No.38 ZENT CERUMO SC430、最後の接戦を制す

2012.10.28 自動車ニュース 小林 祐介

【SUPER GT 2012】No.38 ZENT CERUMO SC430、最後の接戦を制す

2012年10月28日、SUPER GTの2012年シーズン第8戦が栃木県のツインリンクもてぎで開催され、GT500クラスはNo.38 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平組)が、GT300クラスはNo.911 エンドレス TAISAN 911(峰尾恭輔/横溝直輝組)が勝利をおさめた。
シーズンを通じてのタイトルは、 GT500クラスはNo.1 S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ組)が、GT300クラスはNo.911 エンドレス TAISAN 911が手にした。

■タイヤ戦線に変化あり!?

ドライコンディションの予選を制したのはNo.38 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平組)。以下、No.6 ENEOS SUSTINA SC430(伊藤大輔/大嶋和也組)、No.23 MOTUL AUTECH GT-R(本山 哲/ミハエル・クルム組)、No.100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴組)、No.18 ウイダー HSV-010(小暮卓史/カルロ・ヴァン・ダム組)とトップ5をブリヂストンユーザーが占めた。

“非ブリヂストン勢”ではヨコハマタイヤを履く予選6位のNo.19 WedsSport ADVAN SC430(荒 聖治/アンドレ・クート組)が最上位で、前戦でGT500クラス2連覇を決めたミシュランユーザーのNo.1 S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ組)は予選7位という結果。しかも、シリーズ最終戦はハンディウェイトなしの真っ向勝負。これがツインリンクもてぎにおける、GT500クラスの“ありのままの勢力図”と見ていいだろう。

ところが、決勝日は昼前から雨。となれば、第7戦オートポリス大会がそうだったように、非ブリヂストン勢の躍進が期待されるところ。今回もそうなる可能性が高いと思われていたが、意外な番狂わせ(失礼!)が起きた。

ポールシッターのNo.38 ZENT CERUMO SC430が最後まで逃げ切ったのだ。しかも、タイヤ無交換という、思い切った作戦で勝利をおさめたのである。前戦から今回までの間に、何が起きたのか?

レクサスSC430を走らせるトヨタ首脳陣のひとりが語る。
「ハンディウェイトの軽減される最後の2戦がチャンピオンシップを戦う上でとても重要になると以前から考えていました。ところが、現状ではウエットになるとブリヂストンはライバルのタイヤメーカーに歯が立たなくなってしまう。そこで、ブリヂストンに『ウエットタイヤの開発を進めてほしい』とお願いしていたのです」

ブリヂストン自身もそのことに気付いていたのか、それとも前戦オートポリスでの苦い経験が彼らを突き動かしたのかはわからない。いずれにせよ、ブリヂストンはコンパウンドと構造を改良した新しいウエットタイヤをもてぎに持ち込んだ。けれども、予選日はドライ。そこで決勝レース直前に行われた8分間のフリー走行でわずかに感触を確認するや、No.38 ZENT CERUMO SC430はこの“未知なるタイヤ”で決勝に挑んだのである。

■最終戦も熱いバトルを展開

幸いにもこのタイヤが期待どおりの性能を発揮してくれたが、ミシュランを履くNo.1 S Road REITO MOLA GT-Rとて、わずか10周で7番グリッドから2番手まで躍進。しかも、32周目に行ったピットストップではタイヤ無交換作戦に打って出て、トップ浮上をもくろんだ。

これよりも早く、No.38 ZENT CERUMO SC430と同じタイヤを履くNo.6 ENEOS SUSTINA SC430がピットストップを行っていた。彼らは序盤のコースオフなどで遅れていたのだが、レース前半を走りきったタイヤの状態は意外なほどいい。彼らのタイヤを見て「これだったらタイヤ無交換でもいける」との感触をつかんだセルモ陣営は、No.1 S Road REITO MOLA GT-Rがタイヤ交換を行わなかったことを見届けたうえで、自分たちもタイヤ無交換作戦に打って出たのだった。

果たして、No.1 S Road REITO MOLA GT-Rは39周目にNo.38 ZENT CERUMO SC430を0.8秒差まで追い詰めたものの、ベテラン立川の巧妙なディフェンスもあって決定的なチャンスを見いだすことができず、No.38 ZENT CERUMO SC430が53周のレースを逃げ切って開幕戦に続く今季2勝目を挙げた。

