マツダ・ロードスター(6MT)(北米仕様車)【海外試乗記】
“黄金律”のクルマ 2005.06.21 試乗記 マツダ・ロードスター(6MT)(北米仕様車) 1989年のデビューから16年の時を経て、マツダのオープン2シーター「ロードスター」が3代目に生まれ変わった。自動車ジャーナリストの小沢コージがハワイで世界初試乗!新型モデルはどう変わったのか。
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嫌いになれる人なんていないんじゃない?
つ、ついに乗ってきました。新型の3代目「マツダ・ロードスター」! それもハワイのコナで!! 2代目のデビューからはや7年以上、というか2代目は初代と中身がそんなに変わってなかったら、実質的には約16年ぶりのフルモデルチェンジということになる。あー、長かった〜。たしか俺がこの業界に入った時ぐらいに初代が出たから、俺もずいぶん歳とったもんだ。あ、ちなみに、試乗車は北米仕様の「MazdaMX-5」ですけど、文中ではロードスターで通すのでよろしく!
率直に言いましょう。最初に乗ったとき、実は我が「MINIクーパー・コンバーチブル」を思い出しちゃいましたね。「コレを嫌いになれる人なんていない!」。すくなくとも多少クルマが好きな人はね。
細かくいちゃもん付けられる部分はあるんだろうけど、可愛らしいスタイリングといい、ブランドイメージといい、飽きのこない走り味といい、イヤミな要素がまったくない。万人に愛されるブランドという点では、MINIに似ています。やはり日本を代表する“世界的ないいクルマ”だと思いました。
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破格の軽量車
さっそくインプレッションに入りましょう。まず、肝心の乗った瞬間のあの軽さ! 俺はよく「フルチンでプールに入った時の感動」とか「長髪から丸坊主にした時の爽快感」って言うんだけど、ソイツは若干落ちてます。厳密に言うとね。
シートがよりしっかりし、ステアリング剛性もアップ。車重は2代目の最終モデルより約10kg増えている。といってもわずか10kgだよ。時代に合わせてボディが若干大きくなり、衝突安全的にも剛性がアップし、装備が増えたわりには破格の軽量車両だ。
だからしばらく乗っていると、「やっぱりロードスターだ!」ってなってくる。それはハンドリングでありステアリングフィールにである。おそらく前後重量配分とか、ステアリングまわりやサスペンションの構造とか、そういう所に秘密があると思うんだけど、歴代ロードスターの構造にはある種の“黄金律”が守られているような気がする。
だって、思うがままにノーズを向けられる感じとか、ボディを伝わってくる振動の質が初代と変わってないんだもん。それはポルシェとかBMWにも感じる、いわば“走りの個性”。まさにマツダのDNA“Zoom-Zoom”だ。なんか宣伝文句みたいでイヤだけどさ……。
ただ、初代がハンドルを切り始めたら、バイクのようにグラッと横Gが発生し、「もっともっと!」とステアリングを切り込みたくなったのに対し、3代目はより落ち着いてゆっくりステアリングを切り込める。その“間”を楽しめるようになった、って感じかな。簡単に言えば“大人の味付け”になったのよ。
スムーズ&FUN
それから驚いたのがドライブトレインのしっかり感だ。初代にせよ、2代目にせよ、アクセルペダルのオンオフやクラッチ断続時に時折ギクシャクしていた。それなりにエンジン回転数に気を使ったり、クラッチをつないだ直後にアクセルオフしないようにする必要があったけど、新型はほぼナシ! どんなエンジン回転でも、多少ラフなアクセルワークでもスムーズに動く。
それは他の操作も同じで、ステアリングの重さとペダル踏力のバランス、さらにマニュアルシフトのストロークや重さのバランスなどすべてが良好で、マニュアル車でも運転にほとんどストレスを感じないのだ。“乗るのがイヤじゃないマニュアル車”っていうかな。そういう感じよ。
で、ギアボックスが6段になって、エンジンも2リッターに拡大されてトルクが上がっただけでなく、それなりに回るようになってるでしょ。久々にムダなシフトを楽しんじゃいました。
