シトロエンC4ピカソ 1.6Tエクスクルーシブ(FF/4AT)【試乗記】
テンロクでもこれなら十分 2009.03.06 試乗記 シトロエンC4ピカソ 1.6Tエクスクルーシブ(FF/4AT)……377.0万円
7人乗りミニバン「C4ピカソ」のエンジンがリニューアルした。新エンジンは、従来より排気量が400cc小さい1.6リッターターボユニット。さっそくその走りを試した。
ミニバンで一番快適
今の日本で買える中で、おそらく最も快適なミニバンが「シトロエンC4ピカソ」だろう。まあ快適の解釈にもいろいろあって、旅客機のファーストクラスみたいな着座感を豪華絢爛に演出したのが好きなら「トヨタ・アルファード」や「ヴェルファイア」が一番だろうし、ガツンと明るく割り切った道具感こそミニバンの快適さだと思うなら「クライスラー・グランドボイジャー」を選びたくなるが、クルマ全体のまとまりで見ればC4ピカソが光る。
そのC4ピカソの車種構成が少し変わった。これまでは「2.0」と、少し豪華な「2.0エクスクルーシブ」の2車種だったが、今度は「1.6Tエクスクルーシブ」に一本化される。名称からわかる通り、違いはエンジンにある。2.0が自然吸気4気筒1997ccのRFJ型なのに対し、新シリーズは4気筒1598cc。排気量が縮小されたぶんランクが下がったように見えそうだが、“T”が示すように今度はターボが付くから、モータースポーツ界の常識を当てはめて1.7の係数をかけるとNAの2717ccに相当する。
したがって最高出力は2.0の143ps/6000rpmにくらべて140ps/5800rpmとほぼ同程度だが、最大トルクは20.8kgmから24.5kgmへと約18%も引き上げられ、それを生む回転域も1400〜3500rpm と全体に低めで非常に幅広い(2.0は4000rpm)。つまりミニバンとして最も大切な常用域でのパンチが格段に強化された。
乗り心地の秘訣は足まわりにアリ
その効果は、乗った瞬間すぐにわかる。普通に走ってググッと力強いのだ。従来の2.0がパワー不足だったわけではないが、どうもシトロエンは社風としてエンジンに冷淡というか、「クルマはパッケージ全体で評価されるべきで、エンジンは必要な力さえ出してくれればいい」程度に考えていたように見える。それがシトロエン・ファンの心の拠り所でもあり、「パワーにこだわるなんて俗物さ」みたいな空気もあった。
だから、そこそこのエンジン性能で丁寧に各ギアで引っ張るのがシトロエンらしい走り方とされてきた。もちろん新ターボエンジンとの組み合わせでも、その味わいの基本は忠実に守られているが、そのうえで普通に走ってグイッとくるのが嬉しい。ダッシュの右上に、往年のDSシリーズを模して生える小さなシフトレバーをDレンジに入れたままでも、下のトルクが増えたぶん、自動的なシフトアップのタイミングが少しだけ早くなった。
こういう余裕はミニバンとして重要なポイント。そこでエンジン以外について報告しておくと、外観もインテリアも基本的に変更はない。例によって抜群なのは乗り心地。日本でもとみに乗用車化が進んだミニバンだが、この点ではフランス、特にシトロエンは上手すぎる。何の変哲もない足まわりなのに、そこそこ攻めても良し(切り込んだ瞬間すぐフロントの接地感が立ち上がる)、市街地の荒れた舗装面でも良し、とにかく欠点を指摘できない。凹凸を逞しく踏みつけるでもなく、フワフワいなすでもなく、とても素直に伸縮しつつ、確実に路面を捉えてくれる。常にフラットな姿勢を保つのは言うまでもない。
悩ましいトランスミッションの選択
言うまでもないのはシートの快適さも同じで、スペース面では応急用の、実質的に5+2の3列目でさえ、座り心地は本格的なセダンに匹敵する。ましてやフロントと2列目など、東京から青森までノンストップで駆け抜けたとしても、降りた途端どこも疲れていないのに気付くはずだ。この3列目は、普段は畳んでおいて5人乗りのワゴンとして使うことが多いだろうが、床から天井まで高く(というより、テールゲートの敷居が地面から55cmと非常に低い)、途方もない積載能力を持つ。2列目まで畳めば車内泊も可能なほど奥行きも深い。
さらに特筆したいのは、実際の数字だけでなく心理的な広々感。今回の変更でグラスパッケージが標準装備になり、ほとんど天井すべてが透明になったので、3列目を除けば全員に平等に明るい外光が降り注ぐ。ウィンドスクリーンもドライバーの頭上近くまで延び(高いぞ、このガラス)、下手なカブリオレより空が見える。二重に出てくるサンバイザーもおもしろポイントの一つだ。
……と、各部の魅力を再確認したところで、ふたたびエンジンに話を戻すと、実はこの1.6リッターターボには、前述の140ps仕様(5FT型)のほか、5FX型と名乗る150ps仕様もある(トルクは同じ)。これだけならたいした違いではないが、組み合わされる変速機が、140ps仕様は従来からの4段AT、150ps仕様は2ペダル6段シーケンシャルMT(EGS) と大きく異なる。今回とりあえずテストしたのは4段ATだったが、同じ377万円であることを考えると、どちらを選ぶか、かなり悩むことになりそうだ。
ジックリのんびり走りやすい4段ATか、シャカシャカ活発に行けそうな6段か、まあ、どちらでもC4ピカソの良さは変わらないはずだが。
(文=熊倉重春/写真=高橋信宏)

熊倉 重春
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