フォルクスワーゲン・パサートV6 4モーション(4WD/2ペダル6MT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・パサートV6 4モーション(4WD/2ペダル6MT) 2006.05.24 試乗記 ……450万6000円 総合評価……★★★ 新型パサートセダンの最上級グレードが、3.2リッターV6を積む「V6 4モーション」。その名の通り駆動方式4WD、トランスミッションにDSGを奢ったトップグレードにも、VWらしさが表れているらしい。
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フォルクスワーゲンの“良心”
新型パサートのプレスリリースを見て、最初に感じたのは安さだ。
セダンを例にとると、ベーシックな「2.0」は319万円、今回試乗した最上級グレード「V6 4モーション」でも439万円である。同等のエンジンを積むライバル、たとえば「プジョー 407」よりリーズナブルだ。プジョー406は旧型パサートより安かったのに。
フォルクスワーゲンはメルセデス・ベンツを、アウディはBMWをめざすと宣言していた時期が、かつてあった。たしかにアウディはBMWのコンペティターになった。しかしフォルクスワーゲンは、すくなくとも日本では無理に背伸びすることをやめ、以前のような、クラスレスな存在に戻ろうとしているのではないか。パサートをはじめ、ゴルフGTIやジェッタなど、最近登場したモデルの戦略的な価格を見ると、そう思う。
パサートに限れば、リーズナブルな価格が実現できたのは、旧型ではアウディと共通だったプラットフォームを、ゴルフのストレッチ版に変えたためもある。でもメカオタクならともかく、一般ユーザーは、乗ってよければメカなんてどうでもいいと思うんじゃないだろうか。実用車とはそういうものだ。
ボディの剛性感はこのクラスでトップレベルだし、加速は高効率のトランスミッションのおかげもあって不満ない。シャシーは愚直なまでに直進し、思いどおりに曲がる。乗り心地はもはや硬すぎず、やさしささえ感じるほど。飛び抜けた個性こそないが、このクラスのセダンではもっともバランスがとれている。なのに価格は安い。フォルクスワーゲンの良心を感じる。
でもその良心にどっぷり浸りたいのなら、今回乗ったV6 4モーションではなく、2.0をおすすめする。このほうがさらにクラスレスな存在だからだ。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
現行パサートは、2006年4月に導入された6代目。新型は「ゴルフ」とコンポーネンツを共用する。先代の「アウディA4」ベースから、「VWゴルフ」をもとにつくられた新型では、エンジンが縦置きから横置きとなったのもトピック。ゆえにサスペンションも、前マクファーソンストラット式、後4リンク式とゴルフと同じ形式となる。新型から、ワゴンモデルに欧州で使われる「ヴァリアント」(英語でいうヴァリエーション)という名前が与えられたことも新しい。
セダン、ヴァリアント両方に、2リッター直4(150ps、20.4kgm)搭載「2.0」、2リッターターボ(200ps、28.6kgm)「2.0T」のFFモデルと、3.2リッターV6(250ps、33.1kgm)+4モーション(4WD)を設定。FFは6段AT「ティプトロニック」仕様で、 4WDは2ペダル6MT「DSG」が組み合わされる。
機能、装備面では、電動パーキングブレーキを採用。ボタンにタッチすることで最大傾斜度30%までの坂道でも車両を停止させるブレーキがきく。また通常のフットブレーキは「オートホールド機能」を備える。これはブレーキ操作で停止したあともブレーキ圧を保持する仕組みだ。
装備面では、左右で温度設定が可能な2ゾーン式フルオートエアコン、クルーズコントロールなどを備えるほか、安全装備では、リアサイドエアバッグ、衝突時の衝撃の大きさに応じて2段階で作動する2ステージフロントエアバッグなど8つのエアバッグを装着。前席にはアクティブヘッドレストも装着する。
(グレード概要)
パサートシリーズの最上級グレードが「V6 4モーション」。3.2リッターV6エンジンと「4モーション」こと4WDの駆動方式を組み合わせ、トランスミッションが「DSG」であることに加え、トップグレードらしく、外観にクロームパーツを数多く採用。インテリアにはウッドパネルとスポーツシート(前席メモリー、電動調節機構付き)が標準で装着される。快適装備として、パークディスタンスコントロールやイモビライザー、足下を照らすフットウェルライトなど、充実した内容だ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
ガチッと閉まるドアからも、ボディの剛性の高さがうかがえる。ゴルフやジェッタと比べると、ウインドスクリーンは寝ていて、遠くにあり、寸法の余裕を感じる。デザインも、インパネからドアトリムにかけて曲線を走らせたりして、上級車であることを実感できる。ただ、仕上げはいいが、ウッドパネルは使いすぎ。ハザードスイッチ周辺は継ぎ目が目立って、クオリティを落としている感じさえする。メーターパネルに「PASSAT」、シフトレバーに「DSG」や「4モーション」といった文字を並べ、持つ性能(プレミアムともいうのかな?)を誇示するあたりはかつての日本車みたいで、センスがいいとはいえない。ベーシックな2.0にはこうした文字はなく、パネルはシルバーやカーボン調のモノトーンとなるので、むしろ上質な感じがする。
