「ランドクルーザー“250”」のグレードによる装備の違いを精査する
2024.05.01 デイリーコラムもはや幻レベル
それにしても、いつから トヨタの「ランドクルーザー(ランクル)」はこんなに高根の花になってしまったのだろうか。
先日発売された「ランドクルーザープラド」改め「ランドクルーザー“250”」に関しても、「納車は1年半先らしい」とか「今からオーダーしたら2年でも無理らしいよ」とか、世間はその争奪戦の話題でザワザワしている。
2021年デビューの「ランドクルーザー“300”」に関しては瞬間湯沸かし器のようにあっという間に大量のオーダーが入った結果、受注停止となったままだ。「ランドクルーザー“70”」に関しても、日本向けの割り当てが少なすぎて(年間の配車は一店舗あたり1台にも満たない)まるでツチノコのように幻のクルマとなっている。
2007年にデビューした「ランドクルーザー“200”」の納車待ちなんて長くて半年ほどだったから、昨今の状況に比べればかわいいもの。今日のランクル人気には驚くしかない。
というわけで今回のコラムは、そんな人気沸騰中のランクル兄弟の最新モデルであるランドクルーザー“250”に関して。「グレードによる装備の違いを精査せよ!」というのが編集部からのお題だ。
ガソリン車が1グレード、ディーゼル車が3グレード
まずランクル“250”のグレードをおさらいしておくと、エンジンはガソリンとディーゼルをラインナップ。
排気量2.7リッターの4気筒自然吸気を積むガソリン車は中間タイプとなる「VX」の1グレードで3列シートの7人乗り。価格は545万円だ。
排気量2.8リッターの4気筒ターボとなるディーゼル車は、価格の安いほうから520万円の「GX」、630万円の「VX」、そして735万円となる最上級グレード「ZX」の3タイプ。GXは2列シートの5人乗りで、VXとZXは3列シートの7人乗りとなっている。
まずガソリンのGXとディーゼルのGXに装備差があるかといえば、“ない”と考えていい。厳密に言えばわずかな違いがあって、それは4WDのモード切り替えが3モードのガソリンに対してディーゼルは4モードになるほか、ドライブモードセレクト、ダウンヒルアシストコントロール+クロールコントロールが組み込まれる。「快適装備に差はなく、走行系の機能が多少異なる」と言っていいだろう。言い方を変えれば「走りの細かい部分を気にする人と本格オフロードを走る人以外は関係ない」となる。
ただ、なぜか、上位グレードZXと同じ12.3インチのフル液晶メーターやJBLのオーディオをメーカーオプションで選べるのはディーゼルだけだから、それらが欲しいのならディーゼルを買うしかない状況だ。
ところで編集部からは「ガソリンとディーゼルは同じグレード名なのに85万円も違うのはなぜ? それを解明して!」という指令もあった。それはランクル“300”だって同じくらいだろう……と思って調べたら、ランクル“300”のエンジン違いによる価格差はジャスト30万円。うーん、“250”とはずいぶん違うじゃないか……。
というわけでその疑問に対する答えは「走行機能系のアイテムの違いで価格差が50万円くらいあるから……」なんて間違っても言えるわけがなく、「販売戦略上」としか言いようがない。ただ、“300”と違って“250”の場合はディーゼルになるとターボも追加されるから(“300”はガソリン車もターボエンジン)ってことでお茶を濁しておこう……。ちょっと価格差ありすぎだな。
そして参考までに伝えておくと、中古車輸出が増える何年か先のリセールバリューは「ガソリン車のほうが有利。理由は燃料の制約が大きいクリーンディーゼルは国によっては敬遠されるから」というのが識者の見立てだ。
ZXなら何でも付いている
さてここからは、ディーゼルエンジン搭載車のグレードによる装備の差を見ていこう。
