シトロエンC4ピカソ(FF/6AT)/グランドC4ピカソ(FF/6AT)
デザインは個性的に、走りは国際的に 2014.12.23 試乗記 フルモデルチェンジしたシトロエンのミニバン「C4ピカソ」が、いよいよわが国に上陸。箱根で試乗した。7人乗りの「グランドC4ピカソ」に加え、5人乗りの「C4ピカソ」もラインナップに加えた新型は、ヒットの予感に満ちている。2つのボディーラインナップに
4年前に『webCG』に書いた、いまは旧型になった「シトロエンC4ピカソ」の試乗記の中に、「日本でいちばん売れているシトロエン」という記述がある。でもピカソが売れているのはわが国だけではなかったようだ。
C4ピカソの先代にあたる1999年末登場の「クサラピカソ」、正規輸入されていない「C3ピカソ」を含めた全世界の累計販売台数は、2013年春時点で300万台に達しているからだ。日本ほどはミニバンが売れない国々がメインでこの数字、かなりの人気と見ていいだろう。
ヒット商品の次期型には潤沢な開発予算が投じられることが多い。中には「次も売れるだろう」と手抜きするプロダクトもあるけれど、それらはかなりの確率で売れなくなることを、実際に目にしてきている。ユーザーはそんなに甘くはないということだ。
本国と同じように、5シーターと7シーターの2つのボディーが販売されるようになり、呼び名も現地と同じで5シーターがC4ピカソ、7シーターがグランドC4ピカソとなった新型を見て、多くの人は「お金が掛かっているなあ」と思うだろう。
僕もそのひとり。ほぼ同じサイズの国産ミニバンとは段違いの仕立てであると、ひと目で分かる。なかでも驚かされたのは、単に長い短いの違いではなく、5シーターと7シーターで異なるデザインを与えたことだ。
正規輸入されなかった先代の5シーターも、リアオーバーハングを縮め、ゲートの傾斜を強め、コンビランプを7シーターと変えただけでなく、ウエストラインに段を付けたり、凝った差別化をしていたが、新型はそれ以上だった。
デザインの違いは当然
そもそもホイールベースが60mm違うし、フロントグリルやバンパー、ドアの前の三角窓、サイドパネルのキャラクターラインも異なっている。極めつけはサイドウィンドウを取り巻くモールだ。
5シーターは前後ドア窓周辺をぐるっとシルバーの帯で取り巻くことで、ハッチバックらしい軽快感を強調。対する7シーターはAピラーからルーフレール、Dピラーまでをグレーのモールで連続させ、モノスペースならではのキャビンの広さを予感させる。
いざという時のことを考えれば、イスの数は多いほど良いというのが、わが国のミニバンユーザーに多いマインドだ。しかし合理主義の根付いた欧州はそうではなく、年に1~2度しか3列目を使わないなら5シーターで十分という考え方が主流。つまり2つのボディーのユーザー層は異なる。それを考えれば作り分けは当然なのである。
キャビンはシートの数を除けば共通。デジタル式センターメーター、人数分が独立したシートなどの特徴は先代を受け継ぐ。ロフトを思わせるガラス張りの空間は相変わらず明るくて、会話が弾みそうだ。
進化を果たした部分もある。最も目立つのはインパネ中央で、大きなディスプレイが上下に備わった。上はメーターやバックカメラなどを表示し、下はナビやオーディオをはじめとする装備をコントロールする。左右に分かれていてスイッチの操作感がイマイチとユーザーに言われていたオートエアコンもここに集約された。
トランスミッションは万人向けに
シート配列は旧型と共通だが、プラットフォームを新型「プジョー308」も使う新開発の「EMP2」に切り替え、全長をほぼ同じままホイールベースを延長した効果で、2/3列目の足元は広くなった。2列目はスライドとリクライニングが可能で、3列目を含めてワンタッチでフラットにできるなど、アレンジは国産ミニバンに負けていない。前席のリクライニングを運転席はダイヤル、助手席はレバー調節と使い分けるあたりは、日本車を超えている。
座り心地は全般的に硬めになった。オプションのレザーシートでその傾向が強い。それでもレザーを選びたくなるのは、ブラック&シャンパンという華麗なカラーコーディネートのおかげ。国産ミニバンには見られない、粋な配色である。
前席が左右非対称であることも特徴。グラフィックだけでなく形状も異なり、座ると少しだけ内側を向く。メーターが中央にあるし、ファミリーカーなので後方を振り向きやすいようにという配慮だとか。さすがは少子化対策が成功した国の生まれだ。
エンジンは先代から受け継がれた1.6リッター直列4気筒ターボだが、パワーは9psアップ。6段のトランスミッションはシングルクラッチ方式2ペダルMTのEGSからトルコン式ATにスイッチした。
