目指したのは二律背反の克服! 新型「三菱パジェロ」こだわりの走りを開発責任者が語る
2026.11.06 デイリーコラム「トライトンがベース」と言わないで
いよいよ三菱パジェロが復活する。三菱のフラッグシップモデルとしてふさわしいプレミアム感をまといながら、パジェロという名にふさわしい走りも身に付けているという。ではその走りとはどういうものなのか? お話を伺ったのは、三菱自動車プロジェクト推進室の松本貴明チーフビークルエンジニア。現行の「パジェロスポーツ」も担当している方だ。
まずはパジェロというクルマの土台についてだが、ここにはピックアップトラックの「トライトン」と同様、ラダーフレームを採用している。そのフレームはトライトンと一部を共用しているものの、断面が違ったりトレッドも変更したりしていることなどから、「新設計といえるレベル」だという。さらに、トレッドを広げたことからフロントサスペンションも新たに設計するとともに、リアも変更している。このことからも、巷で表されるような「トライトンベース」という言い方より、確かに新開発といったほうが事実に近いだろう。
実際にトライトンベースのパジェロスポーツと比較すれば、その違いは明確だ。あちらは車体構造の多くをベース車と共有しつつ、トラックの荷台部分をキャビンとしたPPV(Pick-up Passenger Vehicle)だ。一方パジェロは、インテリア、エクステリアもすべて刷新し、ボディー構造も新設計となっている。
目指したのはプレミアムとタフネスの両立
なぜここまでこだわったのか? それはパジェロという三菱のフラッグシップにふさわしい乗り心地の実現だ。松本さんは「リアサスペンションは、リーフスプリングだとどうしてもピョンピョン跳ねてしまうので、乗り味をよくするために5リンクリジッドに変更し、足をよく動くようにしました。またクロスメンバー(三菱ではデッキクロスと呼んでいる)も新作です」と説明。「パジェロだったらこの性能、この品質というものをお客さまは求めていますので、新作にせざるを得なくなるんです」と述べたとおり、ユーザーの期待値を超えるために専用開発となったようだ。
とはいえパジェロはラダーフレーム車である。この構造ではコーナリング時などにフレームとその上に載っているキャビンの間でズレが出て、安定性の低下につながることがある。そこでパジェロでは、「乗り心地をよくするために、上下方向には柔らかく動く一方で、水平方向には動かないようにボディーマウントをチューニングしました。これは操縦安定性の向上にも貢献しています。また『S-AWC』(車両運動統合制御システム)も旋回性を高めるのに使えますので、そういうものを組み合わせて、ラダーフレームのネガだった操縦安定性や乗り心地をカバーしています」という。
このほかにも、ラダーフレームらしさが出ないようにサスペンションモード、ショックのチューニング、それから各ブッシュ類も変更。またサスペンションには“ヘルパー”と呼んでいる部品を組み込んでおり、「バンプした時にサスペンションがバンプストッパーにがつんと当たるのではなく、その手前でヘルパーにタッチさせて、やんわりいなすようにしています」とのことだった。
しかし、それであれば最初からラダーフレームをやめればいいとも思えてしまうが、パジェロがラダーフレームを選んだのにも理由があるのだ。松本さんいわく、「(ラダーフレームは)強度耐久面で非常に優れています。日本は路面環境がいいのですが、中南米や東南アジアに行くと、こんな道を毎日走ってるの? みたいなところで使われる。そこで長く使用していただくためには、ラダーフレームのほうが有利なんです」と説明。車軸式のリアサスペンションについても、「モーグル路みたいな悪路では、リアはリジッドアクスルのほうがいい。すべての荷重が浮いていない方の車輪に乗るので、トラクションがかかりやすいんですね。そのほうが脱出性がいいという利点を取りました。良路での乗り心地や操縦安定性をカバーしながら、どんな道でも行けるようにしたのが、今回のフレームや足まわりの選択です」とコメントした。
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まずは悪路、そこから良路
しかし、パジェロとしてはオフだけでなくオンロードも重視しなければならない。新型ではどちらを優先したのか? そう松本さんに尋ねると、「悪路も良路も大事」としたうえで、「サスペンションのセッティングは、先に良路に合わせてしまうと、小さな凸凹をいなすことを優先して、足が動かなくなってしまう。大きな上下動のときに足がつっぱってしまうんです。だから、最初に悪路で足をつくり込んで、その後に良路に持っていくという手順を踏みました」と開発過程を説明した。ちなみに、三菱には乗り心地マイスターがいて、「『最初に悪路からやる。そうしないと足が動かない』といわれ続けています」とのことだ。
また舗装路での動的質感についても、「クロスカントリーSUVですし、クイックなハンドリングで乗り心地もゴツゴツした、欧州の乗用車みたいなクルマはパジェロではないですよね。どちらかといえば乗り心地に重きを置いて、コーナリングする時も不安感なく、お客さまの行きたい方向に、曲がりたいだけ曲がっていくようにしています。乗ってみると適度にロールはしますが、フラフラしないので不安感がない。そこを目指しました」と述べた。
快適性と走破性の両立こそパジェロ
最後に、開発責任者として一番実現したかったことを尋ねたところ、それは「フラッグシップとしての上質感を出すこと」だったという。わかりやすい例として、静粛性と快適性を松本さんは挙げる。「ドアを閉めた瞬間からシーンとした、外界から遮断された感じがします。これも上質感です。エンジンをかけてすっと前に進むときも静かで、振動絶縁性もいいのでディーゼルなのにあまり振動を感じない。走りだしても、乗り心地優先で細かい凹凸にも上屋が動かないようにしていますので、フラットな乗り心地を実現しています。まるで雲の上の走り。雲の上を行くみたいに、スーッと走っていくんです。これが悪路快適性にも貢献し、上質感にもつながっています。こういったことがパジェロらしさを一番感じていただけるところなんじゃないかな」とのことだった。
そして、「どこでもどんな時でも、どんな路面環境でも、安心して行って帰ってくることができる。それがパジェロです。これまでのパジェロがお客さまに受け入れられていたのは、悪路走破性だけではなく、普通の道も快適に走れたからです。そこは新型でも一番大事。快適性と走破性の両立がパジェロらしさであり、三菱らしさ、まさに核だと思っています」と語った。
まだ実際にステアリングを握っていないので、その走りを体感できてはいないが、雲の上の走りというワードは印象的だ。新型パジェロでは二律背反が隠れたテーマのようだが、本格的なクロスカントリーSUVとして、それをどこまで両立できているのか? 期待は高まるばかりだ。
(文=内田俊一/写真=三菱自動車、内田俊一、webCG/編集=堀田剛資)
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内田 俊一
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