ルノー・アルカナE-TECHエンジニアード(FF/4AT+2AT)
アシと燃費に自信アリ 2023.07.31 試乗記 ウォームチタニウムの専用色でコーディネートされた内外装が特徴的な、ルノーのクーペSUV「アルカナE-TECHエンジニアード」に試乗。その仕上がりと、今回の試乗イベントでおこなわれたメディア対抗燃費競争「プチ燃費チャレンジ」への参戦結果を報告する。今や魅力的な価格設定
ルノー・ジャポンは2022年、過去最高の8615台を売り上げた。これは輸入ブランド別トップ10に入るばかりか、プジョーをついに上回るフランス車1位となる数字でもある。同年のルノー・ジャポンは稼ぎ頭だった「カングー」がモデルチェンジ期にあたり、その販売台数が前年の1631台から7台に激減。そうした逆風を押しての過去最高は「トゥインゴ」「キャプチャー」「メガーヌR.S.」などが前年比プラスだったことに加えて、新規車種の「アルカナ」が発売半年で、これらや「ルーテシア」といった主力モデルに続く754台を売り上げたからだ。
アルカナ人気の秘密は、この一度見たら忘れられなくなる(?)独特のクーペルックと「フルハイブリッド」の記号性、そしてその記号に恥じない22.8km/リッターというWLTCモード燃費だろうか。ただ、アルカナは車体サイズこそCセグメント級でありながら、内外装の仕立てはルーテシアやキャプチャーなどのBセグメントに通じる……という独特のポジションにある。それを考えると発売当初の価格(429万円)は少し高い印象もあり、当時の試乗リポートでもそう書かせていただいた。
しかし、そこから輸入車価格は上昇の一途。他社の同クラスはあっという間に、純ガソリン車でも400万円台後半、ディーゼルともなると500万円台が当たり前になってしまった。アルカナも多少は値上がりしたものの、追加された1.3リッター直4ターボの「マイルドハイブリッド」で399万円、今回の「E-TECHフルハイブリッド」(以下、E-TECH)でも438万円~469万円という正札を下げる。
この素直に魅力的な割安価格の背景には、アルカナの生産拠点が日本に近い韓国・釜山工場であることも大きい。そのおかげか供給も安定しており、ルノー・ジャポンの公式ウェブサイトでも、アルカナはE-TECH、マイルドハイブリッドともども「早期納車可能なモデル」として掲載されている。
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終始パワフルでトルキー
2023年7月現在のアルカナE-TECHのラインナップは今回試乗したE-TECHエンジニアードと、先日発売された割安な特別仕様車「アントラクトE-TECHフルハイブリッド」という2台体制になっている。
E-TECHエンジニアードは、前後バンパーやアルミホイール、フロントシートといった各部の基本デザインを、アルカナの導入当初に設定されていた(現在もマイルドハイブリッドに設定されている)「R.S.ライン」と共有するスポーツ系グレードだ。そのうえで、随所に電動車らしいゴールド系(ルノーでは「ウォームチタニウム」と呼ぶ)のアクセントをあしらい、グリルやバッジを最新トレンドのグロスブロック化しているのが、エンジニアードの特徴である。
走りそのものは従来のアルカナE-TECHと基本的に変わりない。パワートレインの源流が最高出力94PS、最大トルク148N・mの1.6リッター自然吸気ということで、この車格には物足りないか……と思われるむきもあるかもしれないが、それは無用な心配だ。
中低速からトルクモリモリの電動パワートレインらしく、市街地や都市高速ではなんとも活発に走り回ってくれる。リチウムイオン電池の残量が一定以上キープできる適度な加減速がからむ走行パターンなら、体感的には1.6リッターターボから2リッター自然吸気のパワー感といっていい。まあ、連続高速走行ではさすがにアタマ打ち感が早めの印象もなくはないが、それもあくまで欧州の平均的な高速制限速度である130km/h前後からの話。日本の制限速度内なら終始パワフルでトルキー。動力性能不足を感じることはまずない。
E-TECHはハイブリッドで一般に考えられるすべての駆動パターンを複雑に駆使しながらも、ギクシャク感がまるでない。おなじみのトヨタ方式と比較しても「ドグミッション」という独特の構造を想起するようなショックはほとんど見られない。
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隠れたヒットアイテムをアルカナにも
ルノーといえばその乗り心地とハンドリングにほれ込んでいるマニアも多いはずだが、アルカナもその期待にたがわぬアシ自慢だ。地上高の大きいSUVを安定して走らせるためか、乗り心地はパリっと感が強めであるものの、荒れた路面で無粋に上下することもなく、身のこなしはスポーツクーペらしい俊敏さで、ステアリングは心地よくマイルドな反応なのに正確。直進性も印象的なほど高い。
また、これまで何度かあるアルカナ経験では、新しい個体ほど、フットワークがどことなくしなやかになっている気がしないでもない。それが釜山の生産ラインがこなれたおかげなのか、なにかしら未発表の仕様変更があったのか、あるいは気のせいか……は定かではない。未公表で細かい仕様変更・部品変更を(勝手に?)おこなうこともいとわないのがルノーの流儀でもあるからだ。
