メルセデスAMG EQE53 4MATIC+(4WD)
静かなるスーパーセダン 2022.08.03 試乗記 メルセデスの新型電気自動車(BEV)「EQE」には、AMGのチューニングにより最高出力を600PS以上にまでアップした高性能バージョンが存在する。果たして、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか? 日本上陸を前にその走りをチェックした。ドレスアップがよく似合う
実は、2022年4月下旬にメルセデス・ベンツEQEの国際試乗会に出向いた時には、すでにこのメルセデスAMGが仕立てたEQEの存在が公になっていた。ただし、その時にはステアリングを握ることはかなわず。6月末にあらためて渡欧してようやく試乗と相成ったのが、その名も「メルセデスAMG EQE53 4MATIC+」である。
EQEは、メルセデス・ベンツが公式にそうだと言っているわけではないが、要するにBEVにおける「Eクラス」である。キャッチコピーは“ビジネスアバンギャルド”。一体どんな人かと思ってしまうが、あるいはそういう人に響くのは、むしろこのメルセデスAMG版のほうかもしれないというのが、実車を前にして抱いた第一印象だ。
キャビンフォワード、ロングホイールベースのエアロフォルムをまとったEQEのエクステリアには、メルセデスAMG不変のアイデンティティーといっていい、縦スリットが刻まれたブラックパネルグリルや前後バンパー、スポイラーなどのアイテムが装着され、がぜん精悍(せいかん)さが増している。
先進的といえるのかはさておき、独創的なフォルムにはこのぐらいアグレッシブな仕立てのほうがしっくりくるように思う。また実際の効能として、ドラッグを増やすことなくアンチリフト効果を高めているという。
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スペックはトップレベル
デザイン、そして仕立てともに今風なのがインテリアである。オプションで用意されるMBUXハイパースクリーンは全幅140cmにもなる湾曲ガラスの中に3枚のスクリーンを内蔵したもので、見るからに未来感にあふれている。シートやダッシュボード、ドアトリムなどはブラック基調で赤ステッチ入りという、そこだけ見れば定番ド真ん中のコーディネートなのだが、実はレザー部分はARTICOと呼ばれる合成皮革、スエード素材に見えるのもMICROCUTというマイクロファイバーと、レザー不使用という最近のトレンドに乗っかっている。とはいえ、ステアリングホイールはナッパレザー巻きだし、シートなどにもオプションで選択可能ではあるのだけれど。
BEV専用プラットフォーム「EVA2」を用いる車体は、その前後に1基ずつAMG専用の高出力化に対応した電気モーターを搭載している。合計最高出力は626PS、最大トルクは950N・mと強力だが、その上にはさらに「AMGダイナミックプラスパッケージ」が用意されていて、こちらは最高出力687PS、最大トルクは1000N・mにも達する。
0-100km/h加速はバッテリーのSOC(充電率)が70%以上の状態であれば3.3秒。トップスピードは240km/hに達する(AMGダイナミックプラスパッケージ装着車)。リチウムイオンバッテリーの容量は90.6kWh。一充電航続距離はWLTPモードで459-526kmというのがスペックシートに記された数値である。
シャシーにも当然、大幅に手が入れられている。エアサスペンションにはバンプ/リバウンドの減衰力を個別に調整できる電子制御ダンパーが組み合わされ、最大3.6度の操舵角を持つリアアクスルステアリングも標準装備となる。また、ホイールキャリア、リンク類、アンチロールバーは専用品とされ、リアアクスルとボディーをつなぐベアリングも50%強化された。タイヤサイズは20インチで、オプションとして21インチも設定される。後者を履いていた試乗車では、銘柄は「ミシュラン・パイロットスポーツEV」が選択されていた。
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“音”は大きな障害になる
これだけのスペックである。走りだす前にはそれなりに身構えたが、少なくとも街なかを流すような場面ではこのクルマ、秘めたどう猛さを一切、表には出さない。デフォルトのCOMFORTモードでは出力が最大値の80%までに抑えられるのも効いているのだろう。走りっぷりは極めて力強く、そして滑らか。車重を意識させられないわけではないが、それは快適性の面ではおおむね良い面が強調されていて、豊かなサスペンションストロークとも相まって、リラックスした走りを楽しめる。
