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また日産はやっちゃうのか!? 話題の新型「パトロール(サファリ)」をライバル「ランクル」と比較する

2025.01.06 デイリーコラム 工藤 貴宏
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およそ70年来のライバル

日産のフラッグシップSUVといえば「サファリ」……じゃなくて「パトロール」。パトロールとはサファリの海外での車名で(北米だと「アルマーダ」)、日本ではもう売っていないけれど中東やオーストラリアでは現役バリバリだ。そんなパトロールが14年ぶりにフルモデルチェンジし、プラットフォームもエンジンも刷新した新型に切り替わったというので、はるばる中東まで乗りに出かけてきた。

結論からいえば、出来栄えはすごかった。インテリアはラグジュアリーだし、砂漠まで走って確認した悪路走破性もバッチリ。そのうえ、オンロードにおいて日本での制限速度を大きく超えるような超高速域でのスタビリティーも「ウソでしょ!?」と思うくらい安定していてビックリ(これは「ランドクルーザー“300”」を超える印象)なのだから。

まあ、そんな仕上がりの良さについてはwebCGの試乗記をご覧いただくとして、今回のコラムのテーマは「宿命のライバルであるトヨタ・ランドクルーザーとどう違うのか?」ってこと。サファリとランドクルーザーはどちらも戦後の日本において、警察予備隊(のちの自衛隊)発足時に小型の荷物運搬車両として開発されたもの。警察予備隊は日産とトヨタのほか三菱にも声をかけて3社を競わせ、結局採用されたのは「三菱ジープ」だったというわけだ。

せっかく開発したものをお蔵入りさせるのはもったいないとして、民生用として販売されたのが「トヨタ・ジープ」と日産パトロールというわけ。追ってトヨタのジープは商標に引っかかることが判明してランドクルーザーに、日産は経緯はよくわからないけれど日本においては1980年に登場した3代目モデル(テレビドラマ『西部警察』でもおなじみ)からサファリへと改名された。つまり、ランクルとパトロールはルーツが同じと言っても過言ではないのだ。

1951年生まれの初代から数えて7代目となる、新型「日産パトロール」。2024年9月に発表され、同年11月から海外で販売されている。
1951年生まれの初代から数えて7代目となる、新型「日産パトロール」。2024年9月に発表され、同年11月から海外で販売されている。拡大
タフなクロスカントリーにしてはすっきりとしたデザインの、新型「パトロール」のインテリア。シフトセレクターもレバーではなくスイッチ式となっている。
タフなクロスカントリーにしてはすっきりとしたデザインの、新型「パトロール」のインテリア。シフトセレクターもレバーではなくスイッチ式となっている。拡大
「パトロール(サファリ)」のライバルといえば、真っ先に思い浮かぶのは「ランドクルーザー」だろう。こちらも1951年からという長い歴史を持つ、世界に冠たるクロスカントリーである。現行型は、国内では2021年8月に発売された。
「パトロール(サファリ)」のライバルといえば、真っ先に思い浮かぶのは「ランドクルーザー」だろう。こちらも1951年からという長い歴史を持つ、世界に冠たるクロスカントリーである。現行型は、国内では2021年8月に発売された。拡大
国内で1980年に発売された「サファリ」の初代モデル(写真は「サファリ バン」)。グローバル製品「パトロール」としては3代目にあたる。
国内で1980年に発売された「サファリ」の初代モデル(写真は「サファリ バン」)。グローバル製品「パトロール」としては3代目にあたる。拡大
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むしろ“アメ車”を食っている

閑話休題。ランクルの最新フラッグシップとなるランクル“300”と新型パトロールは何が違うのか?

最も大きな違いは車体サイズで、ランクル“300”が全長4950mm×全幅1980mmなのに対し、パトロールは全長5350mm×全幅2030mmとひと回り大きい。……なんて説明をすると、詳しい人は「だってパトロールは北米向けにアルマーダとして販売するでしょう。車体が大きなのはそんな事情によるものでしょ?」と思うかもしれない。が、それは半分正解だけれどすべてじゃない。

実は、車体がランクル“300”よりも大きいことで「ガチンコライバルとして争うことがない」というのが正解だ。

パトロールのサイズは、トヨタでいえば北米専用車の「セコイア」(中東でよく見かける先代セコイアは全長5210mm×全幅2030mm)以上。そしてドバイをはじめ中東では北米でしか正規の新車販売をしていないはずのセコイアがうじゃうじゃ走っていることからも、「ランクル“200”や“300”より大きくて室内の広いSUV」を求めるニーズがあることが理解できる。パトロールはそこも取り込んでいこうということなのだ。

現地のトヨタ関係者によると「パトロールはシェアを上げているが、かといってランクルの販売が減少しているわけではない。パトロールは「シボレー・タホ」や「GMCユーコン」から多くのユーザーを奪っている」とのこと。サファリのライバルはランクル“300”ではあるけれど、それだけではなくアメリカのフルサイズSUVたちも競合なのだ。

