「スバルBRZ」が採用した「新しいシフトレバー構造」とは何か?
2026.08.12 デイリーコラムスーパー耐久で得た知見を活用
スバルは7月30日、「BRZ」の改良モデルを発表した。改良のポイントは、運転支援システム「アイサイト」の機能強化とモータースポーツで培った知見を活用してマニュアルトランスミッション(MT)の操作性を向上させたことである。
アイサイトに関しては、MT車に広角単眼カメラを採用した(AT車は従来から広角単眼カメラ)。認識範囲を拡大したステレオカメラと組み合わせることで、交差点における衝突回避サポートの作動範囲が拡充しているという。ドライバーにさらなる安心感を提供する機能強化だ。
さて、気になるのはMTの操作性向上である。プレスリリースには「スーパー耐久シリーズへの参戦を通じて得られた知見を活用したシフトレバー構造を採用することにより、従来以上にスムーズなシフト操作を可能とした」とある。
得られた知見って何? どんな構造にしたの? と頭の中が疑問符でいっぱいになったが、プレスリリースに記載されている情報はこれだけである。モヤモヤしている筆者に先んじてwebCG編集部がスバル広報部に質問を投げてくれた。広報部を通じて開発部隊から返ってきた回答から要点を抜き出すと以下のようになる。
「今回の改良では、スーパー耐久シリーズ参戦車両の開発を通じて得られた知見を生かし、シフトセレクト機構の構成部品形状を最適化しました。具体的には、シフト操作時の抵抗要因となる部品の面取りを拡大しております。なお、面取り拡大量はシフトの操作感や耐久性とのバランスを考慮し最適化しています」
「シフト/セレクト機構の構成部品形状の最適化により、シフトダウン時の操作感が向上し、とくにスポーツ走行などで使用頻度の高い5速から4速へのシフトダウンを、よりスムーズかつ正確に行えるようにしました。また、シフト操作時の引っかかり感を低減することで、ドライバーが狙ったギアを選択しやすくなり、操作のしやすさと安心感の向上にもつながっています」
節度感と操作感のバランス
BRZは2.4リッター水平対向4気筒自然吸気エンジンに、6段MTを組み合わせている。トランスミッションは縦置き。一般的なHパターンのシフトゲートを持ち、リバースは左上に配置されている。シフトレバーの横方向の動き(を「セレクト」と呼ぶ)で変速したいギア(歯車)を受け持つシフトロッドを選択し、シフトレバーの前後方向の動き(を「シフト」と呼ぶ)で半環状のシフトフォークを動かして、スリーブと呼ぶ円環状の部品とその内周でかみ合い、シャフトとかみ合っているハブを軸方向に動かしてギアを選択する。すると、空転していたギアがシャフトと一体となり動力が伝わる仕組み。
プレスリリースに「シフトレバー構造」と書いてあることから、今回の改良はトランスミッションの変速機構そのものではなく、セレクト/シフトする際のレバーの軌跡を決めるガイドプレートの形状に手を入れたことが考えられる。ガイドプレートはシフトレバーの土台部分に設置されている。フェラーリの伝統的なシフトゲートのような形状をしており、レバーの動きを文字どおりガイドしつつ誤操作を防ぐために動きを規制する(ブーツに隠れているので目視はできない)。
このガイドプレートの形状がシフトフィーリングに影響を与える。ニュートラル側の角を角張った形状にすればカチッとした節度感のあるシフトフィールになり、角を丸めると斜めシフトがしやすくなる。ただし、節度感を失いやすくなる恐れがある。BRZのMTはもともと「節度感のあるスポーティーなシフトフィールを実現するとともに、斜め方向(2⇔3速、4⇔5速)のクイックかつ滑らかなシフト操作を可能にしています」と、スバル公式ホームページ内でBRZの特徴を紹介するコーナーに記してある。
BRZの改良モデルは、「面取り量を拡大した」とのコメントがあることから、5速と4速のルート上にあるガイドプレートの角がさらに落とされ、シフトレバーがスッと抜けてスッと入るようになっているのだろう。節度が失われてグニャグニャしないか気になるところだが、「操作感とのバランスを考慮し最適化」の言葉を信じたい。
「既存のマニュアルトランスミッションも高い操作性を実現していましたが、スーパー耐久シリーズへの参戦を通じて新たな知見が蓄積されたことで、さらなる改良の余地を見いだすことができました。今回はその知見を市販車へフィードバックしたものであり、より気持ちよく、より正確なシフト操作を目指した継続的な進化の一環です」
5速から4速へシフトダウンするシーンでは減速して前にGがかかっているのに、シフトレバーは後ろに引かなければならず、精度の高い操作を難しくする。旋回中であれば左右どちらかにもGは発生し、さらに無理な体勢を強いられる。そんなシビアな状況でスムーズに操作するための改良が市販車に折り込まれたということだ。漫然と走っているときではなく、気合いを入れて走っているときにこそ真価を発揮する改良である。
(文=世良耕太<Kota Sera>/写真=スバル、トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

世良 耕太
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