ただ、今回の試乗車がこれまでに輪をかけて、路面の凹凸をグッと飲み込むような剛性感に富んで、ステアリングの正確性や直進性にも磨きがかかっていたのは気のせいではない。というのも、今回の試乗車には近くオプションとして商品化予定という「COXボディーダンパー」の試作品が、車体前後に装着されていたからだ。
COXボディーィダンパーはヤマハ発動機が開発した「パフォーマンスダンパー」をベースとしており、トヨタなどの国産スポーツモデルでもおなじみである。車体の剛性自体はそのままに、そこに減衰力を追加することで今回のアルカナのような効果を発揮する。COXがキット化したルノー・ジャポンのアイテムも、すでにメガーヌR.S.用や先代カングー用が販売されており、隠れたヒット商品になっている。
アルカナ用のそれも既存キットと同等コスト(工賃込み12万円台)で手に入れられるなら、ハンドリングオタクには必須アイテムといってもいいかもしれない。
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高速クルーズで真価を発揮
ところで、今回取材したメディア試乗会では、アルカナE-TECHによる「プチ燃費チャレンジ」なる催しもおこなわれた。これは拠点となった神奈川・川崎と千葉・君津に設けられたチェックポイントまでの往復燃費を競うものだ。ルートは自由だが2時間という制限時間があるので、実際はアクアラインを抜ける高速道主体の80~90kmというルートにならざるを得ない。
細かい結果はルノー・ジャポン公式ウェブサイトでも公開されているが、わがwebCGチームは平均31.3km/リッターで、参加したメディア/ジャーナリスト27組中で3位という好成績(自画自賛)をいただいた。ちなみにトップ3は31km/リッター台の争いだったが、webCGチームのみ平均速度が50km/h台(1~2位は40km/h台)に達していたのが「あからさまなエコランせずとも、この燃費?」という意味で少しだけ自慢(あるいは言い訳)である。
特別な運転はしていない。今回の好成績の要因は、標高差的に燃費が伸びにくい往路の高速で、おあつらえ向きの速度(70km/h強)で巡航する大型トラックを見つけられて、その“スリップストリーム”を使えたからだと思う。高速燃費のキモはやはり空力だ。高速での追従走行も優秀なアダプティブクルーズコントロール(ACC)にお任せだった。復路はほとんどが単独走行になったが、今回のルートの大半を占めた高速区間を、制限速度上限の80km/hではなく75km/hで巡航すると燃費も好転することを発見。あとはACCを75km/hにセットして走っただけだ。
ちなみに往路は一応エコモードで走ったが、復路はいつの間にかスポーツモードで走っていたことにゴール直前で気づいた。E-TECHのドライブモードは良くも悪くも単純で、基本的にアクセル反応が変わるだけと思われる。なので、おとなしく運転しているかぎりは燃費にさしたる影響はなさそうだ。他チームでも30km/リッター前後が続出したというから、アルカナE-TECHの実燃費は想像以上に優秀らしい。とくに今回のような高速クルーズでこそ真価を発揮するあたりが、いかにも欧州車らしいところだ。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ルノー・アルカナE-TECHエンジニアード
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4570×1820×1580mm
ホイールベース:2720mm
車重:1470kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:4段AT(エンジン用)+2段AT(モーター用)
エンジン最高出力:94PS(69kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:148N・m(15.1kgf・m)/3600rpm
メインモーター最高出力:49PS(36kW)/1677-6000rpm
メインモーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)/200-1677rpm
サブモーター最高出力:20PS(15kW)/2865-1万rpm
サブモーター最大トルク:50N・m(5.1kgf・m)/200-2865rpm
タイヤ:(前)215/55R18 95H/(後)215/55R18 95H(クムホ・エクスタHS51)
燃費:22.8km/リッター(WLTCモード)
価格:469万円/テスト車=477万6900円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマットセット<プレミアム>(2万6400円)/ETCユニット(2万8600円)/エマージェンシーキット(3万1900円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:3543km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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