フォルクスワーゲン・ティグアン トラック&フィールド(4WD/6AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ティグアン トラック&フィールド(4WD/6AT) 2008.11.21 試乗記 ……360.0万円総合評価……★★★
フォルクスワーゲンの新しいコンパクトSUV「ティグアン」。「トラック&フィールド」という名前のとおり、オフロードの走破性はまずまずだが、オンロードではどうなのか?
クオリティの高いコンパクトSUV
「トゥアレグは魅力的だけど、あの値段やサイズには抵抗があるなぁ……」と、購入を躊躇していた人にはまさに朗報となる「ティグアン」の日本上陸。フォルクスワーゲンらしい高いクオリティや確かな性能、さらに、SUVならではの存在感や躍動感が、コンパクトSUVのニューフェースとして、これまでのフォルクスワーゲンオーナーだけでなく、他のインポートブランドや日本車からの乗り換えを促すのは確実だ。
ただ、日本に先行導入された「トラック&フィールド」は、ある程度のオフロードならそつなくこなす反面、オンロードの気持ちよさが不足しているように思えた。同じモデルでも年を重ねるごとに進化するフォルクスワーゲンだけに、今後の熟成に期待するとともに、遅れて導入予定のオンロード仕様を早く試してみたい。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ティグアン」は、欧州Cセグメントに属するフォルクスワーゲン初のコンパクトSUV。同社のフラッグシップSUV「トゥアレグ」のイメージを受け継ぎながらサイズを小さくした。
乗車定員は5名。前後2列のシートとその後ろにラゲッジルームを備える。乗降用ドアは4枚。跳ね上げ式リアハッチを持つ荷室には470リッターの容量が確保されている。
搭載エンジンは、2リッターTSI。直噴にターボを組み合わせることで、実際の排気量より大きなエンジンに相当するパワーと、小排気量車の燃費を両立させるフォルクスワーゲン流の試みがティグアンにも採られた。その出力はNA2.3〜2.5リッター並みの170ps。トルクにいたっては 28.6kgmと2.8リッター並の値を搾り出す。 トランスミッションは、ティプトロニック6段ATが組み合わされる。
(グレード概要)
海外市場では、オフロード指向とオンロード指向の2タイプ用意されるが、日本では当面、前者に相当する「トラック&フィールド」の1グレードのみとなる。
アウトドアをイメージさせる車名のとおり、アプローチアングルを28度と大きく確保し、障害物の多い路面や傾斜路での走破性が高められた。また、ボタンひとつでヒル・ディセント・コントロール(HDC)やスロットル特性、エレクトリック・ディファレンシャル・システム(EDS)などの設定をオフロード向きに切り替えるオフロードスイッチが搭載される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
どこかで見た記憶が……というティグアンのインパネ。実は日本でも限定販売された「クロスゴルフ」のデザインを受け継いでいる。ということは、ベースのデザインは「ゴルフプラス」だ。ゴルフより立派なつくりで、質感の高さは期待を裏切らない。
そしてうれしいのが装備の充実ぶり。たとえば、標準オーディオは、MP3/WMA対応のCDプレーヤー(6連奏)やSDオーディオに対応するだけでなく、6.5インチカラーディスプレイにリアビューカメラの映像を映し出すことが可能。しかも、車庫入れや縦列駐車をサポートする“リアアシスト”機能も提供され、慣れると駐車の目安として便利。これだけ多機能なら、わざわざ本格的なカーナビを買わず、簡易カーナビの追加で済ませるという人は多いだろう。
(前席)……★★★
アイポイントは高めながら、乗用車ベースのSUVだけに座席の高さが乗り降りの苦にならない。シートはサイドサポートが大きめのスポーティなデザインで座り心地はやや硬め。ポジション調節はすべて手動。ステアリングのチルト&テレスコピック調節も手動となるが、好みのポジションが得られるのは助かる。
センターコンソールは、エレクトリックパーキングブレーキのおかげですっきりしている。エレクトリックパーキングブレーキの“オートホールド機能”をオンにすると、ブレーキペダルから足を離してもブレーキの油圧を保持してくれるが、オフロードの登坂などでは“ヒルスタート”代わりに使えて便利な反面、街なかなどではスムーズに発進するのが難しく、積極的に使う気にはならなかった。
(後席)……★★★
後席の広さはティグアンの美点。左右独立のスライド機構が備わり、一番前のポジションでもなんとか座れるし、一番うしろなら足が組めるほどのスペースが確保される。リクライニング機能も便利だ。
ただ、カンジンの乗り心地は、前席以上に上下動を伝えがちで、快適というにはもう一歩なのだ。パッケージングが優れているだけに、サスペンションの熟成不足が惜しい。
(荷室)……★★★
フロントオーバーハングが長いためか、4460mmの全長から想像するほど奥行きのない荷室。SUVだけに、地上から開口部下端までが約80cmと高いのも気になった。まあ、それでも後席を立てた状態で約80cmの奥行きがあり、幅100cm、高さ70cm強のスペースが確保されるから、決して狭いわけではない。いざとなれば後席だけでなく、助手席まで倒すことができるのも心強い。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
トラック&フィールドの2リッターTSIエンジンは、最高出力こそ125kW(170ps)と「ゴルフ」や「ジェッタ」などに搭載されるタイプより控えめだが、28.6kgmの最大トルクは同じ数字。しかも、1700rpmから4200rpmの広範囲にわたり最大トルクを発揮するので、発進でもたつくことはなく、走り出しても不満のない加速を見せる。さすがに5000rpmの手前あたりからは勢いに衰えが見え始めるものの、実用上とくに困るほどではない。
トランスミッションは、お得意のDSGではなく、コンベンショナルなトルコンタイプの6段ATが搭載される。オフロードを走ることを考えると、DSGよりもこちらのほうが向いているとフォルクスワーゲンはいうが、燃費などを考えるとやはりDSGがほしいところ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
オフロード指向とはいえ、サマータイヤを装着するおかげで、さほどザラついた印象はないものの、荒れた舗装路でタイヤがドタバタしたり、目地段差でハーシュを伝えるなど、乗り心地の粗さが顔を出す。スピードが上がったところで改善されることはなく、フラットさもいまひとつ足りない印象だ。
一方、コーナリング時のロールは常識的なレベルに収まっており、コーナーを果敢に攻めるような走り方でなければ、不安を覚えることはないだろう。
乗り心地とともに気になったのが、小回りがあまり利かないこと。カタログを見ると最小回転半径は5.7mとあった。これは「トゥアレグ」の5.4mより大きい。この手のクルマとしてはクイックなステアリングにも違和感を覚えた。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2008年10月9日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:4026km
タイヤ:(前)215/65R16(後)同じ(いずれも、ブリヂストン DUELER H/P)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:583.6km
使用燃料:62.90リッター
参考燃費:9.28km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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