MG ZT(5AT)【ブリーフテスト】
MG ZT(5AT) 2003.12.03 試乗記 ……425.0万円 総合評価……★★★★ 再び日本市場にやってきた、純英国自動車メーカーのローバー&MG。ローバー「75」と基本は同じながら、スポーティな味付けが施されたMGのサルーン「ZT」に、自動車ジャーナリストの笹目二朗が乗った。
![]() |
正当派“英国スポーツセダン”
MG/ローバーは経営難などから紆余曲折があった後、現在は、英国フェニックス投資の傘下にある。数すくない純英国メーカーのプライドを保ち、英国車らしいクルマづくりを続けている。
「MG-ZT」は、1998年に発表されたローバー「75」と、基幹部分を共用する。つまり、メカ的には新しくない。だからこのクルマには、ビジュアルから入るのが正統だろう。
ベースは75ながら、独自のフェイスが与えられた。遠く離れたところから「MG-ZT」であることを主張するのに、このくらいの迫力は必然だ。近寄って見るとフードの隙間が気になるが、離れて見た時には黒い縁取りとなり、MGのグリル枠を引き立たせる。225/45ZR18インチのミシュラン「Pilot Sport」は、低められた車体を強調して見せる。独立したランプの目元など、ワルそうでなくコワそうに見せるのがこの手の紳士的(?)スポーツセダン流だ。
内装はややゴテゴテした印象もあるが、木目パネルを排除した革装には立体的な造形が似合う。すくなくとも、平均的な日本車では絶対得られない種類だろう。いうなれば、一目でガイシャ、知る人には英国車とわかる、ユニークな造形である。
乗り心地などに関して、多少のヤセ我慢は必要とはいえ、涼しい顔で転がすのが、英車乗りの矜持だろう。シートそのもののホールド性は悪くないし、エンジンの咆哮やキビキビしたハンドリングを好む人ならば、このクルマのよさを理解できるハズだ。
![]() |
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年にデビューした「MG ZT」は、ローバー「75」にスポーティな味付けを施した4ドアサルーン。クルマの基幹はローバー「75」と共用する。日本に輸入されるのは、180ps版(カタログ数値は177ps)2.5リッターV6モデルとなる。ワゴン版「MT ZT-T」も、同時に導入された。
(グレード概要)
日本に入るMG ZTは、「2.5リッターV6+5段AT」の組み合わせのみ。ステアリングホイールの位置は右。インテリアは、標準がアルカンタラとレザーのコンビネーションシート。オプションで、カラーバリエーションが豊富なファブリック&レザーのコンビシートが選べる。スポーティサルーンらしく、「225/45ZR18」とスポーティなサイズのタイヤ。ミシュラン「Pilot Sport」を履く。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
凸凹した立体的な造形が独特の雰囲気を醸し、ありふれたクルマたちとは違う。いわゆるデザイン学校的な発想ではなく、職人仕事の個性が感じられる。速度計や回転計は楕円形ゆえ、目盛りの間隔を変えてある。しかし盤面を駆ける針の角度的な動きは普通だ。筆者は一瞬戸惑ったものの、それもまた話題を提供する一因となろう。木目パネルを排除した英国車というのもなかなか味があり、スポーツムードを盛り上げる。
(前席)……★★★★
表皮中央部のスウェード調処理は、滑りにくく肌触り良好。左右端の盛り上がりは横方向の支えに効果的だ。すっぽりと着込む感覚のシートながら、ドアやピラー辺りの空間は余裕があり、腕や肩の動きをスポイルする様子はない。イギリス人もイタリア人に負けず、ストレートアームを好む人が多いせいかもしれない。低めにセットされたポジションも、スポーツセダンらしくヤル気を起こさせる。
(後席)……★★★★
デザイン的には4座のスポーツセダンであり、後席中央はやや冷遇される。そのぶん、左右席は独立した窪みがあってたっぷりと座れるし、横方向のホールドもなかなかいい。座面は比較的高く座る設定で、膝は浮かせずに足先をフロントシート下に入れれば、自然な座り方ができる。見た目より快適なのは、背面の角度が寝過ぎていないから。ヘッドレストに頭をあずけてもクリアランスは不足しない。
(荷室)……★★★
後端を絞り込み、空力改善を感じさせる風雅な処理は、英国車の伝統でもある。そのため、トランクの絶対的な寸法は制限されるが、浅いわりには奥行きはあるし、リアシートバック中央が倒れるのでイザとなれば長いものも積める。バンパー高から開き、荷室床面が低いことも使いやすい。左右にガスストラットダンパーが備わり、開閉時の操作力が軽いこと、ヒンジが外にあるので荷物と干渉しないのは美点だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
メカは同じだが、ラクシャリーに振ったローバー「75」より、やや野太い排気音がする。メカニカルな音は少々猥雑な感じだが、高回転へまわすに従いバラつきが揃ってくるあたり、スポーティだ。静粛でおとなしいだけの高級セダンと違い、はっきりスポーツセダンとわかる意思表示がなされているユニットだといえる。本音をいうと、MTで乗りたいところではある。ジャトコ製5段ATは、一直線タイプのシフトパターン。ティプトロを代表とするシーケンシャルとは、また違ったマニュアル感覚がある。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
一般的な基準でいえば、乗り心地は★2つというところだ。端的にいって、硬いのである。せめて、もうすこしダンピングを強化し、広い速度域でフラットライドを確保して欲しいところだ。
しかし、スポーツセダンに特化したモデルゆえ、かえってこの方が「らしくてイイ」という評価もあるだろう。ハンドリングもスポーティな演出が施される。サスペンションを硬めれば、タイヤのグリップに頼ることになり、滑り出しは早くなるのが道理。結果的に限界値を低めてはいるが、キビキビした動きを求める人には好まれる設定だ。その見地に立てば、4つ★を付けてもいい。
(写真=峰昌宏)
![]() |
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2003年10月7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:4375km
タイヤ:(前)225/45ZR18/(後)同じ(いずれもミシュラン Pilot Sport)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5):高速道路(1):山岳路(4)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

笹目 二朗
-
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】 2025.9.4 24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。