2位はNo.1 S Road REITO MOLA GT-R。そして3位には、14番グリッドからスタートしながら、前戦オートポリスと同じように力強い走りを見せた、ダンロップタイヤ装着のNo.32 EPSON HSV-010(道上 龍/中山友貴組)が滑り込んだ。

■GT300クラスはNo.911 エンドレス TAISAN 911が勝利

一方、No.33 HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢組)、No.66 triple a vantage GT3(吉本大樹/星野一樹組)、No.911 エンドレス TAISAN 911(峰尾恭輔/横溝直輝組)の3チームがタイトル獲得を賭けて挑んだGT300クラスでは、雨の中、前日の予選でポールポジションを獲得したNo.33 HANKOOK PORSCHEがずるずるとポジションを落としたのとは対照的に、8周目にはNo.911 エンドレス TAISAN 911がトップに浮上。
さらには、もう1台のタイトルコンテンダーであるNo.66 triple a vantage GT3は、予選でエンジントラブルが発生したために最後尾から決勝に臨んでいたのだが、なんと27周目には3番手まで挽回し、逆転チャンピオンに望みをつないでいた。

ところが、No.66 triple a vantage GT3は29周目に行ったピットストップの際にピットロードでのスピード違反を犯し、ドライブスルーペナルティーを科せられてしまう。それでも最後は5位まで挽回したが、結果的にはNo.911 エンドレス TAISAN 911が逃げ切って優勝。No.33 HANKOOK PORSCHEが7位に終わったため、チャンピオン争いはNo.911 エンドレス TAISAN 911が制することとなり、No.33 HANKOOK PORSCHEがこれに続くシリーズ2位。そしてNo.66 triple a vantage GT3はシリーズ3位に終わった。

(文=小林祐介/写真提供 GTA)

最終戦もてぎのGT500クラスを制した、立川祐路/平手晃平組のNo.38 ZENT CERUMO SC430。
最終戦もてぎのGT500クラスを制した、立川祐路/平手晃平組のNo.38 ZENT CERUMO SC430。 拡大
決勝レース直前。雨の中、各マシンがスタートの時を待つ。
決勝レース直前。雨の中、各マシンがスタートの時を待つ。 拡大
GT500クラスのスタートシーン。
GT500クラスのスタートシーン。 拡大
2012年シーズン最終戦を2位で終えた、No.1 S Road REITO MOLA GT-R。前戦で年間タイトルの獲得を決めたものの、それに華を添えるには至らず。
2012年シーズン最終戦を2位で終えた、No.1 S Road REITO MOLA GT-R。前戦で年間タイトルの獲得を決めたものの、それに華を添えるには至らず。 拡大
勝利を喜ぶ、No.38 ZENT CERUMO SC430の立川祐路(写真左)と平手晃平。
勝利を喜ぶ、No.38 ZENT CERUMO SC430の立川祐路(写真左)と平手晃平。 拡大
こちらはGT300クラス。レースは、影山正美/藤井誠暢組のNo.33 HANKOOK PORSCHEを先頭にスタートした。
こちらはGT300クラス。レースは、影山正美/藤井誠暢組のNo.33 HANKOOK PORSCHEを先頭にスタートした。 拡大
めまぐるしい展開を見せた最終戦のGT300クラスを制したのは、No.911 エンドレス TAISAN 911(峰尾恭輔/横溝直輝組)。同時に、同クラスの年間タイトルも手に入れた。
めまぐるしい展開を見せた最終戦のGT300クラスを制したのは、No.911 エンドレス TAISAN 911(峰尾恭輔/横溝直輝組)。同時に、同クラスの年間タイトルも手に入れた。 拡大
2012年シーズンのチャンピオン。写真左から、GT500クラスのNo.1 S Road REITO MOLA GT-R(ロニー・クインタレッリ/柳田真孝)、GT300クラスのNo.911 エンドレス TAISAN 911(横溝直輝/峰尾恭輔)。
2012年シーズンのチャンピオン。写真左から、GT500クラスのNo.1 S Road REITO MOLA GT-R(ロニー・クインタレッリ/柳田真孝)、GT300クラスのNo.911 エンドレス TAISAN 911(横溝直輝/峰尾恭輔)。 拡大

関連キーワード:
モータースポーツ, SUPER GT 2012, 自動車ニュース