パワーアップに加え、7シーターで50kg軽くなったボディーのおかげもあって、少し活発になったと感じる。それ以上にありがたいのはトルコンATで、格段に滑らかな加速になった。万人向けになったと言い換えてもいいだろう。でもシトロエンらしさを感じる部分はしっかり残っている。
新設計プラットフォームの威力を実感
ひとつはステアリングの向こうから斜めに生えるセレクターレバー。クラシック「DS」を思わせるデザインだけではない。ステアリングから手を離さずに扱え、DレンジとRレンジを交互に使う縦列駐車で重宝することも、昔のDSと同じだ。
もうひとつはセンターメーター。3種類あるグラフィックのひとつを選ぶと、デジタル数字の下でボビンメーターを思わせる目盛りが動く。「CX」と「BX」でボビンメーターと付き合った僕は、ここだけでいっぺんに好感度が上がってしまった。
乗り心地は前後とも硬めになった。リアのエアスプリングが廃され、前後とも金属バネになったことが関係しているのだろう。でも荒れた路面を強行突破すると、新設計プラットフォームの屈強な作りのおかげで、サスペンションが自在に動いてショックを吸収してくれることが分かる。しなやかさは失っていない。
ハンドリングは、従来型では前後のバネの特性が違うので、慣れが必要とされた。それに比べると新型はバランスが良くなり、ロールも抑えられて、自然に曲がっていけるようになった。ここでも新設計プラットフォームの威力を実感。全長やホイールベースが短い5シーターは、よりキビキビした身のこなしをものにしていた。
デザインは個性的に、走りは国際的に。これが最近のクルマ作りのトレンドだと思っている。新型C4ピカソもこの路線をなぞってきた。たぶん日本でも再びヒットするだろう。5ナンバー2リッターの国産ミニバンと比べれば価格は高めだけれど、乗る人全員をどれだけ幸せにできるか、という点ではC4ピカソの圧勝だからだ。
(文=森口将之/写真=郡大二郎)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
シトロエンC4ピカソ エクスクルーシブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4430×1825×1630mm
ホイールベース:2780mm
車重:1480kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:165ps(121kW)/6000rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1400-3500rpm
タイヤ:(前)205/60R16 92H/(前)205/60R16 92H(ミシュラン・エナジーセイバー)
燃費:15.1km/リッター(JC08モード)
価格:357万円/テスト車=361万3200円
オプション装備:ボディーカラー<ルージュ ルビ>(4万3200円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1011km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
シトロエン・グランドC4ピカソ エクスクルーシブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1825×1670mm
ホイールベース:2840mm
車重:1550kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:165ps(121kW)/6000rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1400-3500rpm
タイヤ:(前)205/55R17 95V/(後)205/55R17 95V(ミシュラン・プライマシーHP)
燃費:14.6km/リッター(JC08モード)
価格:378万円/テスト車=422万3200円
オプション装備:ボディーカラー<ブラン バンキーズ>(4万3200円)/ツートンナッパレザーシート(40万円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:948km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
NEW
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。



















