新型「パジェロ」も該当 タイ生産にはどんなメリットがあるのか?
2026.09.16 デイリーコラム今やより取り見取りのタイ生産車
トヨタの「ハイラックス」や「ランドクルーザー“FJ”」をはじめ、三菱は「トライトン」、ホンダは「アコード」と「CR-V」、それからマツダは「CX-3」。過去のモデルだと日産の「マーチ」とか先代「キックス」、ホンダの「フィットアリア」や三菱の「ミラージュ」(有名なエリマキトカゲのCMのクルマじゃなくて2012年発売の6代目)もそうだったっけ。
それら車種の共通点がすぐに理解できた人は、きっとかなりの事情通もしくは記憶力自慢のクルマ好きのはず。いずれも「タイで生産し日本へ輸入されたクルマ」です。
何を隠そう、話題の新型「三菱パジェロ」もタイで生産され、日本へ輸入される予定。いまや日本市場においても、タイ生産車は決して特別な存在ではないのだ。でも、どうしてタイ生産なの?
というわけで今回のテーマは「タイでクルマをつくるメリットは?」である。
東南アジアでクルマをつくるメリットとしてまず思い浮かぶのは「安くつくれる」ということかもしれない。確かにマーチやミラージュといった格安車をタイ生産とした理由のひとつはそこにあった。
しかし、今はそうとは言い切れない。日本の物価上昇が停滞していたのを横目に、タイの物価はグングン上昇。すなわち人件費がアップ。為替レートも「円安バーツ高」となり、コスト面でのメリットはほぼなくなってしまった。
むしろ生産に欠かせないサプライヤーからの納入部品のなかに「国外からの輸入」で高くつくものがあったり、「日本よりもつくる数が少ない」「生産環境の違い」などの理由から日本よりコストがかかったりする。結果として「つくるだけならコストは日本とそう変わらないどころか日本よりもかかる」ということもあるのだ。生産効率も日本の工場のほうが高かったりするし。
なぜタイを目指すのか
しかし、タイでクルマをつくる理由はある。言い方を変えれば、日本以外でつくる場合にタイを選ぶ理由だ。
まず、東南アジアの他の国に比べて自動車生産の歴史が長いため、環境が整っている。トヨタがタイで現地生産を始めたのは1964年というから、もう60年以上も前のこと。日産はもっと早くて1962年からとか。そのぶんほかの東南アジア諸国に比べてサプライヤーなどの環境が整っているというわけだ。
またタイは東南アジアのなかでは生産規模が大きく、コストも抑えやすい。そのうえ、自動車メーカーにとってタイは、ほかの国より自動車生産をしやすいワケがある。政治や経済が比較的安定しているうえに、インフラや港の整備が進んでいて、労働者の質も高く、日本との関係が良好という好条件がそろっているのだ。
そのうえでタイは、ASEAN内へ輸出する際に関税がかからないのも大きなメリット。さらに欧州や中東、インド、オーストラリアなどへの輸出も、日本からよりも移動距離が少なくて済むので好都合。自動車メーカーが生産拠点を置くのに、いろいろと都合がいいのだ。
タイでつくるから購入できる
「とはいえ日本向けは別に日本でつくればいいじゃないか」と思うかもしれないけれど、先に挙げた車種のほとんどは日本向けだけを国内生産するのでは割が合わないモデルだ。でも輸出拠点として活用するなら日本よりもタイでまとめてつくったほうがメーカーとしては効率的。そんな理由があってタイで生産しつつ、日本へ輸入しているということになる。
そうなると、メーカー側にうまみはあるけれど、日本のユーザーにはメリットらしきものはない……と感じるかもしれない。しかし、タイから完成車を輸入することで、日本で購入できる車種の選択肢が増えるのは一人のクルマ好き消費者としてはうれしいことだ。「日本のブランドなのに国外生産の輸入車なんてダメ」となったら、ハイラックスもトライトンも、新型パジェロだって日本で発売されることはないだろう。
ところで気になるクオリティーに関しては、製造ラインの設備が新しく、日本の自動車メーカーがしっかり品質管理をしているなら問題なし。日本でつくるのと変わらない。「アコードやCR-Vの品質が悪い」なんて聞いたことはないはず。とあるメーカー(ホンダではない)によると、日本向けは特に厳しく完成検査をやっているとのことだ。
ただ、そんなタイにおいて昨今は、日本の自動車メーカーが工場を閉じる動きもある。それはまた別の話という事で。
(文=工藤貴宏/写真=三菱自動車、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業/編集=藤沢 勝)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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