GXに対して110万円高いVXはシートがファブリックから本革へアップグレードされるほか、運転席の電動調整機能や前席のシートヒーター&ベンチレーション、後席エアコン、サンルーフ、電動バックドア、バックドアガラスハッチが備わるなど快適/便利装備が大きく違う。また後方歩行者に対するパーキングブレーキサポートなど一部の安全支援機能、そしてタイヤサイズ(幅が違う)やオーバーフェンダーの張り出し、そして内外装の加飾などにも差がある。さすが110万円差だけあって結構違うものだ。
いっぽうでVXに対して105万円高いZXになるとタイヤが18インチから20インチへアップグレードされるほか、「SDM(スタビライザーディスコネクトメカニズム)」と呼ばれるフロントスタビライザーを自動で切り離せるランクル“250”でウリの機構や電動リアデフロックが備わるなど悪路走破性メカニズムの充実度が大きく違う。そのうえでVXでは9万5700円のメーカーオプションとなる高速道路における渋滞時の手放し運転機能を標準装備し、マルチテレインモニターやパドルシフトといった運転サポート機能も追加。そして電動テールゲートにハンズフリー機能が加わり、メーターの液晶が7.0インチから12.3インチへ大型化し、AC100Vのアクセサリーコンセントやおくだけ充電といった便利機能も採用。JBLのプレミアムサウンドシステムだって標準装備だ。
装備差がありすぎて並べるだけでも文字数を大量に消費するが、さらにさらに助手席にも電動調整機能が入り、2列目にもシートヒーター&ベンチレーションが備わり、3列目の格納/展開機能が電動化されるなど至れり尽くせりである。これだけ違えば価格差105万円にもまあ納得できる。装備に見合う価格差と言っていいのではないだろうか。
気になる“300”との価格差
じゃあオマエはどう選ぶのか?
個人的には何の躊躇(ちゅうちょ)もなくディーゼルのGXを選ぶだろう。確かに装備の違いを見ればVXとかZXが欲しくなるけれど、欲張らなければ運転席の電動調整機能やシートヒーター&ベンチレーションも電動テールゲートだってなくたって大丈夫。それよりも520万円のプライスが魅力だし、そもそもランクル“250”が目指したのは「生活実用」という原点回帰なのだから、快適装備満載よりもシンプルな質実剛健仕様のほうが美しいのだ。念のために言っておくが、決して手元の資金が潤沢ではないゆえの強がりではない……と思う。いや思いたい。
手放すときのリセールバリューはガソリンのほうが割がよさそうだけど、そんな将来のことよりも今を考えて燃費がよく燃料単価も安いからランニングコストに優れるディーゼルを選びたくなる。
ただし、バリバリとオフロードを走ろうという人はどう走るかによってグレード選びが変わってきそう。例えばランクル“300”のように涼しい顔をして走り抜けたいなら、悪路走破性を高めるハイテク装備充実のZXがいいだろう。735万円もするけれど。
いっぽうで、同じオフロード走行でもランクル“70”のように、自分の腕を駆使しながら険しい道を乗り越えていきたいというのなら悪路走行用のハイテクが満載ではないGXやVXも大いにあり。むしろ、自分の腕で勝負する楽しみを備えたグレードと言っていいのではないだろうか。
それにしても、ランクル“250”の最上級グレードZXの735万円といえば「GRスポーツ」を除くランクル“300”のガソリン車の最上位グレード(「ZX」で730万円)が買える値段。ディーゼルとガソリンの違いがあるとはいえ、パワートレインでいえば6気筒ターボのランクル“300”用エンジンだって相当コストが高いはずだし。ついでにいえば、ランクル“300”のエントリーモデル「GX」はガソリン車ながら510万円で、“250”のGX(こちらはディーゼルエンジン)よりも10万円安い。
一体どうなってるの? メーカー的には「価格設定は個々のクルマによって異なる」ってことなのだろうが、調べれば調べるほど謎は深まるばかりだ。まあ、ランクル“300”は次のマイナーチェンジで車両価格がドーンと引き上げられるのは間違いなさそうだけど。
(文=工藤貴宏/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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