キャデラック・リリックV(4WD)
史上最速のアメリカンラグジュアリー 2026.05.29 試乗記 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。電気の力で実現した圧巻の動力性能
史上最速キャデラック、リリックVに乗りました。ヴイッ! 0-60mph加速3.3秒。4つ数えるその前に時速60マイルに達している。ボーン・イン・ザ・USAのエレクトリックビークル。18.9ミリオン・エンに乗りました。イエンッ! 2026年6月21日までに注文すれば、最速2027年初頭に届きます。おいらはこいつに試乗して、富士山麓で試乗してインプレッション書いています。リリック(歌詞)みたいに書いています。ヴイッ!
ということで、リリックVについて紹介したいと思う。その前に、ベースモデルのリリックについて簡略に述べておくと、キャデラックが2021年に発表した100%電気のラグジュアリーSUVである。それゆえスケートボード型、すなわちホイールベース間のフロアに電池を敷き詰め、前後にモーターを1基ずつ配置する、BEV専用のプラットフォームが使われている。低重心と高剛性が約束されているわけだ。本国では2WDもあるけれど、2025年に上陸した日本仕様は右ハンドル、4WDのみのモノグレードで、「リリック スポーツ」を名乗る。システム最高出力は384kW(522PS)、同最大トルクは610N・mと、“スポーツ”のサブネームにふさわしい数値を誇る。
その高性能版がリリックVで、前後モーターは当然、それ以上の数値に増強されている。スペシャルなモードを用いると、システムのパワーは最大475kW(646PS)、トルクは最大904N・mを発生するのだ。冒頭にも書いたように、0-60mph、つまり0-96km/h加速は3.3秒。それまでキャディ史上最速だった「CT5-Vブラックウイング」(6.2リッターV8スーパーチャージャー、668HP)の3.4秒を、コンマ1秒上回る。全長×全幅×全高=5005×1985×1640mm、ホイールベース3085mm、車重2680kgの巨体にして! アントニア猪木さんにならって叫びたい。電気ですかー、電気があればなんでもできる。
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あらゆるところが“V”専用
パワーアップに伴い、前後マルチリンク式のサスペンションはV専用チューンが施されている。バネも、ザックスのアダプティブダンパーも別物らしい。専用アルミホイールは1インチ大きい22インチ、タイヤは前後とも275/40R22で、試乗車は「コンチネンタル・プレミアムコンタクト6」を装着していた。ブレーキも強化され、フロントにブレンボの6ピストンキャリパーがおごられている。
外観ではルーフがブラックに塗られたツートンが標準となる。日本仕様のカラーは黒白グレーに濃緑色、それに今回の試乗車の赤の、全部で5色。リリック スポーツ比で全長が10mm長いのは、フロントの専用チンスポイラーの出っ張りによる。インテリアはスポーティーなダーク系でまとめられ、本革のシート表皮にはVの文字が描かれる。ステアリングホイール中央に輝くのはキャディの紋章ではなく、Vのバッジである。
機能面で特筆すべきは、専用のカスタマイズモードだ。「Vモード」と呼ばれるそれは、ドライバーの眼前の33インチのタッチスクリーンでも切り替え可能だけれど、ステアリングホイールに設けられた「V」の文字のボタンで、瞬時に呼び出せる。Vボタンを2度押すと、車両姿勢電子制御が低減される「コンペティティブモード」に、さらに長押しするとヴオンヴオンという電子音を発して「ヴェロシティマックスモード」となる。ヴェロシティマックスモードでローンチコントロールを使うと、0-96km/h加速3.3秒が味わえるはずだけれど、コンペティティブモードとヴェロシティマックスモードは「クローズドコースでのみ使用可能」とされており、今回の試乗では試していない。
ステアリング左のパドルブレーキやワンペダル等、いろんな機能があり、すべてを理解して使いこなせなかった……というのが正直なところであります。以降はそんな筆者による、リリックVの公道での印象である。
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幽体離脱しそうになる
実物との初対面は、静岡県御殿場市のはずれにある某コンビニの駐車場だった。デビューから5年を経た今見ても、リリックの外観デザインはフレッシュで、ほかと違っていると感じる。SUVとしては車高が低めで、リアの処理は「ジェンセン・インターセプター」とか「ルノー25」とかをちょっと思わせる。ヨーロッパの高級車デザインの延長線上にある。といえないこともない……かもしれない。
インテリアは湾曲した巨大なスクリーンが目立っている。最近のBEVらしく、スターターボタンはない。キーを持ったひとが乗り込むだけでスタンバイである。ステアリングホイール右のギアレバーを手前に引いて上がR、下がDである。Dに入れて、アクセルを軽く踏み込むとパーキングブレーキが自動的に解除され、しずしずと走りだす。
