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メルセデスAMG A45 S 4MATIC+ファイナルエディション(4WD/8AT)

チャンピオンのままの引退 2025.01.28 試乗記 渡辺 慎太郎 「メルセデスAMG A45 S 4MATIC+」に最後の限定車「ファイナルエディション」が登場。まずはそのいでたちに目を引かれるが、真に注目すべきはライバルの追随を許さない走りのパフォーマンスである。名残惜しいのは間違いないが、王者の引き際をこの目で見届けた。
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何のファイナル?

冠婚葬祭の場に乗っていくのは少々はばかれる様相のこのクルマ、メルセデスAMG A45 S 4MATIC+ファイナルエディションと名乗っている。注目すべきは「ファイナルエディション」で、資料には「メルセデスAMG A45 S 4MATIC+、最後の限定車」と書かれている。A45 S 4MATIC+そのものは既発の仕様であり、これまでに数々の限定車も登場してきた。だから「最後の限定車」は確かにそのとおりなのだろうけれど、「最後」にはもうひとつ、重要な意味が含まれていると想像している。「最後」なのは「限定車」だけでなく、「Aクラス」そのものにも該当するからだ。

現在、エンジンを横置きにしたFFベースのメルセデスには“A”と“B”があり、このアルファベットを冠するモデルはAクラスのほか、「Aクラス セダン」「Bクラス」「GLA」「GLB」「CLA」「CLAシューティングブレーク」などがある。いっぽうで、これまでも何度かお伝えしてきたように、メルセデスはこれらのいわゆる“エントリーモデル”の整理に着手する。2025年中にはまったく新しいプラットフォームを採用する次期CLAの登場が予告されており、同時にシューティングブレークと2種類のSUVの兄弟車の存在も明らかになっている。ここからはあくまでも勝手な予測なのだけれど、シューティングブレークは現行のCLAシューティングブレーク、2種類のSUVはGLAとGLBの事実上の後継車だろう。そうなると、Aクラス、Aクラス セダン、Bクラスは現行モデルが「最後」ということになるわけだ。

好燃費が期待できて、メルセデスにしてはリーズナブルな価格で数を稼いで利益を出す。AやBにはそんな役目があったが、どうやら思った以上の利益は出せなかったようで、メルセデスは戦略を変更したといわれている。次期CLAも当初は電気自動車だけの予定だったが内燃機関のハイブリッドも併売することを余儀なくされた。劇変する自動車マーケットを取り巻く環境に対応するには、速やかな戦略変更も必要なのだろう。

「メルセデスAMG A45 S 4MATIC+」の集大成として登場した「ファイナルエディション」。日本では300台の台数限定で販売される。2025年1月22日現在、在庫僅少ながらまだオーダー可能とのこと。
「メルセデスAMG A45 S 4MATIC+」の集大成として登場した「ファイナルエディション」。日本では300台の台数限定で販売される。2025年1月22日現在、在庫僅少ながらまだオーダー可能とのこと。拡大
ボディーカラーはこの試乗車の「AMGグリーンヘルマグノ(マット)」(限定50台)と「MANUFAKTURマウンテングレーマグノ(マット)」(同150台)、そして「ポーラーホワイト(ソリッド)」(同100台)の全3種類。フロントドアには「45S」と大書されている。
ボディーカラーはこの試乗車の「AMGグリーンヘルマグノ(マット)」(限定50台)と「MANUFAKTURマウンテングレーマグノ(マット)」(同150台)、そして「ポーラーホワイト(ソリッド)」(同100台)の全3種類。フロントドアには「45S」と大書されている。拡大
ボンネットにはストライプとともに大きなAMGのロゴが描かれる。ストライプはルーフを通じてテールゲートまでつながっている。
ボンネットにはストライプとともに大きなAMGのロゴが描かれる。ストライプはルーフを通じてテールゲートまでつながっている。拡大
「ファイナルエディション」専用の鍛造ホイールはイエローのアクセント入り。アクセントと呼ぶにはだいぶ主張が強めだ。
「ファイナルエディション」専用の鍛造ホイールはイエローのアクセント入り。アクセントと呼ぶにはだいぶ主張が強めだ。拡大
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世界最強の2リッターターボエンジン

現行Aクラスのデビューは2018年。そのAMGモデルであるA45 S 4MATIC+(以下、A45と略す)が初めて日本へ導入されたのは2019年10月だった。A45がフロントに横置きするエンジンは完全新設計の「M139」型で、当時の2リッター直列4気筒エンジンとしては世界最強の最高出力421PS/最大トルク500N・mというパワースペックを誇っていた。このM139にはもうひとつの特徴があって、それは縦置きとしても使える点にある。実際、「C43」や「SL43」などもM139を搭載するが、それらはBSG仕様で電動ターボも採用している。後発の縦置き用はしっかり電動化されているのだけれど、電動化が間に合わなかったA45にはピュアな内燃機が搭載されているともいえる。

