メルセデス・ベンツC250 CGI ブルーエフィシェンシー アバンギャルド(FR/5AT)【試乗記】
いまいちばんのメルセデス 2010.02.23 試乗記 メルセデス・ベンツC250 CGI ブルーエフィシェンシー アバンギャルド(FR/5AT)……578万9000円
“エコ”と“ファン”は両立するか? メルセデスの「青バッジ」モデルに下野康史が試乗した。
ほんとうのエコとは?
エコカー減税対象車の「Eクラス」と同じエンジンを搭載するのが、「C250 CGI アバンギャルド」(567万円)である。同じエンジンを持ち、なおかつ車重は「E250 CGI アバンギャルド」より230kgも軽く、価格だって131万円安い。にもかかわらず、「Cクラス」のほうは減税の対象になっていない。どうしたことかと思うが、重い車重区分になるにつれて、排ガスクリーン度などの規制値がゆるくなるという現行の制度ではこういうことが起きてしまう。絶対的なお値段を考えると、減税が決定的なインセンティブになるクルマではないだろうが、CクラスよりEクラスのほうが“エコ”とは、まったくナットクのいかない話である。
だが、新しいパワーユニットを搭載したCクラスは、実にナットクのいくクルマである。新型エンジンは、直噴の1.8リッター4気筒ターボ。ポート噴射の2.5リッターV6だったこれまでの「C250」より最大トルクを26%増強し、一方、燃費は約20%低減した高性能グリーンガソリンエンジンである。
その直噴1.8リッターターボは、国産高級車のように、かかっていることに気づかず、アイドリングでもう一度スターターを回してしまうほど無音ではない。走り出すと、ウィーンという特徴的な金属音が聞こえることもある。しかしいずれも、とくに気になるレベルではない。ターボのヒューヒュー音はまったくしない。
気持ちがいい
走り始めて、最初、オヤッと思ったのは、アクセルの踏み始めに不感帯を感じることがままある点だ。とくに緩急の差が激しい街なかだと、ペダルの鈍さを感じることがある。右足とエンジンのあいだはバイワイヤの電子スロットルでむすばれている。排ガスや燃費のために、ちょっと踏み込んだくらいでは性急に燃料が噴かないようなプログラムにしてあるのだろう。このほどエコカー減税をゲットした「フォルクスワーゲン・ゴルフTSIコンフォートライン」に乗っても、同じようなことを感じた。
だが、そうしたわずかな違和感も、オープンロードに出て、前のめりにドライビングし始めると吹き飛ぶ。このクルマは現行Cクラスのベストモデルと呼びたい、実に気持ちのいい快速セダンである。
5段ATと組み合わされるエンジンは、204psという充分以上のパワーをもつ。31.6kgmの最大トルクは「C300」の3リッターV6(30.6kgm)もしのぐ。などと言えば、余裕の大トルクで走るアンコ型エンジンを想像するかもしれないが、まったく違う。回すにつれてトルク感は二次曲線的に高まる。そのカーブに乗って、1550kgのボディはグングン加速する。“伸び”が気持ちいいエンジンだ。
ただし、V6ほど静かではなく、5000rpm以上の高回転域ではATセレクターに載せた掌に微かなバイブレーションが伝わりもする。でも、それだってむしろエンジンらしくてイイと思った。とにかくこの直噴4気筒ターボ、メルセデスのエンジンにしてはすごく生き生きしている。
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能ある鷹
さらに、足まわりの出来も特筆ものだ。しなやかで、逞しい、久々に“メルセデスライド”を感じさせるフトコロの深いサスペンションである。乗り心地はけっしてドテッとしていない。むしろ軽快な乗り味だ。それでいながら、コーナリングで大入力を与えれば、新しいサスペンションが“出てくる”みたいによく粘る。
試乗車はシルバーというボディカラーのせいもあって、あまりパッとしないサラリーマンのような出で立ちに見えたが、いざとなれば、足まわりも、そしてエンジンもスーパーマンである。能ある鷹は爪を隠すというキャラクターこそ、本来、メルセデスのいちばんおいしいところである。
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約330kmを走って、満タン法による実測燃費はリッター9.9kmだった。そのとき、車載コンピュータはリッター10.0kmを表示していた。以前、試乗して同じくらいの距離を走ったときもこれとほぼ同じだった。1.8リッターターボとしては、すごく燃費のいいクルマというわけではないし、フォルクスワーゲンの1.4リッターTSIエンジンほど高速燃費の伸びシロは大きくないが、速さと快適さを思えば満足のいくものだと思う。
どうでもいいことだが、たとえ地味な色のCクラスでも、このフロントグリルが放つ追い越し車線での神通力はさすがだとあらためて思った。個人的にいまいちばん買いたくなるメルセデスである。
(文=下野康史/写真=郡大二郎)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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