メルセデス・ベンツA200(FF/7AT)/A250エディション1(FF/7AT)
新機軸てんこ盛り 2018.05.14 試乗記 ブランドの“若返り”に大きく貢献したメルセデス・ベンツのCセグメントハッチバック「Aクラス」がフルモデルチェンジ。デザインも設計も一新され、装備やインターフェイスなど、あらゆるところに新機軸が採用された新型の実力を試す。上質で大人になったAクラス
真っ青なアドリア海に面した、クロアチアにある港町トロギルで対面した新型Aクラスは、少し大きく、上質で大人っぽくなったように見えた。
2012年に登場した先代Aクラスは、チーフデザイナーのゴードン・ワグナー氏主導のもと顧客層の若返りを図った。日本でもテレビCMに『エヴァンゲリオン』を手がけた制作チームのアニメーションや、テクノポップユニットPerfumeなどを起用して話題になった。先代の登場で欧州のAクラスオーナーの平均年齢は10歳以上若返ったという。
およそ6年ぶりのフルモデルチェンジで登場した4代目は、「“Sensual Purity(官能的な純粋さ)”という哲学に基づき、できるだけ“線を省く”ことでより成長したAクラスのカタチを実現した」と、先のゴードン・ワグナー氏が話すとおり、シンプルで無駄なラインがない。ボンネットなどはその典型例だ。左右に2本プレスラインが走るのみだが、それがワイド&ローな雰囲気を醸し出す。
実際のボディーサイズは全長4419mm(先代比+120mm)、全幅1796mm(同+16mm)、全高1440mm(同+6mm)。ホイールベースを30mm延長し、フロントのトレッド幅も14mmひろげて、膝まわりをふくむ居住空間を拡大した。さらに荷室の奥行きを115mm延長し、荷室容量は29リッター大きい370リッターに、リアゲートの開口部もテールランプを分割デザインとすることで、使い勝手を大幅に向上させている。
新世代のボディー骨格は、先代の「MFA(メルセデス・フロントドライブ・アーキテクチャー)」に続く第2弾として「MFA2」と呼ばれるものだ。シャシー剛性などは先代比で約3割も高められているという。サスペンション形式はフロントはマクファーソンストラットを踏襲しながら、リアは新設計のトーションビームとマルチリンク形式をホイールサイズや駆動方式で使い分ける。トーションビームは将来的な電動化を見越してのものと思われるが、今回試乗したモデルはいずれもマルチリンクだった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
長足の進化を遂げた走りと快適性
最初に試乗したのが、新型の1332cc直列4気筒ターボエンジンを搭載する「A200」だった。1.3リッターで最高出力163ps(120kW)、最大トルク250Nm(25.5kgm)を発生するのだが、トランスミッションは新開発の湿式7段DCTを組み合せており、低速からギクシャクすることなく、まるでトルコンATかのようにスムーズに動き出す。
まず上質になった乗り心地に驚く。モデルによって19インチの「ピレリPゼロ」と18インチの「ミシュラン・パイロットスポーツ4」の2種類のタイヤが装着されており、個人的には後者のほうが乗り心地がよく好ましく感じたが、いずれも先代では気になった段差での突き上げ感が大きく改善されており、まるでひとクラス上のモデルになった印象だ。ステアリングフィールもFFのそれとは思えないほどにしっとりとしたもので、ワインディング路や高速道路に入るとその真価を発揮する。NVH性能は遮音や補強対策に「Cクラス」のノウハウを投入したというだけあって、大幅に改善されていた。
もう1車種、1991ccの直列4気筒ターボエンジンで最高出力224ps(165kW)、最大トルク350Nm(35.7kgm)を発生する「A250」にも試乗した。こちらは近年のメルセデスでは恒例の新型導入記念の装備充実限定車「エディション1」だ。エンジンは低回転域からとても力強く、電子制御ダンパーのアクティブダンピングコントロールによる路面追従性のよいしなやかな乗り味で、ヨーロッパでよく見られるような高い速度域のワインディング路では、思わず「ほぉ~」という感嘆詞が出るくらい、Cクラスもかくやの走りを見せた。
今回の試乗会で同行させていただいた、メルセデスに一家言をもつとある先輩は、この新型Aクラスを「ようやく本物のメルセデスになった」と評し、またある先輩は「これでFF、FR論争は終結かもしれない」と述べていた。その言葉からも進化のほどは推して知るべしだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
当たり前のように搭載された快適装備の数々
インテリアの装備も、コンパクトなAクラスだからと我慢するところは一つもない。「Sクラス」のものをそのまま使ったというステアリングをはじめ、今どきのスマートフォンの無線充電も、シートヒーターはもちろんシートクーラーをも備えている。このシステムはSクラスや「Eクラス」の流用ではなくAクラスのシートに収めるために小型化して専用開発されたものという。さらに、長距離、中距離、短距離と、移動距離に応じて疲労軽減のために微妙に背もたれなどの角度を自動で調整してくれる機能まで備えていて驚いた。
またカメラとレーダーを組み合わせたADAS(先進運転支援システム)も進化しており、停車中に後方からの衝突の危険が迫ると、システムが自動的にブレーキをかけ衝撃を低減する「プレセーフプラス」やウインカー操作に応じて自動で車線変更する「アクティブレーンチェンジングアシスト」といった機能まで当たり前のように盛り込まれていた。
そうした中で、進化した走行性能と同じくらい注目なのが、メルセデス初のインフォテインメントシステム「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)」だ。
見た目はメーターとナビゲーションのそれぞれ10.25インチのディスプレイを2つ組み合わせたもの。メータークラスターのないデザインが新鮮だ。最大のポイントはいまどきのアップルのSiriや、アマゾンのAlexaよろしく、「ヘイ、メルセデス」と声をかけると起動し、AI(人口知能)を活用して、音楽やエアコンの温度操作や、アンビエントライトのカラーの変更などもできるというものだ。
■「MBUX」の操作の様子
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
日本導入が待ち遠しい
正直に言えば、音声入力って気恥ずかしいし、エアコンの温度くらい自分で変えたほうが早くない? と思っていた。ところがしばらく使っていると、「I’m hot」とつぶやけば、エアコンの温度を1℃下げてくれるし、温度を指定すればそれに合わせてくれる。願いがうまく通じたり、少し会話ができたりすることが楽しくなってくるから不思議なものだ。