M139の最大トルク500N・mの発生回転数は5000-5250rpm。この数値からも想像できるように、このエンジンは過給機を備えながらも自然吸気(NA)のような高回転型で、レブリミットは7200rpmに設定されている。ターボは電動ではないものの、コンプレッサーとタービンをつなぐシャフトにはローラーベアリングが組み込まれ、機械的摩擦の低減が図られている。つまりレスポンスがいい。ウェイストゲートも電子制御化され、過給圧の緻密な制御が可能となり、最大過給圧の2.1barはクラストップレベルでもある。高回転までぶん回さないと本領を発揮しないとなると、心配なのは冷却。ターボの冷却にはオイルと冷却水のみならず、エンジンルーム内へ積極的に外気を導入する設計としている。

4MATIC+の「+」は、前後駆動力配分の随時可変を意味する。A45は100:0から50:50の範囲で状況に応じて前後の駆動力を配分する。またリアデフには「AMGトルクコントロール」と呼ぶ電子制御式の多板クラッチを2枚配置して、後輪左右の駆動力配分も行っている。

本国では「リミテッドエディション」の名称で2024年の年末までの期間限定商品として取り扱われていた。ボディーカラーは「グリーンヘルマグノ(マット)」のみの設定だ。
本国では「リミテッドエディション」の名称で2024年の年末までの期間限定商品として取り扱われていた。ボディーカラーは「グリーンヘルマグノ(マット)」のみの設定だ。拡大
「One man-One engine」の哲学に沿って手組みされる2リッター4気筒ターボのM139型エンジンは最高出力421PS、最大トルク500N・mを発生する。
「One man-One engine」の哲学に沿って手組みされる2リッター4気筒ターボのM139型エンジンは最高出力421PS、最大トルク500N・mを発生する。拡大
リアには固定式のリアウイングを装備。スタンダードな「A45」と同じルーフスポイラーの上に2階建てで備わっている。
リアには固定式のリアウイングを装備。スタンダードな「A45」と同じルーフスポイラーの上に2階建てで備わっている。拡大
フロントバンパーの両サイドには鋭角に切れ上がったスポイラーを装備。ボルトが見えているところがレーシーだ。
フロントバンパーの両サイドには鋭角に切れ上がったスポイラーを装備。ボルトが見えているところがレーシーだ。拡大

とにかくド派手ないでたち

ファイナルエディションのA45は、主に内外装に特別の施しがされている。試乗車の外板色である「AMGグリーンヘルマグノ(マット)」はAクラスとしては初採用で全国限定50台、いずれも日本限定色の「MANUFAKTURマウンテングレーマグノ(マット)」は150台、「ポーラーホワイト(ソリッド)」は100台の計300台が用意される。

ボンネット上の大きなAMGのエンブレム、ドアパネルの“45S”のデカール、専用の19インチアルミホイール、固定式リアウイング、黒と黄色のアクセントカラーは全車に共通である。インテリアではアルミニウムトリム、イエローイルミネーテッドステップカバー、ヘッドレストに“45S”と刻印されたAMGパフォーマンスシート、フロアマットなどが限定車専用の装備となる。

写真以上に実車は路上でかなり目立つ。自慢の動力性能を試そうと法定速度をうっかり超えてしまったりすれば、すぐに通報され特定されてしまいそうなたたずまいだ。これが「無謀な運転をしないように」というメルセデスの“粋な計らい”なのかどうかはよく分からないけれど、いつも以上に慎重かつ丁寧な運転を強いられているような気分になる。

たとえおとなしくドライブしていても、このクルマがノーマルのAクラスとは明らかに異なることは容易に分かるし、かつてのW202の「C36」やW210の「E55」のように、後になって振り返ってみるとAMGの歴史に残る名車の一台になるかもしれないと思うような乗り味に直面する。その印象の半分以上はやはりそのエンジンの振る舞いが占めるのだけれど、ハンドリングや乗り心地も含めて全体の仕上がりは「これぞ本物のAMG」と納得させられるものだった。

カタログモデルではオプションの「アドバンストパッケージ」と「AMGパフォーマンスパッケージ」を標準で装備(計114万円相当)。その代わり価格は1150万円とちょっと高めだ(カタログモデルは940万円)。
カタログモデルではオプションの「アドバンストパッケージ」と「AMGパフォーマンスパッケージ」を標準で装備(計114万円相当)。その代わり価格は1150万円とちょっと高めだ(カタログモデルは940万円)。拡大
インテリアには「ファイナルエディション」専用のアルミのトリムを採用。ステッチやアクセントなどに外装と同じイエローが効果的に使われる。
インテリアには「ファイナルエディション」専用のアルミのトリムを採用。ステッチやアクセントなどに外装と同じイエローが効果的に使われる。拡大
ヘッドレストに「45S」のステッチが施されたAMGパフォーマンスシートは、こう見えて電動調整機能もヒーターも完備。表皮はレザーARTICOとマイクロカットのコンビネーション。
ヘッドレストに「45S」のステッチが施されたAMGパフォーマンスシートは、こう見えて電動調整機能もヒーターも完備。表皮はレザーARTICOとマイクロカットのコンビネーション。拡大
サイドシルにはイルミネーション入りの「AMG」ロゴがあしらわれる。「45S」のタグ付きのフロアマットも専用仕立てだ。
サイドシルにはイルミネーション入りの「AMG」ロゴがあしらわれる。「45S」のタグ付きのフロアマットも専用仕立てだ。拡大

