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トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)

人気者ですみません 2026.10.19 試乗記 高平 高輝 トヨタの「ランドクルーザー“300”」にハイブリッドパワートレイン搭載モデルが登場。環境負荷低減のために牙を抜かれた……どころか、電気の力を味方に、さらに力強さを増しているから面白い。愛知県のオフロードコースで乗った印象をリポートする。
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行列は行列を呼ぶ

どんなに人気沸騰のクルマでもそのうち必ず落ち着くものだが、そのなかでここ何年も手に入らない、注文できるかどうかも明らかではないという状態が続いているのがトヨタのランドクルーザーシリーズである。トヨタのウェブサイトに掲示されている納車時期の目処によれば、“300”も“250”もさらには新型の“FJ”も相変わらず「販売店にお問い合わせください」のままである(2026年10月上旬時点)。といっても供給が滞っているわけではない。それどころか直近の2026年7月はランクルシリーズで約8000台、8月は5500台が登録され、車種別ランキングでも7位につけている。本格的なクロスカントリービークルにしてこの数字は素直に驚きである。

以前もお伝えしたが、「今も昔も(“70”は)年産8万台で目いっぱいつくっているのに、いったいどうしちゃったんですかねえ?」とは、3ナンバー登録できるようにさまざまな改良を施して2023年に再再販された「ランクル“70”」の試乗の際に聞いた開発主査の言葉である。人気ぶりにうれしい悲鳴というよりは率直な戸惑いが感じられたものである。世界中から引く手あまたのランドクルーザーは以前から海外向けが大半で(今も“70”は9割、“300”も7割が海外向けという)、そのほとんどを国内のトヨタおよびトヨタ車体の工場で生産し、輸出している(一汽トヨタの成都工場で「プラド」の名前で“250”を生産、またケニアとポルトガルに“70”のノックダウン工場がある)。この円安のなか、正直もうかる海外市場よりも国内向けを優先しろというのも無理筋であろう。

ちなみに“70”は現在生産休止中。“250”は4月のマイナーチェンジの際にガソリン車のみ発売され、人気のディーゼル車については2026年12月以降の発売予定という。1GD-FTV型2.8リッター直噴ディーゼルターボ搭載車のみ販売停止中なのは、おそらく法規対応などが理由と思われる。

今回はトヨタが愛知県の「さなげアドベンチャーフィールド」でメディア向けに開催した「ランドクルーザー群試乗会」に参加。3.5リッター(3444cc)のV6ハイブリッドパワートレイン搭載の「ランドクルーザー“300”GRスポーツ」のインプレッションをお届けするとともに、さまざまなランドクルーザーシリーズの写真を紹介する。
今回はトヨタが愛知県の「さなげアドベンチャーフィールド」でメディア向けに開催した「ランドクルーザー群試乗会」に参加。3.5リッター(3444cc)のV6ハイブリッドパワートレイン搭載の「ランドクルーザー“300”GRスポーツ」のインプレッションをお届けするとともに、さまざまなランドクルーザーシリーズの写真を紹介する。拡大
“300”のハイブリッドパワートレインはシステム全体で最高出力457PS、最大トルク790N・mを発生する。
“300”のハイブリッドパワートレインはシステム全体で最高出力457PS、最大トルク790N・mを発生する。拡大
他の「ランドクルーザー」と比べて乗ったこともあり、“300”はこんな悪路でも乗り心地のよさを感じられた。キックバックが極めて小さい電動パワステの採用も効果大だ。
他の「ランドクルーザー」と比べて乗ったこともあり、“300”はこんな悪路でも乗り心地のよさを感じられた。キックバックが極めて小さい電動パワステの採用も効果大だ。拡大
他のシリーズのホイールトラベルが450mm前後なのに対し、“300”は約600mmを確保。豪華で安楽なだけでなく、悪路走破性の面でもフラッグシップだ。
他のシリーズのホイールトラベルが450mm前後なのに対し、“300”は約600mmを確保。豪華で安楽なだけでなく、悪路走破性の面でもフラッグシップだ。拡大
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ガソリン車はハイブリッドのみに

