アウディRS Q3スポーツバック(4WD/7AT)
エンジン回してるぜ! 2021.05.15 試乗記 アウディスポーツが手がけたハイパフォーマンスクーペSUV「RS Q3スポーツバック」に試乗。開発にはモータースポーツでの知見を生かし、さらにサーキットで鍛え上げたというその走りを、ロングドライブに連れ出し味わってみた。全身からみなぎるヤル気
ご存じのように「RS」が冠されるということは、アウディにおいてその車種における最もパワフルなモデルであり、メルセデス・ベンツなら「AMG」、BMWなら「M」にあたる特別な一台ということになる。
アウディRS Q3スポーツバックの成り立ちを簡単に説明すると、ベースとなるのは「アウディQ3」。Cセグメント、すなわち「フォルクスワーゲン・ゴルフ」や「メルセデス・ベンツAクラス」に相当するコンパクトなサイズのSUV/クロスオーバーとなる。オーセンティックなSUVスタイルの「アウディRS Q3」とおしゃれクーペSUV版のアウディRS Q3スポーツバックの2本立てで、今回試乗したのは後者だ。
ベーシックなQ3は1.5リッター直4ガソリンエンジンと2リッター直4クリーンディーゼルエンジンをラインナップするけれど、RS Q3は最高出力400PSを発生する2.5リッターの直列5気筒ターボをボンネットに押し込んだ。フロントフードを開けると、5気筒エンジンが横置きされている絵面が実に新鮮。
駆動方式は当然ながらアウディ独自の4駆システムである「クワトロ」で、ちなみに2020年はクワトロ生誕40周年だった。
アウディRS Q3スポーツバックはパッと見た瞬間からいかにもやんちゃそうなたたずまいで、黒く輝くハニカムデザインのフロントグリルとか、がばちょと開いたエアインテーク、あるいは楕円(だえん)の左右振り分けの2本出しテールパイプが、「やったるでぇー」という雰囲気を醸し出している。リングに上った格闘家のように、ヤル気が全身からみなぎっている。
インテリアも、「クールで洗練された」という常套句(じょうとうく)で語られることが多い、いつものアウディとは少し趣が異なる。「RS」のロゴがエンボス加工されたスポーツシートや、要所に配されるアルカンターラ素材、あるいはアルミの装飾パネルや色鮮やかなステッチなどが、わかりやすく「スポーティー」と「プレミアム」をアピールしている。
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刺激的な直列5気筒エンジン
なるほど、フツーのアウディとは見た目が違うと思いながらエンジンを始動して走りだすと、走りもフツーのアウディとは違うことを思い知らされる。まずタウンスピードでは、ビシッとした突き上げを感じる。乗り込む前に21インチサイズのタイヤを見て「かっちょええなぁ」と思ったけれど、このハーシュネスのキツさにはその21インチが加担しているのかもしれない。
試乗車にはオプションの「RSダンピングコントロールサスペンション」が装着されているので、「アウディドライブセレクト」を操作すれば、足まわりのセッティングも変更できる。ラーメン屋さんで「麺、硬め」とか「麺、やらかく」と注文する要領だ。
そこでデフォルトの「オート」から「コンフォート」に変更してみるけれど、劇的な改善は体感できず、言われてみればちょっとはマシになったかな、という程度。幸いなのは、固いは固いけれど路面からの突き上げを剛性感の高いボディー全体で受け止めていると感じられることで、どこか一点に「ビシッ」という入力が集中することはない。
路面がスムーズな高速道路に入ると、当然ながら乗り心地に不満は感じなくなるけれど、市街地のスパルタンさはかなりのものだと肝に銘じておきたい。
モーターのようにスムーズなエンジンに慣れた身に、直列5気筒エンジンは刺激的だ。決して回転フィールがふぞろいというわけではないけれど、アクセル操作に対してパワーとトルクが盛り上がる瞬間に、バラっという音と感触が混じる。5本のシリンダー全員が言いなりのイエスマンではなく、議論をしながら仕事を進めている感じ。トムとジェリーのように、仲良くケンカしている。
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「RS」の称号は飾りではない
ワインディングロードに入ると、21インチだからとかハーシュネスがキツいといった不満が吹き飛ぶ。ターンインではキュキュッとノーズがインに入り、コーナーからの脱出ではクワトロがパワーを一滴も無駄にしないで地面にたたきつけていることが伝わってくる。4駆だから曲がりにくいとか、オン・ザ・レールすぎてつまらないということは一切なく、ドライバーは思いのままに操っている実感にひたることができる。
ここで感じるのは、クルマをよくわかっている人が、細部にまでこだわりぬいて煮詰めているということだ。
