メルセデス・ベンツS450d 4MATICロング(4WD/9AT)/S580 4MATICロング(4WD/9AT)
今もなお盤石 2026.05.22 試乗記 「メルセデス・ベンツSクラス」のマイナーチェンジモデルが登場。メルセデスの旗艦として、また高級セダンのお手本として世界が注目する存在だけに、進化のレベルが気になるところだ。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。50%以上のコンポーネントを変更
個人的には、現行のメルセデス・ベンツSクラス(W223)は(「ロールス・ロイス・ファントム」を除くと)あらゆる4ドアセダンのなかで、最も完成度の高いモデルだと思っている。BMWの「7シリーズ」も悪くないけれど、Sと7はライバルでありながらも目指す方向が微妙に異なっているように感じる。高級セダンとしての歴史はSクラスのほうが長く、後発の7シリーズはあえてまったく同じ土俵には立たず、片足だけは土俵の外に置いているようなポジションとしているのだろう。
メルセデスとBMWはまるで皆既月食のように数年に一度、モデルチェンジのタイミングが合うときがある。2025年から2026年はまさしくその年に当たり、Sクラスも7シリーズもフェイスリフトを受けた。しかしそれだけにとどまらず、「iX3」と「GLC」のBEV、「i3」と「Cクラス」のBEVと、主要モデルの数々がかぶっている。月食と日食となんとか流星群がまとめて見えるような偶然である。
現行Sクラスは操縦性や動力性能、乗り心地などのバランスが極めてよく整っていて、もうこれ以上触るところはないのではと思っていた。ところが、メルセデスによると50%以上、あるいは2700以上の“コンポーネント”を改良、あるいは新設計したという。コンポーネントという言葉がちょっと微妙だ。これを“部品”に置き換えるとSクラスの総部品数がわずか約5500種類になってしまうわけで、そんなはずはないからだ。
いずれにせよ、いわゆるマイナーチェンジとはいえ、その手の入れようはずいぶん細部にまでおよんでいる。これがフラッグシップのSクラスだからなのか、タイミングを同じくして登場した7シリーズを意識したものなのか、果たしてどちらなのだろうか。
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光り物によるアピアランスの強化
新型Sクラスのエクステリアは、主に前後が刷新されている。フロントグリルは従来型よりも約20%拡大され、ついにその輪郭がイルミネーションで囲まれるようになった。「Sクラスよお前もか」と思わなくもないけれど、さらにボンネット上にそそり立つスリーポインテッドスターが暗夜にさんさんと光り輝くようになっている。「そこまでやるかね」とちょっとだけ引いてしまったくせに、法規の関係で日本仕様には採用されないと聞いたら、図らずとも少し残念に思ってしまった。
従来型と比較して、若干目つきが変わったのは、ヘッドライトが新しいデジタルライトシステムへ変更されたからだ。照射範囲が以前より40%も拡大され、ハイビームでは最大600m先までを照らすという。加えて、照射方向を細かく自在に調整できるため、前走車や対向車のドライバーを幻惑させることもない。また、カーブではカメラデータや地図情報を元に、精密なコーナリングライトとしても威力を発揮するという。
リアは最近のお約束どおり、テールランプがスリーポインテッドスターをモチーフとしたものに変更されている。そこらじゅうがスリーポインテッドスターだらけのデザインを推進してきたのは、チーフデザイナーのゴードン・ワグナーだが、彼は今年になって、メルセデスを去っている。“スリーポインテッドスター祭り”のようなデザインを苦手に感じる人にとっては朗報かもしれないが、おそらく彼は2~3年先くらいまでのデザインに関わったはずなので、もうしばらくはこのデザインコンセプトに付き合わなくてはならない。
V8エンジンはクロスプレーンからフラットプレーンに
Sクラスのインターフェイスも、「MBUXスーパースクリーン」に刷新された。独立した12.3インチのメーターパネルのほか、センターに14.4インチ、助手席に12.3インチのタッチ式ディスプレイが標準で装備される。MB.OSも新型「CLA」から導入された最新版となり、「Googleマップ」も採用されている。また、フロントシートにはシートベルトヒーターも導入された。最大44℃まで温かくなるそうだが、冬場の快適性の向上だけでなく、ダウンジャケットなどの厚手の上着を脱ぐことを促し、万が一の場合にシートベルトが理想的に乗員を保持する目的もあるという。後席にはシートベルトエアバッグも備わり、Sクラスのエアバッグの数は計15個におよぶ。相変わらず、メルセデスの安全に関する探求は止まらない。
新型Sクラスには3つのエンジン(ISG仕様)が用意されていて、「S580」に搭載される3982ccのV8(M177 Evo)、「S450」と「S500」が積む2999ccの直列6気筒(M256 Evo)、そして「S350d」と「S450d」の2989cc直列6気筒ディーゼル(OM656 Evo)である。加えて、M256 Evoにモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドの「S580e/S450e with EQハイブリッドテクノロジー」も選ぶことができる。型式名に付く「Evo」は改良型の意味で、現時点では2028年からの施行が予定されているユーロ7に対応するべく、それぞれのユニットに手が加えられた。
