第6戦モナコGP「ポイントリーダー、ウェバーの誕生」【F1 2010 続報】
2010.05.17 自動車ニュース【F1 2010 続報】第6戦モナコGP「ポイントリーダー、ウェバーの誕生」
2010年5月16日、モンテカルロ市街地コースで行われた伝統の一戦、F1世界選手権第6戦モナコGP。前戦スペインは「レッドブル向き」なコースでマーク・ウェバーが圧勝したが、ハイダウンフォースが要求されるモナコではライバルが息を吹き返すであろう、と思われていた。だがフタを開けてみると、ここでも1週間前と同じ様な、いやむしろよりパワーアップしたウェバーとレッドブルの姿がそこにあった。
■予選でのクビサの奇策、ウェバーの気迫
モナコほどおもしろく重要な予選が見られる場所はない。昨今の“オーバーテイク不全症状”があろうがなかろうが、F1マシンが2台並んで走ることをある意味拒否しているかのような、狭くツイスティなストリートコースで、今回も白熱のグリッド争いが繰り広げられた。
特筆すべきは、トップ10グリッドを決める予選Q3でのロバート・クビサだった。コンストラクターズランキング5位が相当のルノーのパフォーマンスをなんとか最大化しようと彼がとった作戦は、わずか10分しかないセッションで連続走行をしない、というもの。ライバルがコースに残り、計時を続けるのを尻目に、燃料軽めのマシンで、タイヤ交換を挟んで都合2スティントでアタックを行い、上位を目指した。
クビサは最初のスティントで1分14秒284という最速タイムをたたき出し、残り2分までタイミングモニターの最上位に名前を載せていた。ポールポジションも夢ではなかったが、それを奪ったのがウェバー。1分13秒826、第2スティントでタイムを向上させたクビサもかなわぬ唯一の13秒台で、ウェバーの今季3度目、レッドブルの6戦連続ポールポジションが決まった。
それでも見事にフロントローに並んだクビサに次いで、セバスチャン・ベッテルが3番グリッドを獲得。レッドブルはモンテカルロでも優勢であること、そして僚友ベッテルに0.4秒も差をつけたウェバーがスペインでの勢いを維持し続けていることを印象づける土曜日の午後だった。
わずかな差で予選4位となったフェリッペ・マッサに続き、2008年のモナコ・ウィナー、ルイス・ハミルトン5位、メルセデスのニコ・ロズベルグとミハエル・シューマッハーを間に挟み、5戦終了時点でポイントリーダーのジェンソン・バトンが8位からレースに臨むことになった。
上位に名前がないフロントランナーといえば、フェラーリのフェルナンド・アロンソだろう。彼は土曜日フリー走行中にカジノ前のマスネ・コーナーで派手にクラッシュし、マシンを損傷。予選に出走できず最後尾24位からレースを組み立てなければならなくなった。
2006-07年とモンテカルロを制した元ワールドチャンピオンは、翌日、猛烈な如き勢いで順位を挽回(ばんかい)していくことになるのだが、週末を通じ好調だっただけに痛手は大きかった。
■ウェバー、4度の再スタートでベッテルをことごとく粉砕
予選の次の大事な局面は、決勝スタート。2番手クビサが強豪レッドブルを倒すには、この瞬間しかない。マシンの鼻っ面を中央に向けてけん制する構えのルノーは、しかしシグナルが消えた瞬間、ホイールスピンが多く予選3位のベッテルに2位の座を奪われてしまった。走行ラインからはずれたグリッドはやはり不利だった。
1コーナーサンデボーテでレッドブルが1-2フォーメーションを早々に完成させたが、1週間前のスペイン同様、以降チームメイト同士の激しいつばぜり合い、とはならなかった。
オープニングラップの名物トンネルで、ニコ・ヒュルケンベルグのウィリアムズがフロントウィングの問題でクラッシュを演じ、セーフティカーが導入。これを皮切りに、レース中盤のルーベンス・バリケロのクラッシュ(やはりウィリアムズのマシントラブル)、コース(=一般道)上のマンホールの確認、そして終盤のカルン・チャンドックとヤルノ・トゥルーリのクラッシュと、実に4度もセーフティカーランが訪れたのだが、順調に築いてきたリードタイムが帳消しとなるたびに、ウェバーはファステストラップを更新しながらベッテルを引き離すという、まさに別格の走りを披露した。
2位ベッテルはチームメイトに歯が立たなかったばかりか、予選に続きレースでも健闘している3位クビサに対して防戦一方。クビサは終始ベッテルを視野にとらえながら、4位のマッサ以降からは見えなくなっていった。
■アロンソ、最後尾から猛追し、最後に抜かれ、繰り上がって結局6位
土曜日の失敗でピットレーンからスタートしたアロンソは、目覚ましいペースで着々とポジションを上げてきた。
まずはオープニングラップでセーフティカーが導入されるや否やピットへ飛び込み、レース中使用が義務付けられている2種類のタイヤのもういっぽう、ライフの長いミディアムコンパウンドに履き替え長期戦に備えた。そしてブルーノ・セナ、カルン・チャンドック、ルーカス・ディ・グラッシ、ヤルノ・トゥルーリ、ティモ・グロックとテールエンダーを次々と駆逐し、78周レース中の22周目にはポイント圏内の10位、29周目に6位まで挽回していた。
だがトップ3の先頭集団の後方、4位マッサ、5位ハミルトンはしぶとい相手だった。結局この2人は攻略できずに、レースは終盤に差しかかっていた。
残り3周、最終コーナー手前のラスカスで事故発生。チャンドックのHRTを抜こうとロータスのトゥルーリが仕掛けるが接触、ロータスがHRTに乗り上げてストップした。これで4度目のセーフティカーが入り、このまま徐行走行でレースが終わるかに思えたが……。
ゴール直前でセーフティカーが戻り、最後の数百メートルは先導車なしの状態でチェッカードフラッグが振られることになった。あとは最終コーナーのアントニー・ノーズを残すのみ。隊列は、2台を除いて徐行状態のままゴールした。その2台とは、シューマッハーのメルセデスと、アロンソのフェラーリ。モナコ5勝のシューマッハーは、この短区間でアロンソをオーバーテイクし、なんと6位でフィニッシュラインを通過してしまった。この不意打ちの追い抜きは、レース終了から3時間あまり経って違反であると断定され、老獪シューマッハーは20秒加算のペナルティで12位にダウンした。
■ポイントリーダー、ウェバーの誕生
ヨーロッパ開幕戦スペインGP前まで、ベッテルは第3戦マレーシアで既に1勝を手にしていたいっぽう、ウェバーは勝利なく、トップから32点離されてのチャンピオンシップ8位にいた。
2009年、バトンとタイトルを最後まで争ったベッテルに対し、ウェバーはランキング4位に終わっていた。流れはいつもベッテル。ウェバーは今年も“ナンバー2”の役回りになるのではないか。シーズン序盤をみて、そういう予感があった。
それがスペイン、モナコの連戦で、25点×2連勝=50点をバッグに詰め込むことに成功。ウェバーはいまやベッテルと同点のポイントリーダなのだから、シーズンは何が起こるかわからない。
ウェバーの目覚めで、レッドブル優勢の度合いはますます強まったが、今後の展開はいかに……。次はチャレンジングなイスタンブール・パークでの一戦、トルコGPを迎える。決勝は5月30日だ。
(文=bg)
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