クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

シトロエン・グランドC4ピカソ フィールBlueHDi(FF/6AT)

期待に届かず 2017.03.20 試乗記 下野 康史 シトロエンの7人乗りミニバン「グランドC4ピカソ」に、“シリーズ最大のハイライト”とアピールされるディーゼルエンジン搭載モデルが登場。自慢の走行性能や、このクルマならではの使い勝手をじっくりとチェックした。

満を持してのクリーンディーゼル

シトロエンのマルチパーパスワゴン「C4ピカソ」に、クリーンディーゼルが登場した。尿素水溶液を要する触媒装置と、DPF(微粒子フィルター)などの後処理デバイスで日欧の厳しい排ガス規制をクリアした2リッター4気筒ディーゼルターボ。日本でもすでにプジョー/シトロエン/DSに導入され、人気を集めている2リッタークリーンディーゼルである。

新エンジンは、5人乗りのC4ピカソと、ロングホイールベースの3列シート7人乗りグランドC4ピカソの両方に用意される。ちなみに、ディーゼルは既存のガソリン1.6リッター4気筒ターボより25万円高い。

今回、試乗したのは、ディーゼルモデルの呼び水としてグランドC4ピカソのみに限定200台で用意された「フィールBlueHDi」(372万円)。本来、オプションの電動パノラミックサンルーフを標準装備する一方、レーンキープアシストや、アクティブクルーズコントロールのアクティブ機能を省くなどして、レギュラーモデルよりも8万円お安くしている。

C4ピカソシリーズは、ヨーロッパでは相変わらず“C4”と名のつくシトロエンのトップセラーである。現行の2代目になってから4年近くたつのに、2016年も欧州全体で年間10万台以上売れた。営業車みたいに地味なハッチバック「C4」の2倍以上である。次に売れているのが、日本には限定200台しか入ってこなかった「C4カクタス」。いまのC4シリーズは派生モデルでもっている、という感じだ。

「グランドC4ピカソ」は、3列シートを持つシトロエンのミニバン。リアドアはスライドドアではなく、オーソドックスな横開き式になっている。
「グランドC4ピカソ」は、3列シートを持つシトロエンのミニバン。リアドアはスライドドアではなく、オーソドックスな横開き式になっている。拡大
シートはツートンカラー(ブラック×グレー)のファブリック仕立てとなる。
シートはツートンカラー(ブラック×グレー)のファブリック仕立てとなる。拡大
2列目シートの定員は3人で、個別に前後スライドとリクライニングが可能。運転席および助手席の背もたれの背後に取り付けられた折りたたみ式テーブルが利用できる。
2列目シートの定員は3人で、個別に前後スライドとリクライニングが可能。運転席および助手席の背もたれの背後に取り付けられた折りたたみ式テーブルが利用できる。拡大
天井は大きなガラスルーフになっている。電動開閉式のサンブラインドも備わる。
天井は大きなガラスルーフになっている。電動開閉式のサンブラインドも備わる。拡大
シトロエン C4ピカソ の中古車webCG中古車検索

力強さはいまひとつ

C4ピカソに乗るのは2年ぶり。そのときもグランドで、とてもいいクルマだったから、いまも記憶に新しい。トルクのあるディーゼルは、町なかでのいわば“生活性能”でガソリンエンジンをしのぐことも多い。そういうサプライズは今回、どうか。

グランドC4ピカソの場合、2リッターディーゼルの車重(1660kg)は1.6リッターガソリンよりも130kg重い。排気量が違うこともあって、かなり開きがある。一方、加速性能に効くとされる最大トルクは、37.7kgm対24.5kgmと、圧倒的にディーゼルが勝る。車重のハンディを軽くうっちゃってしまうかと期待したが、やはりディーゼルのほうが走りは少し重々しい。トルクでグイグイ加速するような頼もしさはない。

変速機はシフトパドル付きの6段AT。100km/hからフルスロットルでキックダウンを効かせると3速まで落ちる。しかし、高速域での追い越し加速もパンチはいまひとつだ。ただ、試乗車の走行距離は2000km台。エンジンがまだカタイ感じはあったから、もう少し走り込むと、印象は好転するかもしれない。