変わらないのがランクルの特徴でもあるが、法規対応などで仕様変更が必要なことは当然ある。最近ではさらに厳しくなった通過騒音規制に適合させるため、継続生産モデルでも次々とマイナーチェンジが加えられている。ランドクルーザーのフラッグシップである“300”もこの9月にマイナーチェンジを受けて、装備を充実させるとともにラインナップが見直された。注目は新たにV6ツインターボ+ハイブリッドが追加され、代わりに純粋なV6ツインターボエンジン搭載車が廃止されたこと。これで“300”はV6ハイブリッドとV6ディーゼルターボの2本立てとなり、ハイブリッドは「ZX」と「GRスポーツ」の2グレード(7人乗り)、ディーゼルターボ(5人乗りのみ)は「ZX」と「GRスポーツ」に加え、新たに「GX」グレードが加わった(これまでの「AX」と「VX」は廃止)。価格も当然上昇しており、ディーゼルターボのGRスポーツで915万0900円、ハイブリッドの同じくGRスポーツは1020万0300円と大台を超えた。2021年のデビュー当初はGRスポーツのディーゼルで800万円、ガソリンV6ツインターボで770万円だったからだいぶ上昇したが、“250”とのすみ分けを考えると致し方なしというところか。

その代わりというべきか、V6ディーゼルターボ搭載のGXは一部装備を省略したシンプルかつオフロードでの実用性を重視したグレードで(電動フロント&リアデフロックも装備)、価格も630万800円と抑えられている。残念ながらこちらは展示のみで試乗はできなかった。

ショートボディーの“70”。三角窓が付いていたり、室内に灰皿が備わっていたりするが、中南米やアジア各国で販売されるれっきとした現行生産モデルだ。
ショートボディーの“70”。三角窓が付いていたり、室内に灰皿が備わっていたりするが、中南米やアジア各国で販売されるれっきとした現行生産モデルだ。拡大
開発スタッフにショート版”70”の国内での販売予定を聞いてみたところ、「残念ながらまったくありません」とのことだった。
開発スタッフにショート版”70”の国内での販売予定を聞いてみたところ、「残念ながらまったくありません」とのことだった。拡大
2.8リッターディーゼル搭載の“250”。2026年12月以降にマイナーチェンジモデルが発売予定とアナウンスされている。
2.8リッターディーゼル搭載の“250”。2026年12月以降にマイナーチェンジモデルが発売予定とアナウンスされている。拡大
「さなげアドベンチャーフィールド」では“FJ”から“300”までの4種の「ランクル」と「ハイラックス」(新型!)のレンタル試乗もできる。自分のランクルでやってきて「傷つけたくないから……」と同じモデルをレンタルしてオフロードに挑む人が結構多いらしい。
「さなげアドベンチャーフィールド」では“FJ”から“300”までの4種の「ランクル」と「ハイラックス」(新型!)のレンタル試乗もできる。自分のランクルでやってきて「傷つけたくないから……」と同じモデルをレンタルしてオフロードに挑む人が結構多いらしい。拡大

「LX」同様のハイブリッドパワートレイン

新たに加わったハイブリッドのGRスポーツも「さなげアドベンチャーフィールド」のロック&モーグルコースだけの試乗だったが、ランクルのフラッグシップたる“300”のトップモデルにふさわしい実力を垣間見ることができた。

国内向けのランドクルーザーでは初採用となるハイブリッドシステムだが、ご存じのように基本コンポーネンツを共用する「レクサスLX」にはハイブリッドモデルがラインナップされている(また海外向けの“250”にはガソリンターボハイブリッド、ディーゼルマイルドハイブリッドの設定あり)。“300”に搭載されたパワートレインも「LX700h」と同様のもので、V6ツインターボエンジン単体では最高出力408PS/5200rpmと最大トルク650N・m/2000-3600rpmを発生。そこに54PSと290N・mを生み出すモータージェネレーターが加わり、システム合計では457PSと790N・mを生み出すという(従来のV6ツインターボは415PSと650N・m)。

このシステムはトヨタハイブリッドの主流である2モーターのシリーズパラレル式ではなく、エンジンとローレンジ付き10段ATのトルクコンバーターの間にクラッチとモーター1基を挟み込んだパラレル式である。海外向けのトヨタの大型ピックアップ「タンドラ」などに採用されており、トレーラーけん引などにも対応するシステムだ。状況に応じてエンジンのみ/モーターのみ、あるいは両方を使った走行が可能であり、さらに普通のハイブリッドなら省略できる12Vのスターターとオルタネーターを別に備え、バッテリーの防水対策も万全だという。荒野のなかで万が一ハイブリッドシステムにトラブルが発生したとしても、ガソリン車として問題なく帰って来ることができるのがランドクルーザーである。