フィナーレを飾るにふさわしいパフォーマンス

最近のAMGは総体的に、よくも悪くも優等生になったと思っている。トルクが前へ前へと出るような加速感は猛烈ではあるけれど、それをまともに安全に走らせるためにさまざまな電子制御デバイスが総動員で介入し、結果として若葉マークのドライバーでも危なげなく運転できたりする。A45は、実際にはちっとも危なくないのにうっすらとしたスリルのようなものが味わえて、これが病みつきになるのである。

M139は本当に気持ちのいいエンジンだ。AMGの狙いどおり、ターボをあまり意識させないNAのような吹け上がりと、それに伴うエンジン音がドライバーを高揚させる。8段の「AMGスピードシフトDCT」の変速もキレがあり、スロットルペダルを深く踏み込むと5000-7000rpmの間でエンジン回転計の針が行ったり来たりしながらシフトアップを繰り返す。4MATIC+とAMGトルクコントロールが巧みな駆動力配分をしてくれるから、トラクションロスはほとんど感じられない。

ハンドリングもトランスミッション同様にキレがある。ステアリングを切ると間髪入れずにクルマはすでに旋回姿勢に落ち着いていて、過渡領域が早送りされてしまったように感じるほどだ。旋回中はステアリングだけでなくスロットルペダルでもさらに曲げることができる。そうなると当然のことながら旋回スピードが上がるので感覚的にちょっとヒヤッとするけれど、4輪の接地感が盤石なので心配はいらない。

こうした乗り味が実現できた要因にはボディーやサスペンションまわりの補強による圧倒的なボディー剛性感もあるが、やっぱりコンパクトなサイズも大いにひと役買っているだろう。全長もホイールベースも前後のオーバーハングも短いボディーはハンドリングに有利な条件がそろっている。動力性能と操縦性のバランスも整っていて、どちらかが勝ちすぎていることもない。A45のフィナーレを飾るにふさわしい一級のパフォーマンスだった。

(文=渡辺慎太郎/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=メルセデス・ベンツ日本)

0-100km/h加速のタイムは3.9秒、最高速は270km/h(リミッター作動)。人目を引くクルマでもあり、その強大なパワーはしかるべき場所で解き放ちたい。
0-100km/h加速のタイムは3.9秒、最高速は270km/h(リミッター作動)。人目を引くクルマでもあり、その強大なパワーはしかるべき場所で解き放ちたい。拡大
AMGパフォーマンスステアリングはリムにマイクロカットとナッパレザーが巻かれる。
AMGパフォーマンスステアリングはリムにマイクロカットとナッパレザーが巻かれる。拡大
ホーンボタンの右下にあるダイヤルでドライブモードを変えられる、左下のダイヤルではトラクションコントロールや足まわりの設定を個別に変更できる。
ホーンボタンの右下にあるダイヤルでドライブモードを変えられる、左下のダイヤルではトラクションコントロールや足まわりの設定を個別に変更できる。拡大
さらに細かなセッティングはセンターのタッチスクリーンで。足まわりやドライブトレイン、エキゾーストシステムなど、設定可能な項目は多彩だ。
さらに細かなセッティングはセンターのタッチスクリーンで。足まわりやドライブトレイン、エキゾーストシステムなど、設定可能な項目は多彩だ。拡大
IWCのパイロットウオッチ(の画像)をストップウオッチとして使える。実用的かどうかは個人の感覚によるだろう。
IWCのパイロットウオッチ(の画像)をストップウオッチとして使える。実用的かどうかは個人の感覚によるだろう。拡大

テスト車のデータ

メルセデスAMG A45 S 4MATIC+ファイナルエディション

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4455×1850×1410mm
ホイールベース:2730mm
車重:1670kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:421PS(310kW)/6750rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/5000-5250rpm
タイヤ:(前)245/35ZR19 93Y XL/(後)245/35ZR19 93Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:11.1km/リッター(WLTCモード)
価格:1150万円/テスト車=1185万円
オプション装備:ボディーカラー<AMGグリーンヘルマグノ[マット]>(35万円)

テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1297km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:273.0km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.0km/リッター(車載燃費計計測値)

メルセデスAMG A45 S 4MATIC+ファイナルエディション
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メルセデスAMG A45 S 4MATIC+ファイナルエディション(4WD/8AT)【試乗記】の画像拡大
 
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