静粛性は最近のクリーンディーゼル乗用車の標準である。つまり、ガソリン車と大差ない。気になる音は聴こえない。だが、エンジンが回っていると、ステアリングホイールに、振動というほどのものではないにせよ、ザワザワしたディーゼルの“存在感”のようなものは伝わってくる。それが走行フィールの品質感をちょっと削(そ)いでいると思った。

最高出力150psの2リッター直4ディーゼルエンジンは、37.7kgmの最大トルクを発生。燃費はJC08モードで18.0km/リッターを記録する。
最高出力150psの2リッター直4ディーゼルエンジンは、37.7kgmの最大トルクを発生。燃費はJC08モードで18.0km/リッターを記録する。拡大
「グランドC4ピカソ フィールBlueHDi」は、尿素SCRシステムとDPFを併用することで排出ガスを浄化。欧州や日本などの排出ガス規制に対応する。
「グランドC4ピカソ フィールBlueHDi」は、尿素SCRシステムとDPFを併用することで排出ガスを浄化。欧州や日本などの排出ガス規制に対応する。拡大
非対称デザインが採用されたインストゥルメントパネル。運転席と助手席のユニークな表皮パターンにも注目。
非対称デザインが採用されたインストゥルメントパネル。運転席と助手席のユニークな表皮パターンにも注目。拡大
メーターパネルは、ダッシュボード中央にレイアウトされる。12インチの液晶タイプで、速度計やエンジン回転計のほか、トリップコンピューターの情報や車載カメラの映像が表示できる。
メーターパネルは、ダッシュボード中央にレイアウトされる。12インチの液晶タイプで、速度計やエンジン回転計のほか、トリップコンピューターの情報や車載カメラの映像が表示できる。拡大

オープンカーより開放的

ディーゼルの導入と同時に、若干のフェイスリフトが加えられたが、依然変わらぬC4ピカソの“芸”は、頭上の空が見える「スーパーパノラミックフロントウィンドウ」である。

フロントガラスの上端が屋根に大きく食い込んでいる。しかもアンバーの入っていない素通しのガラスだ。太く堅牢(けんろう)な窓枠を持ち、それが額の近くまで迫る最近のオープンカーより、むしろオープン感覚にあふれる。

今回は暗いうちから動き出して、車内から朝日を拝むことができたが、そのときはなにかあまりにも晴れがましすぎて、カーテンを閉めたくなった。カーテンはないが、サンバイザーが前方に18cmスライドし、そこからパタンとめくれば、さらに20cm日よけを伸ばすことができる。

“グランド”と名乗っていても、全長は「トヨタ・ノア/ヴォクシー」や「日産セレナ」などに比べると、10cmほど短い。全高は15~20cmも低く、ハイトなワゴンというほどノッポではない。そんなプロポーションのほどほどさがグランドC4ピカソの売りのひとつだろう。

その室内にあって、7人乗りのスペックは掛け値のないところである。10cm以上前後スライドする2列目シートをちょっと前に出してもらえば、3列目にも大人が座れる。

広大な面積を有する「グランドC4ピカソ」のフロントウィンドウ。スライド式のサンバイザーが備わる。助手席側(写真奥)はサンバイザーを閉じた状態。
広大な面積を有する「グランドC4ピカソ」のフロントウィンドウ。スライド式のサンバイザーが備わる。助手席側(写真奥)はサンバイザーを閉じた状態。拡大

市街地の道を行く「グランドC4ピカソ」。燃費向上に貢献するアイドリングストップ機構も備わる。


	市街地の道を行く「グランドC4ピカソ」。燃費向上に貢献するアイドリングストップ機構も備わる。
	拡大
身長160cmの筆者が3列目シートに座った様子。この3列目は、背もたれを前方に倒してフロアに収納することができる。
身長160cmの筆者が3列目シートに座った様子。この3列目は、背もたれを前方に倒してフロアに収納することができる。拡大
3列目に加えて2列目のシートも前方に倒せば、最大2181リッターの荷室容量が得られる。(写真をクリックするとシートアレンジが見られます)
3列目に加えて2列目のシートも前方に倒せば、最大2181リッターの荷室容量が得られる。(写真をクリックするとシートアレンジが見られます)拡大