例えば地面とタイヤの関係をものすごく高い解像度で伝えるステアリングフィール。微妙な踏力の変化にしっかりと応答するブレーキ。荒れた路面でのハードブレーキングでも姿勢を乱ささず、ボディーを地面に押し付けるように速度を殺す減速感。そして、ちょっと大げさすぎやしないかと思ったスポーツシートが、しっかりと体をホールドしてくれる。わかった! SUVにRSの称号を与えたものではなく、RSにSUVのスタイルを与えたのがこのクルマなのだ。
そんなスポーティーな気分をさらに盛り上げるのが直列5気筒の音とパワー感。ちょっとクセのある存在感が、「エンジン回してるぜ」と思わせてくれる。モーター関係のクルマが増えた昨今、あえてエンジン車を選ぶならこういう選択肢かもしれない。
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スポーティーというよりレーシー
タイトなコーナーでくるっと曲がる感覚は、舵角が大きくなるとステアリングギアボックスのギアレシオが変わるプログレッシブステアリングのおかげだろう。そしてこの「くるっ」を何度か経験して、これに似たクルマに乗ったことがあるぞ、と脳ミソが検索を開始する。そうだ、「ウルス」だ。ランボルギーニ・ウルスも、4輪操舵やトルクベクタリングを駆使して、巨体なのにくるっと曲がる感覚を実現していた。
そしてアウディドライブセレクトで「ダイナミック」を選択した時のエンジンのたけだけしい吹け上がりとごう音も、ランボルギーニ・ウルスを思わせる。これは小さなウルス、子ウルスだ。もし、駐車場とかなんらかの事情で、欲しいけどウルスが買えない、所有できないという方は、このクルマを選ぶという手がある。ただし、低速域でのスパルタンさではウルスを上回るので、そこはお気をつけください。スポーティーというよりレーシーなモデルなのだ。
レーシーと書いて思ったけれど、知的でクールなイメージのアウディではあるものの、もともとはWRCやルマンにおける激しいバトルで技術を磨いた会社だ。言ってみれば、ケンカも強い理系の秀才。アウディRS Q3というモデルは、一見するとアウディにおける異端児に感じるけれど、実はこっちが王道だという気もしてきた。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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車両データ
アウディRS Q3スポーツバック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4505×1855×1555mm
ホイールベース:2680mm
車重:1740kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直5 DOHC 20バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:400PS(294kW)/5850-7000rpm
最大トルク:480N・m(48.9kgf・m)/1950-5850rpm
タイヤ:(前)255/35R21 98Y/(後)255/35R21 98Y(コンチネンタル・スポーツコンタクト6)
燃費:9.8km/リッター(WLTCモード)
価格:863万円/テスト車=1127万円
オプション装備:RSスポーツエキゾーストシステム(16万円)/アルミホイール<5アームトリゴンデザイン マットチタングレー 8.5J×21>&255/35R21タイヤ(17万円)/デコラティブパネル<カーボン>(8万円)/エクステリアミラーハウジング<カーボン>(12万円)/スピードリミッター<280km/h>(23万円)/Bang & Olufsen 3Dサウンドシステム(13万円)/カーボンエンジンカバー(8万円)/ブラックスタイリングパッケージ(12万円)/セラミックブレーキ<フロント>&レッドブレーキキャリパー(75万円)/RSダンピングコントロールサスペンション(17万円)/RSデザインパッケージ エクステンデッドレッド/Sスポーツシート(51万円)/マトリクスLEDヘッドライト&ダイナミックインジケーター&ワイヤレスチャージング(12万円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:4257km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:305.0km
使用燃料:31.1リッター(ハイオク)
参考燃費:9.8km/リッター(満タン法)/10.2km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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