日本のカントリーロードだと、最初は2m近い全幅が気になる。それさえ慣れれば、ドライブモードが「ツアー」でも「スポーツ」でも、BEVはもともとアクセルに対するピックアップがよいから、実寸より小さめの、中型車に乗っている気分になってくる。ロードノイズは低く、静粛性は高い。V専用の人工のモーター音も控えめで、最大音量となるVモードでアクセルを踏み込んでも、耳をすませば、というレベルでひゅううううっ、と聞こえてくるにすぎない。それでいて幽体離脱しそうなモーレツな加速を披露する。
ステアリングはやや重めで、スローに感じる。そのほうが安全で、扱いやすいことは間違いない。といって、曲がりにくいわけではない。舵の入力に対して素直に反応する。ちなみに、モーターはフロントが最高出力191kW(260PS)、リアが284kW(386PS)と、後輪駆動寄りになっている。前後Gに対する姿勢変化が「ツアー」でも小さいのは、スケートボード型プラットフォームの恩徳(おんどく)にちがいない。
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荒れた路面はちょっと苦手か?
乗り心地は高速道路で最良の面を示す。646PS、904N・mのモンスターSUVの足まわりが高速セッティングなのは当然である。コイルスプリングはV専用といえどもガチガチではなく、段差を乗り越えた際にエアサスのようなふわ~んとした感触がある。厚みのあるパッドの入ったシートの貢献も大だ。
日本のカントリーロードによくあるツギハギの舗装路面とか凸凹路面とかでは、ひらったく申し上げるとドッシンバッタン。専用サスのストローク感と22インチのタイヤ&ホイールがマイナスに働く。リリックVはコンクリートジャングルのための、限りなくアーバンな高性能ラグジュアリーSUVなのである。
都会の混雑した路上で幽体離脱するのはむずかしい。そのモーレツな加速力は、いざ鎌倉のときの保険、能あるタカのツメである。軽く踏んでもスッと動く。そこが心地よい。ドライバーは余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)、静かな車内で、オーストリア発の高級オーディオブランド、AKGの23個のスピーカーがつくり出す極上3Dサウンドに包まれ、じつは私は試しておらんのですけれど、好きな音楽を聴きながらドライブしていると最高であるらしい(和製ロックを愛聴する編集部H氏の証言)。
それはおそらくベースのリリックが最高だからだ。ヴイッ!
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資/車両協力=ゼネラルモーターズ・ジャパン)
テスト車のデータ
キャデラック・リリックV
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5005×1985×1640mm
ホイールベース:3085mm
車重:2680kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流誘導電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:260PS(191kW)/1万5500rpm
フロントモーター最大トルク:361N・m(36.8kgf・m)/0-1000rpm
リアモーター最高出力:386PS(284kW)/1万5500rpm
リアモーター最大トルク:543N・m(55.4kgf・m)/0-1000rpm
システム最高出力:646PS(475kW)
システム最大トルク:904N・m(92.2kgf・m)
タイヤ:(前)275/40R22 107V XL/(後)275/40R22 107V XL(コンチネンタル・プレミアムコンタクト6)
一充電走行距離:471km(WLTPモード)
交流電力量消費率:--Wh/km
価格:1890万円/テスト車=1893万0800円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション ETC2.0車載器(3万0800円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:2127km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:346.0km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:4.6km/kWh
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今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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