フォルクスワーゲン・ゴルフR32(2ペダル6MT)【海外試乗記】
ゴルフを超越したゴルフ 2005.11.02 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフR32(2ペダル6MT) 3.2リッターV6を搭載するゴルフのスペシャルモデル「R32」が、現行ゴルフVに登場。「GTI」の性能を凌駕する“スーパーゴルフ”は、もはやゴルフというクルマの枠にとどまらないポテンシャルを持つという。ゴルフの“内ゲバ”!?
今、このタイミングでゴルフのホッテスト・バージョンは何か? と問うたとしたら……十中八九の人が「もちろんそれはGTI!」と答えることだろう。なにしろ今度のゴルフGTIは、VWが“GTI is back!”と大手を振って(?)自らアピールをする自信の一台。最高出力200psのターボ付きエンジンは、自慢のDSGと組み合わせた場合、車重1.4トンプラスのボディを6.9秒で100km/hまで加速させ、最高速は230km/h以上をマークという実力を示す。当然ながら「歴代GTI史上の中で最強・最速」タイトルを保持するのがこの一台だ。
ところが同じゴルフシリーズに、やはり“DSG”仕様車で0−100km/h加速タイムをさらに0.7秒短縮。最高速はほとんど250km/hに達する、身内のライバルが現れてしまったからハナシはちょっとヤヤこしい。先日開催のフランクフルト・モーターショーでヴェールを脱いだ「ゴルフR32」がそれだ。その絶対的な速さは前述の通りGTIを凌ぎ、こちらが真の「ゴルフ史上最強・最速」というタイトルに輝いた。こうして、ともすれば“内ゲバ対決”になりかねない2台ではあるが、VWでは「『GTI』はピュア・スポーツで、『R32』はプレミアムなハイパフォーマンス・モデルである」と、そのように区別して位置づけたいようだ。
3.2リッターV6と4WD
なるほど、GTIを上回るプレミアム感を演じようとするためか、例の“ワッペングリル”をメタル調に加飾した顔つきを持つR32。華やかさを増したそんなマスクとバランスを取るべく、このモデルではその後ろ姿にも視覚上のアクセントが与えられている。フロント同様に専用のデザインを備えるバンパーの、センター部分からいわゆる“2本出し”されるテールパイプがその主たるアイテム。20本のスポークを備えた18インチのホイールも、やはりR32を外観から見分ける大きなポイントになる。
そんなR32に積まれた心臓は、ネーミングの由来にもなった3.2リッターの排気量を持つV型6気筒。わずかに15度という極端に狭いバンク角を備えるこのユニットは自然吸気方式だ。GTI用のターボ付きユニットを最高出力で50ps、最大トルクで4.1kgm上まわるこの心臓が生み出した回転力は、前出の“6段DSG”もしくは通常の6段MTを経由した後、電子制御式の湿式クラッチ“ハルデックス・カップリング”を用いた4WDシステムを介して四輪へと分散される。
「ポルシェもかくや」の安定性
4WD方式が大きく効いているのか否か、このクルマの走りでまず感心をさせられたのはその直進性の素晴らしさだった。テスト車両が“DSG”仕様という事もあり、魅惑的なサウンドと共に継ぎ目無く連続する強力な加速ももちろん感動モノのひとつではあった。さすがに50〜60km/h程度までの低速域では路面凹凸を拾って上下動きがキツめだが、それ以上のスピードになれば18インチの薄いタイヤを履いている事実を忘れさせてくれる、ボディ・コントロールのしっかり効いたいかにもVW車らしいフラットな乗り味もなかなかの高得点だ。
しかし、オーバー200km/hの領域に入ってもまだまだ“鼻歌まじり片手でOK!”とい直進性の高さにぼくは驚かされた。それより何より「911だってボクスターだってこうはいかない!」と思わされる。GTIを含むFWD仕様のゴルフもこの高速直進の項目は得意科目であろうが、それでもこのR32のポテンシャルはさらに一歩上を行っているように感じられた。
そんなハイスピードから確実に一気に速度を落としてくれる、ブレーキのフィーリングも素晴らしかった。今回のテストドライブはその大半がアウトバーン上となったため、さほどハードな連続使用にはトライできなかったが、それでも剛性感に富んだペダルタッチにはいかにも“高性能ブレーキ”らしい信頼感が感じられるものだ。
四輪の接地感の高さも走りのシーンを問わずに常に濃厚。テスト中に出会ったわずかなワインディングロードでは、その“オン・ザ・レール”感覚の高さに秘めたフットワーク・ポテンシャルの高さを垣間見た思いがする。
かくして、そんな高品位で素晴らしい走りを味わわせてくれたのがR32というモデル。そこにひとつだけ疑問が残るとすれば、それはこのクルマの走りのテイスト、スピード性能といったものが、もはやぼくがイメージをする「ゴルフ」というモデルの基準値を大きく超越してしまったことだろうか……。
(文=河村康彦/写真=フォルクスワーゲン グループ ジャパン/2005年11月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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