特別仕様は700万円 新型「フェアレディZ」は“買い”なのか?
2022.02.07 デイリーコラムスペック的にはなかなか
2020年9月にプロトタイプ名目で初めて姿を現した7代目「フェアレディZ」は、翌2021年8月に、北米のニューヨークで量産型が公開されていた。そして2022年1月に開催された東京オートサロンで、ついに日本仕様が公開となった。
それと同時に、新たに明らかになった事実がいくつかある。ひとつが、国内では2022年6月下旬ごろの発売予定であること。2つめは、基本ラインナップが素モデルの「フェアレディZ」にMTのみの「バージョンS」、ATのみの「バージョンT」、MTとATの両方が選べる「バージョンST」という従来どおりの構成であること(現時点で「NISMO」がないのも通例)。そして3つめが、手はじめに「プロトスペック」という特別仕様車が240台限定で先行発売されることだ。
新型フェアレディZ(以下、Z)について、これまでに判明している基本情報を、あらためてまとめてみる。
基本骨格=プラットフォームは従来改良型だ。2550mmというホイールベースも従来と変わりはない。ただし、車体剛性アップにラックアシスト式電動パワステ、フロントワイドタイヤ、サスペンションのジオメトリー変更などで基本的な安定性や旋回性能を高めつつ、新しい大径モノチューブダンパーは従来より減衰力を下げているそうで、よりしなやかな乗り心地や接地感、荷重移動による一体感が期待できそうだ。また、全長は50mm延びた4380mmであるいっぽうで、全幅や全高は変わらない。そこから醸し出されるロング感、というか、ちょいナロー感は新型Zにクラシカルな雰囲気を与えている側面もあろう。
エンジンは「スカイライン400R」と共通の「VR30DDTT」型で、最高出力405PS/最大トルク475N・mというピーク性能も400Rと同じだ(最大トルクの発生回転域だけ少し拡大しているが)。Zにとって圧倒的メイン市場である北米での最大の競合車は「ポルシェ718ケイマン/ボクスター」だが、同車のエントリーモデルが4気筒なのに対して、Zは新型でも全車V6なのはアドバンテージになるだろう。
アレはあってもソレがない
いっぽうで、変速機はスカイラインとは異なる。ATは新たに9段化されて、古典的な6MTがきちんと残されたことも好事家にとっては嬉しいかぎりだ。
新たに搭載される9ATはいつもどおりの、日産子会社のジヤトコ製で、日本では今回が初出となるが、北米では「パスファインダー」「タイタン」「フロンティア」いった縦置きエンジンのSUVやピックアップですでに市場に出ている。タイタンのようなフルサイズピックアップに使われているというと巨大な変速機をイメージしてしまうが、実際には従来の7段型に対して本体全長は同等で、重量は軽いらしい。6MTは従来改良型で、これまで同様に愛知機械工業が供給するという。ただし、エンジントルクの向上に合わせてクラッチや内部構造が強化されたほか、シフトフィールも改良されているとか。自動的にエンジン回転を合わせてくれる「Sモード=シンクロレブコントロール」のスイッチも残っている。
今回のオートサロンでは、9AT車のインテリアも初めて公開された。シフトセレクターが「ノート」のそれに似たスライド式であることから、シフトバイワイヤになっていることが分かる。また、ATでもMT同様のパーキングブレーキレバーが配置されていることも判明した。それがコンソールの左側にあるのはあからさまな左ハンドル優先設計(涙)なのだが、この点については先々代(Z33型)からずっとこうなので、いまさら文句はいうまい。
アダプティブクルーズコントロール(ACC)は装備されるというが、AT車でも電動パーキングブレーキではない時点で、渋滞追従機能や「プロパイロット」の類いが、Zに用意されないことが分かる。従来改良型プラットフォームで、しかも生産台数がかぎられる純スポーツカーでは先進運転支援システム(ADAS)を完全刷新することはむずかしいのもかしれないが、最新の日産車なのにADASを割り切るのはちょっと意外、というか残念ではある。
“値上げ”はだいたい想定内
今回は特別仕様車のプロトスペックのみとはいえ、国内価格が明らかになったことも大きな話題となった。その価格は変速機を問わず、696万6300円である。
先代モデルは最終期のバージョンSTで519万8600円~530万8600円、同じくNISMOで640万9700円~651万9700円だった。プロトスペックの装備内容が「最上級バージョンSTのプラスアルファ程度?」と予想すると、Z全体としては、従来より100万円~150万円の値上げと予測される。新型Zの価格についてはネット上に「カタログモデルは500万円台前半スタート?」という未確認情報も見られるが、先代末期の素グレードが397万9800円~405万9000円だったことを考えると、少なくとも計算は合う。
いまだにデフレから脱却し切れていない日本の感覚では、3ケタ万円の価格アップは“高騰”と受け取られてもしかたない。ただ、これまで皆無に近かったADASがACCに加えて、緊急自動ブレーキ、車線逸脱警告、ブラインドスポットモニター、リアクロストラフィックアラートなど、現代のクルマとして最低限のものは備わるようにはなった。さらにはエンジン出力は約70PSの爆上げ、ATはギア2段増し、ナビを含むセンターディスプレイが9インチ(先代は7インチ)、メーターパネルも12.3インチのカラー液晶といった装備・機能アップ分を考えると、グローバル基準でいえば、この範囲の値上げは想定内といえなくもない。
……と、いちいちツッコミを入れたくなるのもZが期待のスポーツカーだからだ。とにもかくにも、このご時世に、われらがZがこうして生き残ってくれただけでも素直にめでたい気分である。
(文=佐野弘宗/写真=webCG/編集=関 顕也)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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