フォルクスワーゲン・ティグアンTDI 4MOTION Rライン(4WD/7AT)
遠くに出かけたくなる 2025.06.17 試乗記 フルモデルチェンジで内外装を一新し、第3世代に進化したSUV「フォルクスワーゲン・ティグアン」。2リッター直4ディーゼルターボ搭載モデル「TDI 4MOTION Rライン」を往復で1500kmを超えるロングドライブに連れ出し、その仕上がりと気になる燃費をチェックした。フォルクスワーゲンのトップセラー
日本で販売されているフォルクスワーゲンのSUVには、ボディーサイズが小さいほうから順に「Tクロス」、「Tロック」、ティグアンの3モデルがある。かつてフラッグシップSUVの「トゥアレグ」が日本でも販売されていたが、3代目以降は導入が見送られているため、日本市場におけるSUVの最上級モデルはティグアンということになる。
このティグアン、世界的な販売台数はフォルクスワーゲンの主力モデルである「ゴルフ」や人気のコンパクトカー「ポロ」を上回り、2019年以降、フォルクスワーゲンブランドだけでなく、フォルクスワーゲングループ全体でもトップセラーの座を守り続けているという。
現在のモデルは、2023年に登場した3代目で、日本でも2024年末に販売が始まったばかり。それだけに、まだ路上で見かける機会は少ないが、たまたま出くわして、「えっ、これがティグアン?」と驚く人は多いに違いない。
というのも、新型ティグアンはボディーサイズが全長×全高×全幅=4540×1860×1655mm、ホイールベースが2680mmといずれの寸法も先代に近いが、エクステリアデザインは大きく変貌し、これまで以上に目立つ存在になっているからだ。
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モダンなインテリアデザイン
たとえば新型ティグアンのフロントビューは、旧型に比べてボンネットの位置を高くすることでSUVらしさを強める一方、薄いラジエーターグリルやほぼ横いっぱいに広がるLEDランプストリップにより、最新のフォルクスワーゲンならではの個性を手に入れている。スリムなテールランプもスタイリッシュで、一気にあか抜けた印象である。
それ以上に変わったのがティグアンのコックピットだ。ひさしのない液晶メーターパネルとばかでかい15インチのセンターディスプレイにより、すっきりしたデザインにまとめられている。一方、マイナーチェンジ前のゴルフで不評だったタッチパネルの操作性は改善が図られていて、ストレスなく使えるようになったのは、ゴルフユーザーの私としてはうらやましいかぎりだ。
シフトレバーがステアリングコラム右に移されたのも、新型モデルの新しい部分のひとつだ。最新のEV「ID.」の各ラインナップでもこの方式が採用されていて、慣れるとセンターコンソールに手を伸ばすよりも使いやすいほどだ。
シフトレバーのかわりにセンターコンソールに鎮座するのが、「ドライビングエクスペリエンスコントロール」と呼ばれるスイッチ。これでオーディオの音量調整や走行モードの選択、さらにはアンビエントライトやメーターなどのスタイルを変えることができる。ただ、最初は面白がっていろいろなスタイルを試したものの、しばらく乗るとたまに走行モードを切り替えるときに使う程度だった。
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ディーゼルと4WDの最強コンビ
今回試乗したのは、2リッター直4ディーゼルターボに4WDの4MOTIONを組み合わせたティグアンTDI 4MOTION Rライン。ロングドライブに打ってつけのこの仕様で、東京〜岡山を往復する旅に出かけることにした。
まずは一般道でその実力を試してみると、最高出力193PS、最大トルク400N・mのスペックを誇る2.0 TDIエンジンは、発進から力強さが実感され、1750kgの車重を忘れるほど軽々と加速を始める。そのうえ、低回転域でもアクセルペダルの動きに素早く反応し、加減速の多い街なかでもストレスを感じずに運転できるのがいい。さらにうれしいのはディーゼル特有のエンジンノイズや振動が低めに抑えられていることで、下手なガソリンエンジンよりも快適に思えるくらいだ。
低中回転域でのトルクが太い2.0 TDIエンジンだけに、高速道路の合流や登り坂といった場面でも3000rpm以下で十分に事足りてしまうが、さらにアクセルペダルを強く踏み込むと4500rpmあたりまで勢いのいい加速が続く。
気になる燃費は、アダプティブクルーズコントロール(ACC)を使ってほぼ制限速度いっぱいで高速道路を走ったところ、往路の東京〜相生が18.2km/リッター、帰路の相生〜東京では19.0km/リッターだった。往復で燃費が違うのは、往路は120km/h区間のある新東名、復路は速度域の低い東名を走ったのが原因と思われる。高速道路の総平均燃費は18.6km/リッターだった。
一方、岡山では比較的すいた幹線道路に加えて、一部山越えの区間があり、200km強走ったときの燃費は16.4km/リッターだった。トータルでは1500kmを走り、総平均燃費が17.8km/リッター。カタログ値はWLTCモードが15.1km/リッター、高速モードのWLTC-Hが17.3km/リッターであり、今回はカタログ値以上の好燃費に満足である。
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ロングドライブもお手のもの
新型ティグアンの見どころのひとつに、「アダプティブシャシーコントロール」と呼ばれる可変ダンピングシステムの進化がある。ティグアンに搭載される「DCC Pro」は、ダンパーの伸び側と縮み側とで独立したオイル回路とすることで従来よりもきめ細かい制御が可能になったという。
実際に走らせたときの印象は、重心が高いSUVにもかかわらず、走行中のロールやピッチングといった動きはよく抑え込まれているうえ、乗り心地は十分に快適。試乗車のRラインには255/40R20タイヤが装着されるため、目地段差を通過する際のショックが気になることもあったが、十分許容できるレベルである。
ACCの動きが自然なのもロングドライブにはうれしい。さらに、オプション装着のレザーシートにベンチレーション機能が搭載されていたおかげで、暑い日でもシートに触れている部分が蒸れないのも快適なドライブにつながった。
広い室内もロングドライブには有利で、通常時でも約90cm、後席を倒せば150cmを超える奥行きを誇るラゲッジスペースには無造作に荷物を積み込め、また、前後スライドやリクライニング機構が備わるリアシートは大人が座っても余裕たっぷり。TDIエンジンによる力強い走りとSUVらしい機能性が魅力のティグアンが世界中で人気というのも十分納得がいく。乗るたびに、また遠くに出かけたくなるティグアンTDI 4MOTIONである。
(文=生方 聡/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一/車両協力=フォルクスワーゲン ジャパン)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ティグアンTDI 4MOTION Rライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4540×1860×1655mm
ホイールベース:2680mm
車重:1750kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:193PS(142kW)/3500-4200rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1750-3250rpm
タイヤ:(前)255/40R20 101V XL/(後)255/40R20 101V XL(ピレリ・スコーピオン)
燃費:15.1km/リッター(WLTCモード)
価格:653万2000円/テスト車=681万5800円
オプション装備:レザーシートパッケージ(24万2000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(4万1800円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:6450km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:1501km
使用燃料:85.5リッター(軽油)
参考燃費:17.6km/リッター(満タン法)/17.8km/リッター(車載燃費計計測値)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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