トヨタ・プリウス プロトタイプ(FF)【試乗速報】
王者は惑わず 2009.03.26 試乗記 トヨタ・プリウス プロトタイプ(FF)今年世に出るクルマの中で、もっとも注目を集めるモデル、新型「プリウス」。初代のデビューから12年、3代目となったプリウスはどう進化したのか。発売直前! プロトタイプに試乗した。
2009年の日本車を象徴する1台
2009年がハイブリッドカーの年であることを実感した。「ホンダ・インサイト」の試乗会のわずか20日後に、トヨタが“5月に発売予定”としている新型「プリウス」のプロトタイプに乗ったのだから。しかもこの間に、インサイトは発売からたった1カ月で1万8000台の受注を達成。1週間後には新型プリウスの最低価格が205万円! になるという情報が伝わってきた。
ほかにもニューモデルは登場しているのに、いまの自動車業界はこの2台に関連したニュースばかり飛び交っている。WBCの日韓戦を思わせる状況だ。どちらのクルマが勝つかはさておき、新型プリウスが今年の日本車を象徴する1台になるのは間違いない。
後席の居住性アップ
そのボディは、写真から想像するほど大きくはない。現行型より全長で15mm、全幅で20mmサイズアップしたにすぎず、全高やホイールベースは共通だ。サイドパネルに抑揚をつけたので大きく見えるのだろう。
床下の整流にまでこだわった空力対策のおかげで、Cd値は世界最高レベルの0.25を記録するという。
ルーフの頂点が前席頭上からキャビン中央に移動したことも現行型との違いだ。その結果後席は、身長170cmの自分なら頭上も余裕たっぷりになった。前席のシートバックを30mm薄くした効果もあって、ひざの前には約20cmもの空間が残る。座面や背もたれの角度も適切だった。2リッター級セダンでトップクラスの居住性といえる。
薄くなった前席の座り心地も、限られた試乗時間内では不満なし。曲線を多用したインパネは、葉脈をモチーフにした表面処理が新鮮だ。一方、高床式センターコンソールを新設し、シフトレバーをインパネからここに移したレイアウトは、現行型より独創性が薄れた感じがする。
乗り心地にしなやかさを
新型のハイブリッドシステムは、アトキンソンサイクルのエンジンを1.5リッターから1.8リッターに拡大し、モーターは「エスティマハイブリッド」や「ハリアーハイブリッド」のようにリダクションギアをかませ、補機では電動ウォーターポンプや、排気熱再循環システムといった新技術も入れている。でも基本構成は現行型と共通なので、正常進化形といえるかもしれない。
スターターボタンを押し、Dレンジを選び、渋いタッチのアクセルを軽く踏んで走り始める。しばらくモーターだけで速度を上げていくのは従来どおりだが、静粛性は確実に上だ。さらに右足を踏み込み、エンジンが始動してからの加速は、速さというより余裕を感じる。排気量拡大に合わせてギア比を高めたらしく、それなりのダッシュを仕掛けてもエンジンは低回転で唸っているだけだ。
乗り心地はやや突っ張り感があって、小刻みな揺れが気になることもあった。アルミを多用した軽量ボディの影響かもしれないけれど、市販時にはもう少ししなやかであってほしい。
ホイール/タイヤは15インチと17インチがあり、後者のほうが落ち着いた感触だった。同じ17インチで試したミニサーキットでは、アンダーステアは強いものの挙動変化はうまく抑えられており、剛性感あふれるボディやリニアな効き味のブレーキも好印象。安心してペースアップできた。
驚きの燃費、バツグンの付加価値
そういえば新型は、EVモード以外にエコ/パワーモードも用意されたが、ノーマルと比べて運転フィーリングの違いはそんなに明確ではなかった。新搭載のエコドライブモニターは、一部を除き単色のバーグラフ表示。視認性は文句なしだが、メーターが3色に変化するインサイトのほうが新鮮で高級だと感じるユーザーもいるだろう。
でもそんなことは、燃費を知ればどうでもよくなるはずだ。一時停止も上り坂もある場内路をフツーのペースで走って、車載の燃費計でリッター25km。エコランに挑戦したら、なんとリッター57km(!!)をマークしたのだから。
誕生して約10年のハイブリッドカーはコストダウンの可能性を多く残しているだろうし、シャシーもそんなに凝ってはいないし、ベースモデルはソーラーベンチレーションがオプションになるはずだから、205万円という価格はそんなに驚きではない。でもトヨタは、リッター50km以上という燃費を付加価値だと考えないのだろうか。価格競争はユーザーにとってはありがたいことだけれど、度を超して、液晶テレビみたいなことになってほしくはない。
(文=森口将之/写真=トヨタ自動車)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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