中身。メカニズムのブラッシュアップは見た目の変化以上に著しかった。
来歴をかいつまもう。2021年に電子制御スロットルを搭載して初登場。2025年モデルでクイックシフターやクルーズコントロールを標準化させるなどして大幅にアップデート。そこからわずか1年、「去年買った人はちょっとションボリ~」というトピックが、この最新2026年モデルには含まれている。エンジンの最高出力が81PSから95PSに一気に引き上げられたのだ。実に大盛り。いきなりステーキ、いきなり(14PS)増量。新型タイガースポーツはヤル気満々なのである。
またがれば身長172cmの筆者にとって足つきはそれほどハッピーではない。でも両足の前半に体重がしっかり乗せられるので不安はほとんどない。ライダーの目の前のスクリーンは形状が変更され防風性が向上、燃料タンクの容量も17リッターから18.6リッターにアップされている。特にフロントスクリーンの簡便さは旧型でも強く印象に残っていて、ハイト(全高1312mmから1395mmまでの83mm幅で調整可能)の昇降を片手で一瞬にして行える。このありがたみは旅の途上で肌身に感じるし、その快適さとともに距離はおのずと延びるだろう。ライダーの“守られ感”を、このコンパクトなスクリーンが保証してくれる。
どこまで欲張りなやつなんだ!
そして一球入魂! この水冷直列3気筒エンジンこそがタイガースポーツの“決め球”だ。多少の荒っぽさを含みつつ、1万rpm超までよどみなく一気に吹け上がり、それでいてパワーもトルクもフラットに出力してくれる。気持ちよさが終始途切れない。サイコーじゃないか。停止からの発進時のみ、わずかばかり1速のハイギアードさを感じるが、低速トルクが痩せているわけではないので少しワイドにスロットルを開ければ難なくスタートを切れる。以降、回転全域の80%で最大トルクが得られるというのだから、抜群にフレキシブルなエンジン特性だ。
スロットルボディーをシングルから独立タイプのトリプルにしたことや、エアボックスの大容量化、シリンダーヘッドの改良、カムのハイリフト化などの仕様変更で上乗せされた“14PSぶん”。でもごめんなさい、新旧2台を並べてつぶさに乗り比べないと、たぶん違いは分からない。車重が7kg増えていることに加え、そもそも旧モデルでも十二分にパワフルだったことを考えると、95PSの最高出力はもはや威張りのようなものかもしれない。筆者にとってそのハイパフォーマンスさは身の丈を超えたぜいたくでしかない。
腹下の短いステンレス製サイレンサーが、660ccトリプル独特の官能的なエキゾーストノートを響かせ、エアインテークからは扇情的な吸気音が耳に届く。兄弟車であるトライデントの低く構えたフォルムと、タイガースポーツのそそり立つようなフォルムは雰囲気こそまったく違うものの、パワーの源の“ビビッドさ”は通底する。タイガースポーツもハンドリングはトライデント以上にヒラヒラと軽快だし、加えてパニアケースを駆使すれば積載量もかなりイケる。しかも、いまやバーゲンと言える117万9000円の正価。「どんだけ欲張りなバイクなんだ!」という感動は試乗後、時間がたってもまったく変わらなかった。乗り味にしても、エンジンのキャラがこんなにも前に出てくるバイク……いまどきなかなかないですぜ、旦那。
(文=宮崎正行/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×828×1395mm
ホイールベース:1418mm
シート高:835mm
重量:211kg
エンジン:660cc 水冷4ストローク直列3気筒DOHC 4バルブ(1気筒当たり)
最高出力:95PS(70kW)/1万1250rpm
最大トルク:68N・m(6.9kgf・m)/8250rpm
トランスミッション:6MT
燃費:4.9リッター/100km(約20.4km/リッター)
価格:117万9000円
◇◆JAIA輸入二輪車試乗会2026◆◇
【トップページへ戻る】
【前】ハーレーダビッドソン・ナイトスター(6MT)
【後】ベンダ・ナポレオンボブ250(6MT)

宮崎 正行
1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。
-
MVアグスタ・ドラッグスターRR SCS(6MT) 2026.7.15 宝石とも形容される伊MVアグスタのバイクのなかでも、アグレッシブなデザインと前のめりな走りで異彩を放つ「ドラッグスター」。自動クラッチシステム「SCS」が搭載されたモデルに試乗し、刺激的でありながら懐の深さも合わせ持つ走りに触れた。
-
ベンダ・ナポレオンボブ250(6MT) 2026.7.10 個性的なバイクがそろうJAIA輸入二輪車試乗会の会場でも、ひときわ強烈な存在感を放っていた「ベンダ・ナポレオンボブ250」。中国からやってきた250ccクラスのクルーザーには、他のこのセグメントのバイクにはない“こだわり”が存分に注ぎ込まれていた。
-
ハーレーダビッドソン・ナイトスター(6MT) 2026.7.3 ハーレーダビッドソンの水冷Vツインモデル「ナイトスター」に試乗。「X」シリーズのディスコンに空冷「スポーツスター」の復活と、さまざまな情報が飛び交っているハーレーの入門モデル群だが、ナイトスターの未来やいかに? 走りながら考えた。
-
BMW R1300RS(6AT) 2026.7.1 BMWが擁するフラットツインの大型スポーツツアラー「R1300RS」に試乗。巨大なボクサーエンジンと安定志向の足まわりの調律は、大人のライダーが週末を楽しむためのバイクとして、完璧な仕上がりをみせていた。
-
モルビデリC252V(6MT) 2026.6.26 イタリアのモルビデリが中国の資本のもとで復活! 試乗した250ccクラスのクルーザー「C252V」は、かつての中国製品のイメージとは一線を画す、完成度の高いマシンに仕上がっていた。再生とともにグローバルブランドへと脱皮した、名門の実力に迫る。
-
NEW
DS N°8エトワールAWD(4WD)
2026.8.22試乗記DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。 -
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】
2026.8.21試乗記メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。 -
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性
2026.8.21デイリーコラム欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。 -
FCEVで世界一の販売台数 「ヒョンデ・ネッソ」にみる水素の可能性と普及へのカギ
2026.8.20デイリーコラムフルモデルチェンジしたヒョンデの燃料電池車(FCEV)「ネッソ」は、1014km(参考値)の一充填走行距離を実現したという。進化したゼロエミッションの走りを味わいながら、ヒョンデが目指す水素社会の可能性とFCEVの未来について考えてみた。 -
第292回:350SEが運ぶのは幸福か、それとも究極の不幸か…… 『星の時 4K』
2026.8.20読んでますカー、観てますカーブラジルの女性小説家クラリッセ・リスペクトルが1977年に発表した小説を、女性監督スザーナ・アマラウが1985年に映画化した伝説の作品。「メルセデス・ベンツ350SE」がもたらす運命の瞬間を謎めいた手つきで描き出す。 -
第975回:ホンダ&スバルのTシャツがイタリアを席巻中
2026.8.20マッキナ あらモーダ!イタリアで、ホンダやスバルをモチーフにした“日本車Tシャツ”が人気に。自動車をモチーフにしたアパレルの世界で、日本車や日本のブランドがもてはやされる理由とは? 素直に喜べないその背景を、現地在住の大矢アキオが考察する。

