V8は従来のクロスプレーンからフラットプレーンに変更されている。点火タイミングが等間隔になり排気干渉が起きにくく、高回転まで吹け上がるので、フェラーリなどのスポーツカーに採用されるケースが多い。いっぽうで、エンジンの二次振動が大きくなるが、メルセデスはこれを2本のバランサーシャフトで打ち消している。スポーティーなテイストを狙ったわけではなく、「フラットプレーンのほうが効率的にパワーを引き出しやすいから」というのが、選んだ理由とのことだった。
確かな進化が感じられる
最初にキーを預かったのは「S450d 4MATIC」のロングホイールベース版。走りだしてすぐに思わずため息をついた。そもそも現行のW223は快適性に優れていたが、乗り心地や静粛性がさらに向上しているように感じた。プレスリリースには標準装備のエアサスペンションと騒音対策についての言及はなかったけれど、公表せずに細かくチューニングし直すのはメルセデスの常とう手段である。基本的には速度域にかかわらず、フラットな乗り心地に終始する。路面からの大きめの入力に対しても、そのほとんどをサスペンションで処理し、こぼれた振動が身体まで伝わってくることがあっても角が丸められているし、減衰も速いのでまったく不快ではない。あの乗り心地に、まだ煮詰める余地が残っていたのかと感心するばかりである。
直6のディーゼルエンジンは、音や振動からその存在を知ることがさらに難しくなった。おそらく、ディーゼルだと知らされずに乗ったら分からないだろう。ISGのモーターは17kWを発生するやや強力なタイプに置き換えられており、発進時や中間加速でのピックアップが向上している。なお、今回からディーゼルには電気加熱式の触媒コンバーターが新たに採用された。これにより、これまでよりも早い段階で触媒の温度が最適化され、排気効率が向上しているそうだ。
「S580 4MATIC」のロングは、確かにV8が高回転までよく回る。が、AMGのような荒々しさはまったく感じられない。振動もきちんと抑えられていて、Sクラス本来のしっとりした乗り味を維持しながらも、エンジンの気持ちよさが加わっている。試乗車にはセミアクティブサスペンションの「Eアクティブボディーコントロール」が装着されていたが、正直なところ、今回は標準のエアサスのほうがずっと乗り心地はよかった。個体差の可能性もあるので、最終評価はペンディングで。
常々、もしSクラスがダメならメルセデスはもうオシマイと思っているけれど、初めてSクラスと呼ばれたW116の登場から54年もつくり続けてきた経験と実績は、そう簡単に他の追随を許すものではなかった。
(文=渡辺慎太郎/写真=メルセデス・ベンツ/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツS450d 4MATICロング
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5304×1921×1503mm
ホイールベース:3216mm
車重:2100kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:367PS(270kW)/4000rpm
エンジン最大トルク:750N・m(76.4kgf・m)/1200-3200rpm
モーター最高出力:23PS(17kW)
モーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)
タイヤ:(前)255/45R19/(後)255/45R19
燃費:6.9-6.3リッター/100km(約14.5-15.9km/リッター。WLTPモード)
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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メルセデス・ベンツS580 4MATICロング
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5304×1921×1503mm
ホイールベース:3216mm
車重:2270kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:537PS(395kW)/5500-6100rpm
エンジン最大トルク:750N・m(76.4kgf・m)/2500-4500rpm
モーター最高出力:23PS(17kW)
モーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)
タイヤ:(前)255/45R19/(後)255/45R19
燃費:11.3-10.6リッター/100km(約8.8-9.4km/リッター。WLTPモード)
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 慎太郎
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