試乗会の時点では英語仕様しか用意されておらず、しかも「メルセデス」のネイティブな発音がなかなかうまくいかず起動するのにもひと苦労だったが(もちろん音声だけでなくステアリングのスイッチでも起動は可能)、将来的には23カ国の言語に対応し、目下のところ日本語対応に向けて開発中とのことだ。
MBUXの開発者は、「いまやアップルやグーグル、アマゾンの生みの親であるアメリカでは3分の2の人々が毎日一度は音声入力を使っており、音声入力はこれから世界的にもっと普及していく。そしてAIを駆使することで将来的にはもっとユーモアを交えた会話が可能になると見込んでいる」と話していた。
なお新型Aクラスの日本発売は、この日本語対応の難しさもあって年内の導入が可能かどうかは未定という。ハードルは相当に高そうだが、この類いのものはどんどん使ってデータを蓄積し、アップデートを重ねていくほかないだろう。
実のところ個人的には英語の勉強のために、いまの英語対応のみの仕様でも欲しいと思った。最近メルセデス・ベンツ日本が取り組んでいるオンラインストアで限定車エディション1を販売しても面白いかもしれない。いずれにせよ、MBUXを備えた新型Aクラスが一日でも早く日本にやってくることを楽しみに待ちたい。
(文=藤野太一/写真=ダイムラー/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツA200
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4419×1796×1440mm
ホイールベース:2729mm
車重:1375kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:163ps(120kW)/5500rpm
最大トルク:250Nm(25.5kgm)/1620rpm
タイヤ:(前)225/40R19 93W/(後)225/40R19 93W(ピレリPゼロ)
燃費:5.2-5.6リッター/100km(約17.9-19.2km/リッター、NEDCモード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
メルセデス・ベンツA250エディション1
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4419×1796×1445mm
ホイールベース:2729mm
車重:1455kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:224ps(165kW)/5500rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1800rpm
タイヤ:(前)225/40R19 93W/(後)225/40R19 93W(ピレリPゼロ)
燃費:6.2-6.5リッター/100km(約15.4-16.1km/リッター、NEDCモード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター

藤野 太一
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
アウディA6アバントTFSIクワトロ200kW(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.5 今も昔もアウディの中核を担うアッパーモデル「A6」。その最新世代の「アバント」に試乗した。堂々とした優雅なボディーに最新のハイブリッドシステムを搭載したステーションワゴンは、いかなる走りを見せてくれるのか。その実力をリポートする。
-
ホンダN-BOXカスタム ターボ コーディネートスタイル2トーン(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.3 フロントグリルとメッキパーツの面積が大きくなって迫力が増した最新の「ホンダN-BOXカスタム ターボ」に試乗。マイナーチェンジで進化した内外装の仕上がりと、軽四輪車の販売で11年連続の首位を誇る“絶対王者”の走りを報告する。
-
日産エルグランドG e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.9.30 日産のプレミアムミニバン「エルグランド」がフルモデルチェンジ。その動力を担う第3世代の「e-POWER」は優れたドライバビリティーとともに、懸案だった高速燃費の改善もうたう。ロングドライブで進化のほどを確かめた。
-
NEW
パナソニックが市販カーナビを終売! 巨人の撤退からカーエレクトロニクスの変化を読み解く
2026.10.9デイリーコラムパナソニックが、市販市場向けカーナビゲーション、ドライブレコーダー、リアビューカメラの終売を発表! カーエレクトロニクス界の巨人は、なぜ市場からの撤退を選んだのか? 変化し続けるマーケットの在りようを振り返り、車載機器の未来を考察した。 -
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】
2026.10.8試乗記フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。 -
「アプライドD」で何が変わった? スバルの「インプレッサ」と「クロストレック」の進化を探る
2026.10.8デイリーコラムスバルが「インプレッサ」と「クロストレック」の改良モデル「アプライドD」を発表した。モデルライフの折り返し地点となる今回の改良では、ラインナップの刷新がトピック。その内容とスバルの狙いを、スバリスト玉川ニコ氏が解説する。 -
“クルマづくりのプロ”の話をライブで配信! 「あの多田哲哉のクルマQ&A」公開収録のお知らせ
2026.10.7From Our Staff元トヨタの多田哲哉さんが、自動車に関するさまざまな疑問・質問に答える「あの多田哲哉のクルマQ&A」。その話がライブで聞けて質問もできる公開収録を、10月15日(木)の夜、19時半から実施します。 -
咆哮なき電気自動車「ジャガーTYPE 01(タイプ01)」に“ジャガーの魂”は宿るのか?
2026.10.7デイリーコラムいよいよ正式デビューを飾った、新生ジャガーのラグジュアリー4ドアGT「TYPE 01(タイプ01)」。いったいどんなクルマなのか、従来のファンも納得できる“ジャガーらしさ”はあるのか? 先行チェックした西川 淳がリポートする。 -
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】
2026.10.7試乗記新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。






















