アジア各国等で販売されるショートボディー・ほろ屋根の“70”は展示のみだった。ボディーサイドのデカールがいい感じだ。
アジア各国等で販売されるショートボディー・ほろ屋根の“70”は展示のみだった。ボディーサイドのデカールがいい感じだ。拡大
パワーユニットは4.2リッター直6 SOHCディーゼルの1HZエンジン。5段MTとの組み合わせだ。
パワーユニットは4.2リッター直6 SOHCディーゼルの1HZエンジン。5段MTとの組み合わせだ。拡大
この内装のクルマが現行生産モデルということに驚きを隠せない。「仕向け先が“自由な国”なので……」とのことで、シートベルトが備わらない。助手席の横幅が広くなっており、実は前席は3人掛けである。
この内装のクルマが現行生産モデルということに驚きを隠せない。「仕向け先が“自由な国”なので……」とのことで、シートベルトが備わらない。助手席の横幅が広くなっており、実は前席は3人掛けである。拡大
リアは左右にはね上げられたベンチを引き出して計4人が座れる。つまり乗車定員は7人だ。
リアは左右にはね上げられたベンチを引き出して計4人が座れる。つまり乗車定員は7人だ。拡大

悪路を悪路と思わせない

先日リポートしたように、ランクル“FJ”でもかなりハードな「さなげアドベンチャーフィールド」のオフロードコースを平気な顔で走破できたが、“300”GRスポーツともなれば、その走りっぷりはまた別格だ。「MTS(マルチテレインセレクト)」のモードによっては、ほぼモーターだけで、しかもスロットルペダルをほとんど踏まずにロックセクションをゆっくり、ねっとり舐めるように乗り越えることができる。悪路でははうようにゆっくりと走る際のたくましさと扱いやすさが重要だが、ハイブリッドランクルはモーターの威力で実に滑らかに、モリモリと力強く着実に進む。またハイブリッド車に新たに採用された電動パワステのおかげで(従来は油圧+電動アクチュエーター式)、岩場でもまるでキックバックがなく、むしろこんなに簡単でいいのかと戸惑うほどフールプルーフだ。急斜面の途中には路面がドロドロに掘れた曲がり角があったが(同乗のインストラクターから大丈夫ですよ、と言われなければあきらめるほどのコンディション)、ステアリングを切ったほうに当たり前に着実に上っていく(しかもタイヤは標準装着のM+S)。

世界各地の似たような場所でかつて何度もスタックした経験を持つ私に言わせてもらえば、これは実はまったく普通ではない。緻密な制御で駆動力を確保するトラクションコントロールの効果絶大である。酷い悪路でもまったくそれを感じさせずに室内は平穏無事。世界中から引く手あまたなのも納得の出来栄えである。

(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)

2026年は「ランドクルーザー」シリーズの75周年に当たるため、「さなげアドベンチャーフィールド」にほど近いトヨタ博物館にも古いランクルが展示されていた(すでに終了)。
2026年は「ランドクルーザー」シリーズの75周年に当たるため、「さなげアドベンチャーフィールド」にほど近いトヨタ博物館にも古いランクルが展示されていた(すでに終了)。拡大
1951年の「トヨタ・ジープ」が起源であり、初めて「ランドクルーザー」を名乗ったのは1955年。これは1957年のFJ25L型。
1951年の「トヨタ・ジープ」が起源であり、初めて「ランドクルーザー」を名乗ったのは1955年。これは1957年のFJ25L型。拡大
FJ40型は1960年にデビューし、1984年まで生産された。これは1974年式。
FJ40型は1960年にデビューし、1984年まで生産された。これは1974年式。拡大
ご存じのとおり“70”は現在まで生産が続いているご長寿モデル(写真は1987年式)。撮影を担当した向後一宏カメラマンがかつて同じ色の個体を所有していたとのことで、熱心に見入っていた。
ご存じのとおり“70”は現在まで生産が続いているご長寿モデル(写真は1987年式)。撮影を担当した向後一宏カメラマンがかつて同じ色の個体を所有していたとのことで、熱心に見入っていた。拡大

テスト車のデータ

トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4965×1990×1935mm
ホイールベース:2850mm
車重:2690kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:10段AT
エンジン最高出力:408PS(300kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/2000-3600rpm
モーター最高出力:54PS(40kW)
モーター最大トルク:290N・m(29.5kgf・m)
システム最高出力:457PS(336kW)
システム最大トルク:790N・m(80.6kgf・m)
タイヤ:(前)265/65R18 114V M+S/(後)265/65R18 114V M+S(ダンロップ・グラントレックH/T 31)
燃費:9.4km/リッター(WLTCモード)
価格:1020万0300円/テスト車=1027万7300円
オプション装備:ヒッチメンバー(7万7000円)

テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ
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