フォルクスワーゲン・パサートeTSIエレガンス(FF/7AT)
メジャーに挑戦 2025.02.11 試乗記 ステーションワゴン専用モデルとして再スタートを切った新型「パサート」。フォルクスワーゲンがセリングポイントに掲げる内外装の質感アップやキャビンの快適性、そしてマイルドハイブリッド化によるドライバビリティーと燃費の両立を、ロングドライブで確かめた。消えゆく「ヴァリアント」
フォルクスワーゲンのロングセラーモデルであるパサートが、フルモデルチェンジにより9代目に生まれ変わった。話題のひとつが、ボディータイプがステーションワゴン一本になったこと。主力マーケットのヨーロッパでセダンの需要が減少し、実は先代の途中でセダンの生産が終了。9代目で復活することはなく、販売の大半を占めるステーションワゴンの「ヴァリアント」のみのラインナップになったのだ。
これにともない、新しいパサートはモデル名からヴァリアントが消え、単にパサートと呼ばれることになった。日本でも1990年代のはじめからステーションワゴンはヴァリアントの名で親しまれてきただけに、この呼び名が消えるのは実にさびしい。
フォルクスワーゲンのアッパーミディアムクラスのBEV「ID.7」では、ステーションワゴンが「ツアラー」を名乗り、ヴァリアントの名称が残るのはもはや「ゴルフ」だけ。ヴァリアントという響きに思い入れがある者としては、なんとかゴルフだけでもその呼び方を残してほしいと願うばかりだ。
それはさておき、新型パサートの特徴として真っ先に挙げておきたいのが、「MQB evo」と呼ばれる最新のプラットフォームを採用することだ。これは従来の横置きエンジン用プラットフォームの「MQB」に改良を加えたもので、新型「ティグアン」とともに、フォルクスワーゲンのエンジン車が新しい世代に移行することを意味している。それだけに、この新型パサートは、デザインも中身も大きく変貌し、見どころ満載のニューモデルとなっている。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
洗練された内外装デザイン
新型パサートのボディーサイズは、全長×全幅×全高=4915×1850×1500mmで、旧型に比べて全長が130mm延びている。いわゆるDセグメントに属するパサートだが、格上のEセグメントに迫る勢いだ。それでいて威圧感がないのがフォルクスワーゲンらしいところで、細いラジエーターグリルやシャープなヘッドランプ、それらを結ぶLEDライトストリップを採用するフロントマスクからは、弟分のゴルフとのつながりを強く感じ取ることができる。
一方、スリムなLEDテールランプとそれを結ぶLEDストリップが特徴のリアビューも実にスタイリッシュで、ボディーサイズだけでなく、その佇(たたず)まいもひとクラス上の印象である。
新型パサートのコックピットも、エクステリアに負けないくらいに新鮮だ。ソフトな素材で覆われたダッシュボードにはシルバーのステッチがあしらわれ、これまでに比べて高級感を増した印象。それ以上に目を奪われるのが15インチの大画面がそびえるダッシュボードである。さらにセンターコンソールからシフトレバーが消え、かわりにステアリングコラムの右側にシフトセレクタースイッチが設けられたおかげで、コックピット全体がすっきりした。
ほとんどの操作はタッチパネルで行うが、ゴルフで不評を買った部分は、当然のことながら改良の手が加えられている。たとえば、画面下にあるタッチスイッチに照明がなく、夜間は操作しにくかったのが、このパサートでは解消された。大画面ゆえに画面の上下に必要な操作メニューが常に表示され、またアイコンも小さすぎないため、操作に困らないのもうれしいところだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
期待を超える低燃費
今回試乗したのは、150PSの1.5リッター直4ガソリンターボに、48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたパワートレインの「パサートeTSIエレガンス」。デュアルクラッチギアボックスの7段DSGにより、前輪を駆動する。
ステアリングコラム右に移されたシフトセレクターをひねってDレンジを選び、まずは一般道を走りだすと、その動きだしの軽さと、低回転からの活発な走りに感心する。もともとこの1.5リッター直4エンジンはアイドリングを少し超えるぐらいから十分なトルクを発生するが、マイルドハイブリッドシステムが組み合わされたことで、加速時にはそのモーターがエンジンをアシスト。アクセルペダルの動きに間髪入れずに反応する素早さと、さらなる力強さを手に入れているのだ。
一方、高速道路の進入や追い越しといった場面でアクセルペダルを深く踏み込めば、3000rpmあたりから5000rpmを超えるくらいまで勢いよくスピードを上げてくれるのが心強い。