感動があるのはガソリン車

2年前に乗ったガソリンのグランドC4ピカソは、恵比寿のプジョー・シトロエン・ジャポンを走りだすなり、心を捉えるクルマだった。エンジンはなめらかで、足まわりはイロっぽいほどしなやかでゆったりしている。ガラス張りのキャビンからは、いつもの景色も違って見える。ひとくちにミニバンとくくられるクルマでも、まだこんな新しいアプローチができるのかと驚いた。

同じように明治通りを走りだしても、今回、あの感動はなかった。ガソリンモデルほどの高級感は感じなかった。それで価格が高いのだから、個人的にはグランドC4ピカソはガソリンがいいと思う。

だが、日本でのディーゼルの“印籠”は、言うまでもなく燃料コストである。給油の際、軽油は満タン近くになるとすぐ泡立ってしまうため、なかなか正確な燃費がとれない。今回も車載燃費計との差が大きすぎる。そこで、12.5km/リッターという車載燃費計のほうを信じることにして、2年前に乗ったガソリンモデル(11.3km/リッター)と比べてみた。

この日給油したスタンドの燃料価格は、軽油が99円、無鉛ハイオクが133円だった。これを元に試算すると、ディーゼルは1km走るのに7.9円、ガソリンは11.8円を要する。ディーゼルの燃料コストはガソリンの約3分の2である。25万円の価格差は6万5000kmくらい走れば帳消しになる計算だ。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=荒川正幸/編集=関 顕也)

LEDランプ付きの、バイキセノンヘッドランプ。コーナリング時に照射角度を自動的に変える“ディレクショナル機能”も備わる。
LEDランプ付きの、バイキセノンヘッドランプ。コーナリング時に照射角度を自動的に変える“ディレクショナル機能”も備わる。拡大
ステアリングホイールのパッド部周辺には、クルーズコントロールやカーオーディオなどのスイッチが並ぶ。
ステアリングホイールのパッド部周辺には、クルーズコントロールやカーオーディオなどのスイッチが並ぶ。拡大
「グランドC4ピカソ フィールBlueHDi」には、17インチのアロイホイールが標準で与えられる。
「グランドC4ピカソ フィールBlueHDi」には、17インチのアロイホイールが標準で与えられる。拡大
今回は、200km強の距離をテスト。燃費は車載燃費計で12.5km/リッター、満タン法で15.2km/リッターを記録した。
今回は、200km強の距離をテスト。燃費は車載燃費計で12.5km/リッター、満タン法で15.2km/リッターを記録した。拡大

テスト車のデータ

シトロエン・グランドC4ピカソ フィールBlueHDi

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4605×1825×1670mm
ホイールベース:2840mm
車重:1660kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:150ps(110kW)/4000rpm
最大トルク:37.7kgm(370Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)205/55R17 95V/(後)205/55R17 95V(ミシュラン・プライマシーHP)
燃費:18.0km/リッター(JC08モード)
価格:372万円/テスト車=378万9660円
オプション装備:メタリックペイント<サーブル>(5万9400円)/ETC車載器(1万0260円)

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2417km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:213.4km
使用燃料:14.0リッター(軽油)
参考燃費:15.2km/リッター(満タン法)/12.5km/リッター(車載燃費計計測値)

シトロエン・グランドC4ピカソ フィールBlueHDi
シトロエン・グランドC4ピカソ フィールBlueHDi拡大
LED式のリアコンビランプ。奥行きを感じさせる立体的な光のラインが特徴的。
LED式のリアコンビランプ。奥行きを感じさせる立体的な光のラインが特徴的。拡大
下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

シトロエン C4ピカソ の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連記事
関連サービス(価格.com)

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。