(前席)……★★★
V6 4モーションはレザースポーツシートが標準。クッションの厚みはないが、座り心地はそんなに硬くはない。形状も自分の体格には合っていて、とくにドイツ車としては上体のサポートがタイトなのが、好感が持てる。ただ、ゴワゴワした革の質感やおおらかなステッチは良くも悪くもドイツ的で、上質な感じは受けなかった。自分だったら2.0のクロスシートを選ぶ。収納スペースが充実しているのはうれしいところで、ドアポケットは1.5リッターのペットボトルが入るほど幅広く、センターコンソールボックスはパーキングブレーキを電気式にしてインパネに移したことで、かなり広くなった。そのフタのガチッとした閉まり感がまたドイツ的だ。
(後席)……★★★
ゴルフやジェッタと同じように、着座位置はやや低め。頭上空間には余裕があるので、もうすこし高くして、足を下におろすような姿勢になると望ましい。前後方向の空間はじゅうぶんで、身長170センチの自分が前後に座ると、ひざの前には20センチほどのスペースが残る。V6 4モーションは後席もスポーツレザーシートが奢られる。腰を下ろす部分が掘り込まれているので、ホールド感はあるが、レザーやステッチの質感は前席同様だ。サイドの窓には手動、リアには電動のブラインドが備わる。ドアトリムはフロント同様、ゆるやかな弧が描かれているが、インパネに比べると質感はイマイチ。
(荷室)……★★★★★
トランク容量は565リッターで、広いといわれるジェッタの527リッターを上まわる。たしかに奥行きはかなりのもので、ボディ全幅を生かして横方向の余裕もあるが、ジェッタほどハイデッキスタイルではないので、天地の寸法は平均レベルにとどまる。リッドのヒンジは流行のダブルリンク式ではなく、メルセデス・ベンツと同じように太いパイプを用いた方式で、荷室容積をいくばくか侵食するものの、スムーズなリッドの動きが心地よい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
キーを差し込んだあと、そのまま押し込むとセルモーターが回るというのは、昔のフェラーリみたいで、そそられる演出だ。スターターボタンを独立させて用意するより操作しやすい。3.2リッターV6FSIエンジンのアイドリングは、外で聞いているとガラガラいっているが、室内では静か。しかも走り始めると、アルファやフェラーリを思わせる、吠えるようなサウンドでドライバーを魅了する。4WDということで車重は1660kgに達するが、加速はあらゆる場面で不満ない。雨の日でもそのパワーを使いきれるのは、4WDならではのメリット。6段DSGは他車と同じく、Dレンジのままでは発進や追い越し加速でギクシャクすることがあるが、マニュアルシフトすればシームレスな加速が楽しめる。ただ、ここまで官能的なエンジンを積んでいるのだから、パドルシフトが欲しいところだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
乗り心地は「フォルクスワーゲンとは思えないほどに……」と表現したくなるほど、なめらかでまろやか。短い試乗時間内では、不満はまったくなかった。剛性感あふれるボディに支えられたサスペンションがしっとり動くところは、メルセデス・ベンツを思わせる。ステアリングは低速では軽く手ごたえがないが、50〜60km/hぐらいになると急にねっとりした重みが加わる。ただし、自然なフィールとはいいがたい。
コーナーではノーズの重さは感じるものの、その後はストロークの深い足が4つのタイヤをきっちり接地させ、グリップやトラクションといった仕事を前後に絶妙に分配させ、曲がっていく。同じ日に乗ったアルファ・ロメオ「アルファ159」が、クルマと対話しながら速さを引き出していくのに対して、こちらはクルマのポテンシャルに身をまかせて速さを手に入れる感じだ。ただしボディはこの国の道には大きすぎる。その点ではジェッタのほうが日本向きだ。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2006年4月13日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:6420km
タイヤ:(前)235/45R17 97W(後)同じ(いずれも、ブリヂストン POTENZA RE050A)
オプション装備:チルト機構付き電動ガラススライディングルーフ(12万6000円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(6):山岳路(3)
テスト距離:260.5km
使用燃料:33.9リッター
参考燃費:7.7km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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