ルノー・トゥインゴ ルノースポール(FF/5MT)【試乗記】
ホットハッチの原点 2009.11.02 試乗記 ルノー・トゥインゴ ルノースポール(FF/5MT)……250.0万円
「ルーテシア」と「トゥインゴ」、2台のルノースポールを乗り比べたリポーターは、ボディサイズだけじゃない大きな違いを実感した。
「トゥインゴRS」は若者向け!?
ルノースポール(RS)の新型車が2台、まとめて上陸した。ここで紹介する「トゥインゴRS」と、ひと足先に試乗記を公開した「ルーテシアRS」だ。
たまたま日本での発表が同時になっただけで、本国デビューはタイムラグがあったのだが、並べて出されるとどうしても比べてみたくなるわけで、2009年7月にフランスで乗り比べたのに続き、今回も2台まとめての試乗となった。
トゥインゴRSとルーテシアRSとでは、ベースモデルがそうであるように、車格がワンランク違う。サイズはトゥインゴRSのほうがコンパクトで、排気量はルーテシアの2リッターに対して1.6リッターになり、価格は約50万円安い。でも内容を見ると、「廉価版RS」でないことがわかる。
たとえばエンジンは、カングーなどにも積まれる1.6リッター自然吸気だが、専用チューンを施すことで134ps/6750rpm、16.3kgm/4400rpmと、高回転高出力型になった。サスペンションは10mmローダウンされたほか、トレッドを前後とも60mm拡大していて、これをカバーすべくオーバーフェンダーを装着した結果、全幅は35mm広い1690mmになっている。かなり手の込んだ作りなのだ。
さらにフランスのプレスリリースによると、トゥインゴRSは「初めてホットハッチに乗る若いユーザーのためのモデル」と記されている。現地でプロダクトマネージャーに話を聞いたときも、「トゥインゴRSは若者向け、ルーテシアRSはおとな向け」という言葉が返ってきた。つまり2台はボディサイズや排気量以上に、想定年齢層が違うのだという。じゃあアラフォー越えの自分には似合わない存在なのか? と思いつつ乗り込んだら、そうではなかった。
運動性能優先のシャシーカップを採用
試乗車のボディカラーは赤。おかげでガンメタに塗られたフォグランプまわりやドアミラー、リアスポイラーが引き立つ。もとの姿がキュートだからこそ、こうしたアクセントやオーバーフェンダーなどの武装が目立つ。ほどほどの質感を逆手に取り、シートベルトやステッチをオレンジに染めて「若さ」としたキャビンを含め、ルノースポールはあいかわらず見せかた上手だ。
フロントシートはRS専用で、腰まわりをカチッとホールドしつつ、座面はGTよりふっかりしている。フランスではルーテシアRSと乗り換えながら5日で1500kmを走ったが、まったく疲れを感じなかったスグレモノだ。左右が別々にスライドとフォールディングできるリアシートは他のトゥインゴと同じ。ホットハッチらしからぬ高度なユーティリティも、現地取材時には重宝した。
いかにRSとはいえそこは21世紀のクルマ。エンジンは2000rpm以下でも使いものになる。ただし本気を出すのは3000rpmから上。4000rpmで音が変わり、5000rpmで加速が勢いづき、と回転を上げるにつれ世界が変わっていく。だからついついまわしてしまう。しかもその音はマフラーで意図的に作られたものではない。吸気音や回転音がメインの、ちょっとノスタルジックな調べだ。
車重は1120kgしかないものの、力もほどほどだから、ルーテシアRSについて走ろうとすると、的確なギアチェンジとフルスロットルが不可欠になる。でもそうやって全力を振り絞って走れることが心地いい。常人の手に負えない高性能車があふれる現在だからこそ、この加速フィールは貴重だ。
そのわりに乗り心地はハードで、街なかだけでなく高速道路でも段差などのショックを正直に伝えがちだが、これには理由がある。日本仕様のトゥインゴRSは、本国ではシャシースポールとシャシーカップの2種類あるチューニングのうち、運動性能優先のシャシーカップを装着しているからだ。しかし走り慣れた箱根の山道でペースを上げたら、そのチョイスが的確に思えてきた。
「ルーテシアRS」との違い
ステアリングはかなりクイックな反応で、ノーズの重さも感じない。まるでステップを踏むようにコーナーをこなしていける。小型軽量ボディを生かしきったフットワークの持ち主なのだ。ホットハッチとしてはおっとりした動きのルーテシアRSとの違いはあまりに明確だった。
もっともその後の動きはルノーそのもので、さっきまではハードに思えた足がしっとりストロークし、確実な接地感を生み出してくれる。とくにリアの粘りが心強く、走り始めて数分でペースを上げることができる。
それでいてアクセルワークによる向きの変えやすさはルーテシアRSより上。グリップレベルの違いといえばそれまでだけど、この特性はビギナーのドライビングスキル向上に貢献するはずだ。永遠のビギナーである僕も、初めて愛車を手にした頃を思い出しながら、コーナーごとに手足をいろいろ動かして、クルマをコントロールするよろこびを満喫できた。
ルーテシアRSがホットハッチの頂点であるなら、トゥインゴRSはホットハッチの原点のようなクルマだ。使いきれるパワー、アコースティックなサウンド、ちょっとハードな乗り心地、手の内で遊べるハンドリングなど、すべてが原初的な魅力にあふれている。ビギナー向けにローコストで仕立てるというコンセプトが、結果的には懐かしい味を作り出していた。
だからトゥインゴRSは若者だけでなく、オジサンにもオススメできる。クルマから若さをもらい、昔に戻ったような気分にさせてくれるからだ。
(文=森口将之/写真=郡大二郎)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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