新型「パトロール」のボディーは同世代の「ランドクルーザー」のものに比べ、400mm長く、50mmも幅広い。ライバル同士とのイメージは強いものの、現実的には寸法に大きな差がある。
新型「パトロール」のボディーは同世代の「ランドクルーザー」のものに比べ、400mm長く、50mmも幅広い。ライバル同士とのイメージは強いものの、現実的には寸法に大きな差がある。拡大
「日産パトロール」に採用されている3.5リッターV6ツインターボエンジン。最高出力は425PSで、700N・mもの最大トルクを3600rpmで発生する。
「日産パトロール」に採用されている3.5リッターV6ツインターボエンジン。最高出力は425PSで、700N・mもの最大トルクを3600rpmで発生する。拡大
凹凸の激しい悪路を行く「トヨタ・ランドクルーザー“300”」。車重は7人乗りのガソリンエンジン車で2400kg台前半から2500kg強。約2800kgの「パトロール」に対しては1割ほど軽い。
凹凸の激しい悪路を行く「トヨタ・ランドクルーザー“300”」。車重は7人乗りのガソリンエンジン車で2400kg台前半から2500kg強。約2800kgの「パトロール」に対しては1割ほど軽い。拡大
「パトロール」とは対照的に、「ランドクルーザー」のコックピットまわりは武骨な印象を受ける。大きめのスイッチやレバー類は、悪路走行においても確実な操作ができることを意識してのもの。
「パトロール」とは対照的に、「ランドクルーザー」のコックピットまわりは武骨な印象を受ける。大きめのスイッチやレバー類は、悪路走行においても確実な操作ができることを意識してのもの。拡大

パトロールならではの良さはある

おそらく「ランクル“300”と、タホやユーコンがライバル関係にある」と思う人は少ないだろう。しかしパトロールだとタホやユーコンなど、トヨタであればセコイアがフォローするライバルたちとも戦う存在。それがランクル“300”とパトロールの最大の違いなのだと、中東でパトロールのハンドルを握りながら感じた。

正直なところ、キルティングのシートやレザー張りのダッシュボードなど新型パトロール最上級グレードのインテリアの仕立てはランクル“300”を超えていて「レクサスLX」水準だった。それに2列目も3列目もランクル“300”よりも広い。比べてみての印象は「パトロールを選ぶ人の気持ちはよくわかる」だ。

ところでパトロールは新型であっても、電子制御による悪路走行デバイスの搭載は控えめ。路面に合わせて走行モードを変更できる機能はあるけれど、クロールコントロール的なものはない。それに関して日産の開発者に尋ねてみたところ、考え方としては「砂漠やオフロードを走って楽しむ人は、電子制御デバイスに頼るよりも自分の腕で挑もうという人が多いから」とのこと。ランクル“300”の上位モデルはそのあたりの充実度がすごいものの、確かに言われてみればパトロールの考え方も一理あるなと思ったりして。

日産ファンのひとりとしては、そんなパトロールに(いまのところ)日本導入予定がないのは残念で仕方ないところ。確かに日本で売ってもたくさん売れるかといえばそうではないかもしれないけれど、「日産GT-R」も終止符を打とうとしているいま、日産のイメージリーダーとして、日産ファンをつくる存在として、こういうクルマをラインナップに加えたほうがいい気がするのは、きっと筆者だけではないだろう。

(文=工藤貴宏/写真=日産自動車、トヨタ自動車/編集=関 顕也)

キルティング加工が施された新型「パトロール」の上質なレザー内装。バーガンディーのカラーとも相まって豪華なムードを醸し出している。
キルティング加工が施された新型「パトロール」の上質なレザー内装。バーガンディーのカラーとも相まって豪華なムードを醸し出している。拡大
新型「日産パトロール」には3列目シートも用意されている。広さとしてはご覧のとおり、決して緊急用ではないたっぷりサイズ。
新型「日産パトロール」には3列目シートも用意されている。広さとしてはご覧のとおり、決して緊急用ではないたっぷりサイズ。拡大
悪路走行をサポートする機能が「ランドクルーザー」に比べて控えめなのも、新しい「パトロール」の特徴といえる。日産によれば、システムに過度に頼らないクロカンユーザーのニーズに合わせてのことだそう。
悪路走行をサポートする機能が「ランドクルーザー」に比べて控えめなのも、新しい「パトロール」の特徴といえる。日産によれば、システムに過度に頼らないクロカンユーザーのニーズに合わせてのことだそう。拡大
海外では6万5000ドル(邦貨にして約1018万円)というスタート価格で扱われる新型「パトロール」。日産によれば、現時点ではまだ国内導入の予定は立っていないとのこと。
海外では6万5000ドル(邦貨にして約1018万円)というスタート価格で扱われる新型「パトロール」。日産によれば、現時点ではまだ国内導入の予定は立っていないとのこと。拡大
工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

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