第9戦イギリスGP「ハミルトンの勝利の重み」【F1 08 続報】
2008.07.07 自動車ニュース【F1 08 続報】第9戦イギリスGP「ハミルトンの勝利の重み」
2008年7月6日にイギリスのシルバーストーン・サーキットで行われたF1第9戦イギリスGP。ルイス・ハミルトンが、ウィナーとなり、レース後「ベスト・レースのひとつ」と振り返った。4位以下を周回遅れにした完勝には、もうひとつの意味が隠されていた。
■フェラーリにも勝ち目はあった
大雨のハイスピードコース、しかもトラクションコントロールなどドライバーズエイドなしの状態だと、マシンはおもしろいように滑り、レースは荒れる。
ポイントリーダーのフェリッペ・マッサは60周のレース中5回もスピンし、最後尾の13位でゴール。予選8位と絶好調だったセバスチャン・ベッテルがオープニングラップでコースオフ、ポールシッターのヘイキ・コバライネンもスピンをきっし後退、第2戦以来得点を続けてきたロバート・クビサはリタイア、優勝を狙えたはずのキミ・ライコネンは雨が降らないほうに賭け、失敗……。
ライバルが続々と脱落するなか、難しい状況でもミスをおかさず、チームの的確な判断が奏功したハミルトンが独走し、大挙した母国ファンの前で拳をあげた。
レース開始前から路面はウェットで、レース中さらなる雨が予想された。4番グリッドのハミルトンは勢いよくスタートを決め、もたつくチームメイト、ポールシッターのコバライネンに早々に並びかける。コバライネンは一瞬挙動を乱したもののコースにとどまり、しばしP1を守り続けたのだが、その間ピタリと背後につけていたハミルトンが5周目のストレートでコバライネンを料理しトップに躍り出た。
その後、コバライネンはスピンにより2位の座をやすやすとライコネンに譲り渡した。既に数秒のマージンを築いていたリーダーのハミルトンだったが、コースが徐々に乾きはじめるとライコネンのフェラーリが応戦。この時点では2人によるトップ争いが繰り広げられるかと思われた。
■ホンダの賭け
1位ハミルトンと2位ライコネンは、21周目、並んで同時にピットイン。ここで今回の勝敗がわかれた出来事が起きる。
新しいスタンダードウェットに履き替えたハミルトンに対し、ライコネンは交換せず溝が浅くなったウェットタイヤを付けたままコースへと戻った。つまりフェラーリは、コースは乾く一方と読んだのだ。
だが、数周のうちにまた空が泣き出す。フレッシュなウェットタイヤで周回するハミルトンは、まさに水を得た魚のようにハイペースを維持。ほぼスリックに近いタイヤに足をすくわれたライコネンの視界から消えていった。
BMWのハイドフェルドも、雨で勢いをつけたひとり。序盤こそ5番グリッドから目立たぬレースを展開したが、27周目、3位コバライネンが2位ライコネンを追い抜こうとした瞬間に両車をオーバーテイクし、2位へとポジションをあげた。
もうひとり、雨を味方につけ表彰台にのぼった男がいた。ホンダのルーベンス・バリケロだ。
最強のブレイン、チームを率いるロス・ブラウンの面目躍如。ホンダは35周目、バリケロにヘビーウェットタイヤを履かせ、これが悪化する一方の路面にマッチしたのだ。フューエルリグのトラブルで1回多くピットインしなければならなかったが、それさえなければ2位も夢ではなかった。
■ハミルトンへの風当たり
ハミルトンにとって、今回の勝利は今後のチャンピオンシップを戦ううえで非常に重要な意味をもつ。それは、タイトルを争うトップ3(ライコネン、クビサ、マッサ)がノーポイントかローポイントに終わったことで、ライコネン、マッサと並んでジョイントポイントリーダーになったこと以上に大きい。
第7戦カナダGP、ピットレーン出口での衝突、そのペナルティを受けての翌フランスGPでの停滞ぶり。実は昨年あれだけハミルトンを持ちあげたイギリスのメディアは、ここのところハミルトンへの風当たりを強めていたのだ。
しかも、母国GPでの予選で4位と振るわず、仮に今回優勝できず万一リタイアに終わったら……数字のうえでも、戦うためのメンタル面でも、この勝利は重みある1勝だった。2位に70秒近い、無駄に思える大きなタイムマージンを築いたのも、彼の意気込みのあらわれであろう。
毎戦のようにリーダーが変わる激戦の2008年シーズンは、次のドイツGP(決勝7月20日)から、いよいよ後半戦に突入する。
(文=bg)
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