新型「三菱パジェロ」の走りを支えるテクノロジー 「スーパーセレクト4WD-II」って何だ?
2026.09.21 デイリーコラム普通車とクロカンのいいとこ取り
2026年9月2日、三菱自動車工業は都内のホテルでクロスカントリーSUVの新型「パジェロ」を世界初公開した。国内向けモデルは2019年に生産を終了しているため、日本では7年ぶりの復活となる。10月1日に先行予約の受け付けが始まる予定だ。
5代目にあたる新型パジェロは1tピックアップトラックの現行「トライトン」(日本では2024年2月に発売)をベースに、三菱のフラッグシップモデルにふさわしい仕立てとすべく専用の手が加えられている。シャシーはラダーフレームだ。4WD(四輪駆動)システムは「スーパーセレクト4WD-II(SS4-II)」を受け継いでおり、補強が加えられたラダーフレームや、力強くレスポンスのいい加速を実現するという触れ込みの2.4リッター直4ディーゼルエンジンと同様に専用の開発が行われているはずである。
ところで、「SS4-IIってどんなシステムだっけ?」と頭に疑問符が浮かんだのは筆者だけではあるまい。このシステムのコンセプトを端的に表現すると、「パートタイム式とフルタイム式の長所を合わせ持つ三菱自動車独自の4WD」であり、「本格クロカンの高いトラクション性能と乗用車の優れたハンドリングを両立」するシステムということになる。
「パートタイム式の4WD」は2WD(FR)と4WDをフロアのレバー操作で切り換える。普段は2WDで、必要なときに4WDに切り換えるので“パートタイム”式だ。4WDの際は前後の駆動系が直結(リジッド)になる。2WDに比べて悪路走破性は格段に高まる一方、前後輪の回転差を許容する機構を持たないので、極端に曲がりにくくなる。この現象を「タイトターンブレーキング現象」と呼ぶ。曲がろうとする意思を拒絶するような挙動だ。
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始まりは35年前
パートタイム式4WDのこの弱点を解消するのが、前後輪の回転差を許容するセンターデフを備えるフルタイム4WDであり、アクチュエーターによってフロントデフのフリーホイールクラッチとトランスファーを操作し、100km/h以下という制限はあるものの、レバー操作によって走行中に2WD(前輪フリー、「2H」モード)と4WD(「4H」モード)の切り替えを可能にしたのが「スーパーセレクト4WD(SS4)」である。1991年に発売された2代目パジェロで本格的に採用された。
SS4は50:50の前後駆動力配分比を持つベベルギア式センターデフにビスカスカップリングを用いた差動制限機構を組み合わせていた。さらにロック機構を備えており、停止中のレバー操作でセンターデフロックの直結4WD(「4HLc」モード)にすることが可能。同じく停止時のレバー操作によって副変速機をローギアに切り換えた直結4WD(「4LLc」モード)を選択することも可能だった。
整理すると、SS4は2WD(FR、2H)とセンターデフ付き4WD(4H)を走行中に切り換えることが可能で、センターデフロックの直結4WD(4HLc)とセンターデフロックのローギア直結4WD(4LLc)も選択が可能なシステムということになる。4H選択時はセンターデフ付きなので曲がりにくさが顔を出すことはないし、直結4WD選択時は高いトラクション性能が実感できる。このように、パートタイム式とフルタイム式の長所を合わせ持つのがSS4の最大の特徴。わざわざ停止する必要がなく、走行中に2Hと4Hを切り換えられるのも画期的だった。
「2H」は乾燥舗装路で経済的な走りをしたいときに選択することを想定。天候の急変などによる路面状況の変化にも余裕で対応できるため、三菱自動車は「4H」を基本ポジションに位置づけている。「4HLc」は悪路、砂地、深い雪道など、条件の悪い路面状態での使用を想定。「4LLc」は岩場や泥濘路、万が一のスタック時での使用を想定したモードだ。
2つの技術でさらなる高みへ
パジェロがSS4の進化版であるSS4-IIを初めて採用したのは、1999年の3代目パジェロである。現行トライトンのSS4-IIとSS4を比較すると、メカニズム面ではセンターデフがビスカスカップリング付きベベルギアではなく(33:67のプラネタリーギア式を経て)トルセンLSDになっているのが相違点。これにより50:50だった前後駆動力配分は40:60の不等配分かつリア寄りになっており、フルタイム4WDでの走行時もFR的な動きになるような設定としている。
また、操作力軽減のためアクチュエーターの操作を電子制御化したのも相違点。各駆動モードの切り替えは当初レバー式を継承していたが、最新式ではダイヤル式セレクターで行えるようになっており、よりイージーに切り替えが可能。4LLc以外のモードへの切り換えは、100km/h以下であれば走行中に可能だ。
現行トライトンでは三菱伝統のSS4-IIにブレーキ制御式のアクティブヨーコントロールが加えられた。コーナーを曲がる際にフロント内輪に軽くブレーキをかけることでヨーを発生させ、意のままの曲がりやすさを実現する仕組み。トライトンでは前後輪の駆動力配分を制御していないので、三菱独自の車両運動統合制御システムである「スーパーオールホイールコントロール(S-AWC)」を適用しているとはうたっていない。ただしS-AWCに近い運動性能は出せていると自負している。
一方、新型パジェロは「新たに車両運動統合制御システムのS-AWCを採用し、新型パジェロにふさわしいオールラウンドでの高次元な走りを実現」「オフロードでは頼もしい走破性を発揮しながら、オンロードでは運転しやすく上質な乗り心地を提供。どこへでも安心して行ける走破性と信頼性を実現」とうたっている。SS4-IIはどのように進化し、走りに反映されているのか。技術の詳細な内容が公開される日と実車の走りを確かめる日が待ち遠しい。
(文=世良耕太/写真=三菱自動車/編集=関 顕也)

世良 耕太
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