ホンダ・フリードG Honda SENSING(7人乗り)(FF/CVT)
打倒! N-BOX 2019.11.19 試乗記 取り回しのしやすさと利便性の高さで人気を博す、ホンダのコンパクトミニバン「フリード」がマイナーチェンジ。新デザインとなった改良モデルは、従来型からどのような進化を遂げたのか? ベーシックな1.5リッターのガソリン車に試乗し、その出来栄えを確かめた。軽ばかり売れても困る
いま一番売れているホンダ車は、軽の「N-BOX」である。ホンダ車No.1どころか、ここ26カ月(2019年10月まで)、白ナンバーも含めて日本で一番売れている。
しかしそこがまさにホンダの悩みの種といえる。安い軽ばかりでは収益が悪くなる一方だからだ。雪崩のような軽シフトは避けたい。白ナンバーチームも売れてもらわないと困る。そんな期待を背負ってマイナーチェンジしたのが1.5リッター級コンパクトミニバン、フリードである。もともとフリードは販売的にも健闘していたが、3年ぶりのブラッシュアップで“ストップN-BOX”も狙いたいところだろう。
機構的に大きな変更はないが、フェイスリフトが施され、安全運転支援システムの「ホンダセンシング」が全グレードに装備された。軽ハイトワゴンでは両立しなさそうなちょっぴりSUVルックの新グレード「クロスター」も加わった。
試乗したのは、7人乗りの「G Honda SENSING」。全車標準装備なら、もう「Honda SENSING」と名乗らなくてもいいんじゃないの? と思うが、名乗りたいなら仕方ない。ハイブリッドではないフリードの上級モデルである。ちなみに、ひとこえ40万円アップするハイブリッドの販売比率は、約半分だという。ナマの1.5リッターエンジンモデルも重要な品ぞろえである。
より自然になったCVTの制御
フリードに乗るのは、現行モデル登場時以来だから、3年ぶりだ。そのときも今回と同じ7人乗りのG Honda SENSINGだった。走りだしの第一印象は以前よりちょっとロードノイズが大きくなったように思えたが、走り進むうちに気にならなくなった。
129PSの1.5リッター4気筒に対して、車重は1360kg。決して余裕のある馬力荷重ではないが、動力性能に不満はない。街中ではキビキビ走るし、高速道路でもパワー不足を感じることはない。
CVTには新たに“ブレーキ操作ステップダウン制御”が組み込まれた。下り坂でフットブレーキ操作に連動して、CVTがステップダウンシフトを行う。峠の下りで試してみると、無段変速機なのに、右足のブレーキングに呼応してたしかにシフトダウンが起き、自然なエンジンブレーキがかかる。そのほか、フル加速したときにエンジンが高回転に張りついたままになるCVT特有の性癖も、以前より気にならなくなった。ひとことで言うと、普通の有段ATっぽくなったと感じた。
ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)がリファインされて、自動的な加減速がよりスムーズになったという。ただし、このACCは全車速対応型ではなく、下限速度は30km/h。渋滞時には使えないし、ETCゲートを右足フリーの追従走行で通過することもできない。
ひとつ気になったことといえば、高速道路でACCとLKAS(車線維持支援システム)を使っていると、ダッシュボードの奥でカチカチという、リレーが断接するような小さな音が聞こえた。
ユーザーフレンドリーなクルマとしての課題
2列シートの「フリード+」もあるが、ふつうのフリードにはサードシートが標準装備される。2列目をひとり一席ヒジかけ付きのキャプテンシートにしたのが6人乗り。一般的なセカンドシートを備え、2+3+2で座らせるのが7人乗りだ。いずれにしても、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」と同じ4.3mのボディー全長に3列席を与えている。3.4mの軽自動車には逆立ちしてもマネのできないコンパクトミニバンのアドバンテージである。
ただし、このサイズだからサードシートは補助イス的だ。2列目席は10cmほど前後スライドするから、レッグルームは塩梅できるとしても、イスの脚が短いので、大人だと体育座りの姿勢をしいられる。子ども用と割り切ったほうがいいだろう。
サードシートをなくして荷室として使いたいときは、5:5分割のイスを左右の壁に跳ね上げてストラップでとめる。先代から続いている格納方式だが、現行フリードのサードシートはクッションも背もたれもかなり分厚いので、場所を食う。壁にかかったイスとイスのあいだは65cmしかない。高さのある嵩モノを積むときはいかにも邪魔くさい。格納するときも、そこそこの力仕事だし。
その点、ガチンコライバルの「トヨタ・シエンタ」は、本来、ホンダが得意とする床下ダイブダウン方式(セカンドシートの下にサードシートが格納される)を採用し、3列レイアウトと荷室の使い勝手を両立させている。車内に大小12カ所の収納スペースを持つと謳うユーザーフレンドリーなフリードとしては、今後の課題だろう。
コストパフォーマンスが素晴らしい
運転席にいて、フリードの一番いいところは、運転のしやすさである。発売が延び延びになっている新型「フィット」も「気持ちのいい視界」が開発テーマとされるが、フリードも負けていない。低い位置にあるダッシュボードのおかげで、視野の天地がたっぷりしている。左右のグラスエリアも広い。運転席に座ると、“肉眼”より視界がいいんじゃないかと感じるクルマである。
ハンドルは街中だとすごく軽いが、速度を上げると適度な重さになる。今回、別件で直前にN-BOXに乗っていた。フリードで高速道路に上がると、やっぱり軽とは違うなあと実感した。腰から下の安定感が格違いだ。それは安心感の余裕につながる。
2台の価格を調べてびっくりした。7人乗りフリードG・Honda SENSINGは218万2400円。一方、軽もいまや200万円コースが珍しくないのだが、N-BOXの人気グレード「カスタムEXターボ」という軽自動車も199万6500円する。軽しか買ってもらえないなら、軽を高く売るしかない。消費者からみると、そんなふうにも感じられる状況にあって、軽との波打ち際にいるコンパクトミニバンはいまコスパ赤丸急上昇中ではないか。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
ホンダ・フリードG・Honda SENSING(7人乗り)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4265×1695×1710mm
ホイールベース:2740mm
車重:1360kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:129PS(95kW)/6600rpm
最大トルク:153N・m(15.6kgf・m)/4600rpm
タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(ダンロップ・エナセーブEC300)
燃費:19.0km/リッター(JC08モード)/17.0km/リッター(WLTCモード)
価格:218万2400円/テスト車=272万2500円
オプション装備:ボディーカラー<プラチナホワイト・パール>(3万3000円)/ナビ装着用スペシャルパッケージ+ETC車載器<ナビ連動>+LEDヘッドライト+LEDアクティブコーナリングライト+Cパッケージ<プラズマクラスター技術搭載フルオート・エアコンディショナー+運転席&助手席シートヒーター+ロールサンシェード+IRカット[遮熱]/UVカット機能付きフロントウィンドウガラス+IRカット[遮熱]/スーパーUVカットフロントドアガラス+コンフォートビューパッケージ[親水/ヒーテッドドアミラー+フロントドアはっ水ガラス+熱線入りフロントウィンドウ]>(18万7000円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー<フロント用/DRH-189N>(3万0800円)/フロアカーペットマット<プレミアム>(4万2900円)/9インチ プレミアムインターナビVXM-207VFNiナビスペ用(23万1000円)/フェイスパネルキットVXM-207VFNi用(1万1000円)/ナビ取り付けアタッチメント(4400円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:873km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:348.9km
使用燃料:--リッター
参考燃費:14.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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