燃費の良さも、このパワートレインの大きな魅力だ。マイルドハイブリッドシステムに加えて、1.5リッターには気筒休止機能のアクティブシリンダーマネジメント(ACT)が備わり、アクセルペダルを軽く踏むような場面では4気筒のうち2気筒を休止して燃費を稼いでいる。
実際に燃費をチェックしてみると、比較的平たんな高速道をACCで100km/h巡航したときには23.4km/リッター、交通量の少ない一般道を走行したときには21.3km/リッターをマーク。今回の試乗における総平均燃費も18.8km/リッターと、いずれもWLTCモードのカタログ値である17.4km/リッターを大きく上回った。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
室内の広さでは敵なし
MQB evoを採用するパサートでは、可変ダンパーのアダプティブシャシープログラムが、従来の「DCC」から「DCC Pro」に進化したのも、見逃せないポイントだ。伸び側と縮み側の減衰力をそれぞれ別のバルブでコントロールすることにより、よりきめ細かい制御を実現するという。実際に走らせると、ダンパーの動きにしなやかさがあり、落ち着いた挙動と快適な乗り心地をうまく両立している。目地段差を越えたときなどには軽いショックを伝えてくるものの、このクラスにふさわしい上質な乗り味を手に入れている。
ドイツのブランドではいまだにステーションワゴンが数多くラインナップされているが、定評ある室内の広さについては、やはり最新モデルでもライバル車の上をいく。「メルセデス・ベンツCクラス」や「BMW 3シリーズ」がFRベース、アウディはFFベースながらエンジンを縦置きするのに対して、このパサートは横置きのFFを採用するためエンジンルームがコンパクトにでき、そのぶんキャビンやラゲッジルームを広く確保できるのだ。
実際、新型パサートの後席は大人が乗っても余裕で足が組めるほど広く、ラゲッジルームも後席がそのままの状態で奥行きが110cm強、後席を収納すれば約180cmのほぼフラットなフロアが出現する。これは、DセグメントばかりかEセグメントのステーションワゴンをも凌(しの)ぎ、広さで選べば向かうところ敵なしと言っても過言ではない。
これまで日本では、どちらかといえばゴルフの陰に隠れた、通(つう)好みの名車だったが、この9代目パサートは、従来モデル以上に注目を集める可能性を秘めていると思う。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=フォルクスワーゲン ジャパン)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・パサートeTSIエレガンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4915×1850×1500mm
ホイールベース:2840mm
車重:1580kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:ベルト駆動式スタータージェネレーター
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:150PS(110kW)/5000-6000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1500-3500rpm
モーター最高出力:17PS(13.0kW)/4000rpm
モーター最大トルク:56N・m(5.7kgf・m)/200rpm
タイヤ:(前)235/45R18 94W/(後)235/45R18 94W(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:17.4km/リッター(WLTCモード)
価格:553万円/テスト車=592万3800円
オプション装備:レザーシートパッケージ(17万6000円)/DCC Proパッケージ(17万6000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(4万1800円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:3684km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:369.0km
使用燃料:19.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:18.8km/リッター(満タン法)/18.8km/リッター(車載燃費計計測値)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
