第2戦オーストラリアGP「波乱含みのメルボルン、悲喜こもごも」【F1 2010 続報】
2010.03.29 自動車ニュース【F1 2010 続報】第2戦オーストラリアGP「波乱含みのメルボルン、悲喜こもごも」
2010年3月28日、メルボルンにあるアルバートパーク・サーキットで行われたF1世界選手権第2戦オーストラリアGP。スタート前の雨によりウェットレースとなった今回は、各所でオーバーテイクやコースアウトがみられ、バーレーンでの開幕戦とは大きく違うドラマティックな展開となった。
早くも2戦目に訪れたジェンソン・バトンのマクラーレン初優勝、レッドブルの信頼性にまたもや足を引っ張られたセバスチャン・ベッテルのリタイア。悲喜こもごものオーストラリアGPを振り返る。
■マクラーレンのライバル対決、ベッテルの傷心
F1はつまらない──2週間前、フェラーリ1-2に終わったバーレーンでのシーズン開幕戦があまりに単調で硬直したレースだったため、2010年の行く末を案ずるさまざまな論議が渦巻いたが、条件次第ではおもしろくもなることがわかった第2戦だった。
すなわち、天候が急変し濡れた路面でスタートが切られ、スピンやクラッシュ続出でセーフティカーが導入され、混乱に巻き込まれフロントランナーが順位を落とし、その後彼らが挽回し、乾きはじめた路面を前にタイヤ交換のタイミングがはかられ、そして終盤遅いマシンの背後で接近戦が繰り広げられ、接近が接触で終わるということだった。
そんな波乱含みのオーストラリアGPで優勝したのは、極力トラブルを避け、スムーズな走りでタイヤをいたわったバトンだった。昨年6月のトルコGP以来長く遠ざかっていたポディウムの頂点に立つディフェンディングチャンプは、マクラーレン移籍という大きな賭けの2戦目で早くも勝利を得、幸先の良いスタートを切った。
いっぽう予選で11位に沈み、“自分のチーム”で新参者に優勝を奪われたルイス・ハミルトンは、レース後、バトンより1回多くピットストップすることを決めたチームを批判。2人の王者の心の底では、いよいよライバル心がメラメラと燃えているはずである。
心の底から悔やんでいるであろうドライバーは、セバスチャン・ベッテルだ。バーレーンではトップを快走し優勝まっしぐらだったが、中盤にエンジントラブルが発生し何とか4位でフィニッシュ。今回も2戦連続となるポールポジションから、58周レースの26周まで首位を守っていたのだが、今度はブレーキに足を引っ張られた。
ウィナーへのポイントが25点となった今年、開幕2戦で50点が稼げるチャンスをみすみす逃したベッテルは、しかし間違いなく2010年最速の男のひとりである。奇才エイドリアン・ニューウェイのマシンは、斬新かつ速いがもろいことでも知られている。2戦を失ったが、信頼性を向上させて逆襲に転じると非常に怖い存在になることも、また間違いない。
■クビサ、劣勢マシンで大健闘
決勝日、秋のメルボルン上空には雲が垂れ込め、スタート直後には一瞬雨がぱらついた。この短いシャワーでウェットレースとなり、マシンはタイヤをドライ用スリックから浅溝のインターミディエイトに履き替え、ダミーグリッドをあとにした。
シグナルが変わると、ポールシッターのベッテルが先頭でターン1へ突入。その背後では、予選3位のフェルナンド・アロンソ、同4位のバトン、遅い出だしの2台が接触し、アロンソはスピンして最後尾に脱落、7番グリッドのミハエル・シューマッハーが割を食いフロントウィングを破損し早々にピットインせざるを得なくなった。
オープニングラップのターン6手前、小林可夢偉のザウバーからフロントウィングが脱落し、ニコ・ヒュルケンベルグのウィリアムズとセバスチャン・ブエミのトロロッソを巻き添えに大きなクラッシュが起こった。これでメルボルンでは恒例ともいえるセーフティカーがコースに入った。
5周目にレースが再開されると、ベッテルが首位をキープ。2位にジャンプアップしていたフェリッペ・マッサは、ほどなくしてウェバーに抜かれ、レッドブル1-2フォーメーションができあがった。
4位には予選9位から大きく順位をあげてきたクビサ、5位ロズベルグを間に挟み、6位ハミルトン、7位バトンとマクラーレンが続いた。バトンは6周目にハミルトンに抜かれていたのだが、7周目、乾きはじめた路面を前に真っ先にタイヤをドライに変更する勝負に出た。
バトンのタイムがいいとわかると、8周目には各車が雪崩を打てピットへ押し掛け、ドライへスイッチ。レッドブルは天候が悪化すると踏んでこの流れから出遅れ、ウェバーは優勝争いから後退。ベッテルは幸運にもバトンの前でコースに復帰し、トップを守ることに成功した。
ここから、ベッテルは最速タイムで逃げ、2位バトン、3位クビサ、4位ロズベルグら後続を引き離しにかかったのだが、26周目、ベッテルはターン13のグラベルにつかまり抜け出せずリタイア。ブレーキトラブルによるコースアウトと報告された。
ベッテルの脱落でトップに立ったのはバトン、2位にはクビサ。マクラーレンとルノーの力量の差は誰もが認めるところで、劣勢のルノーでは優勝争いに食い込むことはおろか、その座を守るのも至難の業であるはずだった。だがクビサは、ハミルトンやマッサといったトップランナーを最後まで抑え切る、見事なドライビングを披露した。
■“つまらないF1”をおもしろくする条件
スタート直前に降って以来、レース中盤になっても雨は落ちてこない。序盤に交換したドライタイヤの摩耗が進み、2回目のタイヤ交換をするかしないか、ドライバーとチームは決断を迫られていた。新しいラバーに望みを託したのが、ハミルトン、ロズベルグ、そしてウェバー。交換後の彼らのペースは1、2秒も速くなり、終盤の接近戦へともつれ込むのである。
残り10周を切ったところで、2位クビサ、3位マッサ、スタートの脱落から挽回してきた4位アロンソ、そしてニュータイヤの5位ハミルトンと6位ウェバーが数珠つなぎ状態に。チェッカードフラッグまであと2周という時点で、ハミルトンがアロンソの5位の座を狙い仕掛けるが抜けずじまい。その行く手を阻まれたハミルトンのリアに、ウェバーが追突してしまい、2台はコースオフした。
コースに復帰したハミルトンはピットに入ることはなかったが、ロズベルグに先を越され6位。ウェバーはピットに入り9位となり、58周のレースはジョン・トラボルタが振るチェッカードフラッグで幕を閉じた。
序盤のタイヤ交換が絶妙のタイミングだったことと、ウルトラスムーズなドライビングがタイヤの寿命を延ばし、終盤まで走り切れたこと──バトンは新天地で早くも、そして久々の勝利をあげた。
シーズン前、マクラーレンという“ハミルトンの船”に便乗してきたバトンがこれだけ早い時期に優勝すると予想していたひとは多くはなかったはず。ベッテルの2戦連続リタイアがもたらしたチャンピオンの幸運が、“つまらないF1”をおもしろくする条件のひとつに成長してくれれば……。
次戦は4月4日、突然のスコールがレースを読めなくするマレーシアGPだ。
(文=bg)
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