あんなこともありました! 2025年の自動車業界で覚えておくべき3つのこと
2025.12.01 デイリーコラム2025年を振り返ってみると、自動車業界にはどんなトピックがあったのか? 過去、そして未来を見据えた際に、クルマ好きならずとも記憶にとどめておきたい3つのことがらについて、世良耕太が解説する。
その1:トランプ関税
第2次トランプ政権が発動した自動車関税は、日本の自動車業界に厳しい試練を与えることになった。当初懸念された「一律25%」という最悪のシナリオは回避され、15%の関税に落ち着いた。とはいえ従来は2.5%だったのだから影響は甚大で、日本の自動車メーカー各社の利益を大きくそぎ落とすことになった。
2026年3月期の第2四半期(2025年7月~9月)決算サマリーを参照すると、トヨタは「商品力を背景とした強い需要に支えられ」日本や北米を中心に販売台数は増加している。営業利益の見通しは3兆4000億円で、環境変化に強い収益構造を示した格好だ。ただし、前期比ではマイナス1兆4000億円で、関税の影響を1兆4500億円と計算している。原価改善などで関税影響のマイナス要因をわずかに押し戻す格好だ。
基礎体力のあるトヨタでこれなのだから、経営再建中の日産は言うに及ばず、北米マーケットへの依存度が高いホンダへのダメージ比率(収益へのインパクト)は、はるかに大きいと想像できる。米国での現地生産比率が低いマツダは日本からの輸入に頼る部分が大きいため、トランプ関税の影響をモロに受けている。営業利益500億円とする2026年3月期通期の見通しに変更はないとしながらも、第2四半期は539億円の営業損失を計上した。2026年モデル導入時に400ドル~700ドルの値上げを行うことで利益率を改善する計画だ。
関税分を車両価格に転嫁すれば、対他競争力が落ちて売り上げは減少しかねない。しかし、需要がそれを上回れば、利益は出る。カギを握るのは商品力だ。「25%はキツイが、15%ならなんとかなる」という話も漏れ聞く。15%の関税を前提にした体質づくりにしばらく時間はかかりそうだが、日本の自動車会社は逆境をばねに復活を遂げるはずだ。
その2:日産の経営再建
光陰矢のごとしとはよく言ったもので(よくは言わないか)、「そういえば、そんな話あったね」と今更ながらに思い起こすトピックは、ホンダと日産の経営統合の話である。両社が「経営統合に向けた検討に関する基本合意書を締結した」と発表したのは、2024年12月23日のことだった。
それからわずか2カ月後、「両社の経営統合に向けた検討に関する基本合意書を解約し、経営統合に関する協議・検討を終了する」ことを発表した。ただし、「戦略的パートナーシップの枠組みにおいて連携しながら、新たな価値を創造し、日産自動車およびホンダそれぞれの企業価値の最大化を追求していく」とした。結婚はしないが、いいお友達ではいましょうね、ということだ。
日産は自力で経営再建する道を選んだ。2024年度の決算で大きな最終赤字が見込まれることから(実際は6709億円の赤字)、業績悪化や社内求心力低下の責任をとる格好で、新経営体制に移行。4月1日にイヴァン・エスピノーサCEOが誕生した。
その1カ月後、5月には経営再建計画の「Re:Nissan」を発表。2026年度までに自動車事業の営業利益およびフリーキャッシュフローの黒字化を目指す。固定費と変動費で計5000億円のコストを削減し、人員を2万人減らし、車両生産工場を17から10に削減するという内容だ。7月15日には、追浜工場(神奈川県横須賀市)における車両生産を2027年度末に終了し、日産自動車九州に統合することが発表された。9月17日には、デザイン拠点を再編し、米カリフォルニア州サンディエゴのデザインセンターとブラジル・サンパウロにあるデザインスタジオの業務を終了すると発表した。
開発体制も見直す。部品の種類を70%削減するとともにプラットフォームの統合と最適化を進め、プラットフォームの数を2035年までに現在の13から7に削減する。また、新型モデルの開発期間を37カ月、後継モデルの開発期間を30カ月へと大幅に短縮することでコスト削減を図る。この取り組みで開発する車種のひとつは、新型「スカイライン」だ!
生き残るためには痛みを伴う改革を断行するのもやむを得ないということだろう。9月17日には年末恒例のファンイベントだった「NISMOフェスティバル」の中止が発表された。一方で、軽自動車の「ルークス」や電気自動車の「リーフ」といった、魅力的な新型車の発表があったことも覚えておきたい。
その3:ジャパンモビリティショー2025
重たい話題が続いたので、明るい話題で締めくくりたいと思う。2025年は「東京モーターショー」から「ジャパンモビリティショー」に名称を改めて2回目のショーが開催された(会期:10月29日~11月9日)。過去最多となる合計522の企業・団体が参加。期間中の来場者は101万人を数えたそうで、前回に次ぐ100万人超えである。
平日ならすいているだろうと高をくくって平日のとある日に訪れてみたが、見事に期待を裏切られ、どこも大混雑だった。自動車業界の片隅に身を置く立場としては、大歓迎な現象だった(閑古鳥が鳴いているのを見るよりはるかにいい)。
車名ではなくブランド名になった「センチュリー」が公の場に初めて登場したイベントとして記憶にとどめておくべきだし、ダイハツはFR(!)の「コペン」を開発している様子だし、経営再建中の日産は新世代e-POWERを搭載する「エルグランド」をセンターステージに展示して人だかりをつくっていたし、ホンダはモビリティショーにふさわしく、地球と宇宙を結ぶモビリティーとして再生型ロケットを展示していた。
スバルはパフォーマンス(STI)とアドベンチャー(Wilderness)の2つのラインで商品を展開していくことをブースのつくりと展示車で示し、マツダは2台のコンセプトカーで将来のデザインの方向性を示唆。三菱は4輪制御技術の進化した姿を電動クロスオーバーSUVとともに見せ、スズキは「通勤や買い物にちょうどいい」軽乗用EVのコンセプトカーを展示していた。
「モビショーに展示していたアレがこれになったのか」と手を打って感嘆する日が、近い将来やってくるはずである。
(文=世良耕太<Kota Sera>/写真=トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、webCG/編集=関 顕也)

世良 耕太
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