インディアン・チーフ ヴィンテージ(6MT)【海外試乗記】 2026.2.6 アメリカの老舗、インディアンの基幹モデル「チーフ」シリーズに、新機種「チーフ ヴィンテージ」が登場。このマシンが、同社のラインナップのなかでも特別な存在とされている理由とは? ミッドセンチュリーの空気を全身で体現した一台に、米ロサンゼルスで触れた。
-
スズキeビターラZ(4WD)/eビターラZ(FWD)【試乗記】 2026.2.5 スズキから初の量販電気自動車(BEV)「eビターラ」がいよいよ登場! 全長4.3mで、航続距離433~520km(WLTCモード)、そして何よりこのお値段! 「By Your Side」を標榜(ひょうぼう)するスズキ入魂のBEVは、日本のユーザーにも喜ばれそうな一台に仕上がっていた。
-
日産エクストレイル ロッククリークe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.2.4 「日産エクストレイル」に新たなカスタマイズモデル「ロッククリーク」が登場。専用のボディーカラーや外装パーツが与えられ、いかにもタフに使い倒せそうな雰囲気をまとっているのが特徴だ。高速道路とワインディングロードを中心に400km余りをドライブした。
-
フェラーリ849テスタロッサ(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.2.3 フェラーリの新型スーパースポーツ「849テスタロッサ」は、スペシャルモデル「F80」に通じるデザインをまとい、歴史的な車名が与えられている。期待高まる、その走りは? スペインで試乗した西川 淳の第一報。
-
レクサスRZ550e“Fスポーツ”(4WD)【試乗記】 2026.1.31 レクサスの電気自動車「RZ」が大型アップデートを敢行。特に今回連れ出した「RZ550e“Fスポーツ”」は「ステアバイワイヤ」と「インタラクティブマニュアルドライブ」の2大新機軸を採用し、性能とともに個性も強化している。ワインディングロードでの印象を報告する。
-
NEW
無限N-ONE e:/シビック タイプR Gr.B/シビック タイプR Gr.A/プレリュード【試乗記】
2026.2.7試乗記モータースポーツのフィールドで培った技術やノウハウを、カスタマイズパーツに注ぎ込むM-TEC。無限ブランドで知られる同社が手がけた最新のコンプリートカーやカスタマイズカーのステアリングを握り、磨き込まれた刺激的でスポーティーな走りを味わった。 -
インディアン・チーフ ヴィンテージ(6MT)【海外試乗記】
2026.2.6試乗記アメリカの老舗、インディアンの基幹モデル「チーフ」シリーズに、新機種「チーフ ヴィンテージ」が登場。このマシンが、同社のラインナップのなかでも特別な存在とされている理由とは? ミッドセンチュリーの空気を全身で体現した一台に、米ロサンゼルスで触れた。 -
ホンダの「Hマーク」がいよいよ刷新! ブランドロゴ刷新の経緯とホンダのねらい
2026.2.6デイリーコラム長く親しまれたホンダ四輪車のロゴ、通称「Hマーク」がついに刷新!? 当初は「新しい電気自動車用」とされていた新Hマークは、どのようにして“四輪事業全体の象徴”となるに至ったのか? 新ロゴの適用拡大に至る経緯と、そこに宿るホンダの覚悟を解説する。 -
ライバルはGR? ホンダが発表したHRCのモデルラインナップとその狙いに迫る
2026.2.5デイリーコラムホンダが東京オートサロン2026で、HRC(ホンダ・レーシング)の名を冠したコンセプトモデルを6台同時に発表した。ホンダのカスタマイズカーとして知られるモデューロや無限との違い、そしてHRCをメジャーシーンに押し上げる真の狙いを解説する。 -
スズキeビターラZ(4WD)/eビターラZ(FWD)【試乗記】
2026.2.5試乗記スズキから初の量販電気自動車(BEV)「eビターラ」がいよいよ登場! 全長4.3mで、航続距離433~520km(WLTCモード)、そして何よりこのお値段! 「By Your Side」を標榜(ひょうぼう)するスズキ入魂のBEVは、日本のユーザーにも喜ばれそうな一台に仕上がっていた。 -
第947回:秒殺で当確? 新型「ルノー・クリオ」が販売店にやってきた!
2026.2.5マッキナ あらモーダ!欧州で圧巻の人気を誇る「ルノー・クリオ(日本名:ルーテシア)」がついにフルモデルチェンジ! 待望の新型は市場でどう受け止められているのか? イタリア在住の大矢アキオが、地元のディーラーにやってきた一台をつぶさにチェック。その印象を語った。
















