特にこの点では、「ロータス・エリーゼ」やポルシェなんかより確実に楽しい。エリーゼは結構アクセルのオンオフでギクシャクするし、シフトもゴリっとしたフィーリングで気を使う。ポルシェはポルシェでパワーがありすぎるうえ、操作系がしっかりしすぎてて頻繁にギアチェンジする気がしないもんね。ハッキリと初代&2代目より進化してるでしょう。
そのほか、相変わらずマニュアル操作の幌は、重量が軽いだけでなく、ご存知の方はご存知だが“Z字”に開閉するようになり、操作がよりイージーかつトノカバーが必要じゃなくなった。
ガキっぽくない
また運転席と助手席の間の空力ボード(別の名前があるかも?)のおかげもあってか、オープン時の風の巻き込みが意外と少ない。実際、冷房の効きがよくて、気温30度近いハワイでも、屋根を開けて走るのにあまり不都合感じませんでした。街なかの渋滞時はさすがに暑かったけどね。それから(たぶん)オプションで付くBOSEのオーディオシステムも、風切り音が少ないから具合がよくて、「ロードスターでこんなにいい音聞けるとは」と隔世の感がありました。
スタイリングだけど、最初に写真で見た時は、強調されたヘッドライトやワイドフェンダーもあって「アメリカンになったなぁ〜」と思ったけど、現地でみると、2代目を飛び越えて、より初代のイメージに近づいた感じ。一流ドイツ車のように、しっかりブランドイメージを守ってるのがわかります。
唯一、不満を感じたのはインテリアかな。全体の造形といい、質感といい、2代目より遥かに上がっていいことはいいんだけど、もうちょっと斬新なのが欲しかったなぁ……と。ちょっと刺激が足りないような気がします。
ただね。これでお値段220万円からでしょう。おそらく初代に感動して持ってたユーザーや、ロードスターに乗りたいけど、「もうちょっとガキっぽくないのが欲しい」って人にはピッタリなんじゃないかしら。
凝縮された楽しさ
なんつーかさ。冒頭の話の続きだけど、ロードスターにはある種の本物感、クルマとしての“黄金率”を感じるのよね。つまり「理想的にはいつでも手元に置いておきたい」「今は事情が許さないけどいつかは欲しい」と思わせる“本物の味”がある。この点では「トヨタMR-S」や「ダイハツ・コペン」は物足りないかな。少々、オモチャっぽい。
つまりさ。走りの絶対的面白さに加え、スタイル、サイズなども含めて、時代のなかで磨かれた飽きのこないクルマの楽しさが凝縮されてる気がするんだよね。
たしかに「初代に比べて感動がない!」とか「エンジンがもっと回ればいいのに」という人もいるでしょう。でもね。誰だって最初のセックスがよかったのは当たり前の話で、2度目、3度目となるにつれて、人は慣れてくる。この3代目も爆発的な人気を博すかどうかはわからないけど、しっかりと長く、人々に愛されるクルマになっていると思う。
おそらく400万円くらいの値段でさ。総アルミボディにして、エンジンももっと凄いの使っちゃえば、「初代を超えた!」とか「ライバルはロータス!」とか言われるものができるでしょう。マツダにはそれくらいの力がある。
でも、気軽さがあってこそのロードスターだよね。俺は素晴らしいクルマだと思いました。結構、欲しい! ミニ売っちゃおうかな? ……ってウソですけど。
それから最後にAT仕様のお話。ステアリングにパドルシフトが付いた、マニュアルモード付きの6段ATにも乗ったんだけど、「もしや日本ではコレかな?」とも思ってしまいました。理想にはマニュアルだけど、ATはそれなりにギアチェンジも速いし、ダイレクト感もあって楽しい。ギアも6段あるしさ。細かく言うと、マニュアル車は6速、100km/hでエンジン約3000回転、AT車は2500回転強だから、若干ハイギアード。おそらく日本のノロイ高速ではATの方があってるかもしれない。燃費もいいだろうし。
ハワイに住んでたら間違いなくマニュアルにするのにね。この辺がツライところです。ぬはは。
(文と写真=小沢コージ/2005年6月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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