もちろん、それにはエンジン音がしないということも影響しているはずだ。例えばこれが「メルセデスAMG E53 4MATIC+」だったら、街なかとてこんなに安穏とした気分ではいられなかったに違いない。
100%のパワーを発揮できるSPORT+モードに切り替えると、メルセデスAMG EQE53 4MATIC+はにわかに本領を発揮しはじめた。アクセルペダルを踏み込むとタイムラグなしにずぶといトルクが立ち上がり、一気に速度が高まる。強烈だが、決して粗野ではないスロットルのセッティングは巧みだ。
動力性能は文句ない。乗ってすぐには全開まで踏み切るのにちゅうちょしたほどだ。今回の試乗は一般道、ワインディングロードが主だったので高速域を試せなかったのが心残りだが、EQEの素晴らしいスタビリティーからすれば懸念を抱く要素はない。
一方、「EQS53 4MATIC+」と同じように、エンジンの咆哮(ほうこう)の代わりにスピーカーから出力されるゲームサウンドかのような電子音は正直、微妙である。音はいくつかから選べるしOTA(無線通信)で新しい音色をインストールすることもできるというが……職人手組みのV8を積むモデルから乗り換えるうえでの最大の障害が、ここであることは間違いない。
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攻めれば重さが顔を出す
見るからに大径のローターを用いた機械式ブレーキに強力な回生の組み合わせで、ブレーキも頼れるもの。ただし、車重があるのでコーナーを攻めるような場面では緊張感が拭えない。ペダルを踏み替えている間にクルマが思ったより前に進んでしまっているという感じなので、ソノ気でいく時にはパドル操作で回生の強さを切り替えて、ワンペダルドライブにしておくほうがリズミカルにいくことができる。
車重が重く、ホイールベースが長いのにもかかわらずフットワークが軽快なのは、前後輪の駆動力を毎秒160回という頻度で緻密に制御する4MATIC+、そしてリアアクスルステアリングのおかげだろう。特に後者は、おおよそ60km/hを境に前輪と逆位相から同位相に切り替わるということで、ワインディングロードでは一体感ある挙動を楽しめる。
ただし、調子に乗って飛ばすとやはり重さが顔を出す。このサイズ、重さのクルマは、たとえ可能だとしても、ここまでよく曲がるようにしつけないほうがいいのかもしれない、とも感じたのは事実である。
試乗後に思ったのは、ここ日本の一般道での使い方であり、メルセデスAMG EQE53 4MATIC+というクルマは、その実力、あるいは魅力をどれだけ発揮できるかということだ。日常域での走りは前述のとおり上質そのものなのだが、多くの人がメルセデスAMGに期待するのはそれだけではないだろう。もはやエンジン音に期待はできないのだ。それは当面続く課題となるかもしれない。
そのあたり、早く走り慣れた道で検証してみたいところ。日本導入時期はこういう情勢なので流動的だが、できれば2022年のうちにとのことである。
(文=島下泰久/写真=メルセデス・ベンツ/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
メルセデスAMG EQE53 4MATIC+
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4946×1906×1492mm
ホイールベース:3120mm
車重:2525kg
駆動方式:4WD
モーター:永久励起同期式モーター
最高出力:626PS(460kW)/--rpm
最大トルク:950N・m(96.9kgf・m)/--rpm
タイヤ:(前)265/35R21 101Y/(後)295/30R21 102Y(ミシュラン・パイロットスポーツEV)
交流電力量消費率:226-202Wh/km(WLTPモード)
一充電走行距離:459-526km(WLTPモード)
価格:--円
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh(車載電費計計測値)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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