(写真=北畠主税<ARGOS>)
アルピナB3ビターボ・リムジン(FR/6AT)【短評(後編)】
M3より男らしい(後編) 2008.05.04 試乗記 アルピナB3ビターボ・リムジン(FR/6AT)……995万円
ウェット路面に祟られた計測結果、気になる燃費。はたして、アルピナB3に相応しいドライバーとは?
『CG』2008年2月号から転載。
性能に対して燃費は良好
残念だったのは今回のJARIがウェット路面に祟られてしまったことだ。いくら優れた前後重量配分を持つとはいえ、純粋なRWDで370psともなるとこのコンディションは致命的で、表に記したとおり発進加速のデータは0-400m:14.1秒、0-1km:25.4秒、0-100km/h:6.1秒と、どれも1年前、理想的なコンディションで計測することのできた335iのデータを凌ぐことができなかった。B3ビターボの方が335iより30kg軽い1590kgというデータを見ても、実力がこんなものでないことは想像に難くないが、お天道様に恨みを言っても仕方がない。20km/hごとの追い越し加速をつぶさにみると335iより0.2〜0.3秒ほど速い区間もあったから、絶対的な動力性能の評価については次の機会まで保留としておきたい。
一方で燃費も335iと大差ない、つまり性能の割りに優れているといえる。今回走行した600kmの平均燃費は9.2km/リッターで、その中からJARIでの走行分を除くと9.4km/リッターまで改善される。法定速度を正直に守ってクルージングした時には15.8km/リッターという優れた値を残す一方で、山道を走り回ると5.8km/リッターという具合に、負荷によって燃費が大きく変わる点ではターボカーらしさを残しているが、高速道路をハイペースで飛ばしても11.1km/リッターをマークするなど、性能に対して全般に燃費は良好だった。
18インチを選びたい
BMW335iが本来持っているポテンシャルの高さを徒に崩すことなく、全体の底上げを図るという新型B3ビターボの開発コンセプトは、シャシーのセッティングにもそのまま表われていた。今回のテスト車は本来オプションの19インチ・タイア/ホイール(245/35ZR19と265/35ZR19)を履いていたが、首都高や常磐道のペースだと、335iよりむしろ乗り心地は優れているように感じるほどで、特に滑らかな路面を流すような場面でのしなやかさは、ダンパーこそ軽く締め上げてはいても、スプリングレートはノーマルと同じではないかと思ったほどだ。
もちろんその裏には理由があり、335iがBMWの流儀に則ってランフラットタイア(17インチが標準)を装着しているのに対し、アルピナB3は普通の構造のミシュラン・パイロット・スポーツを装着しているから、細かい突起を包み込むようなタイアのエンベロープ特性が、クルマの乗り心地としてそのまま素直に表われたのだといえる。だから一般的な走行パターンなら19インチを選んでも決して後悔はしないはずだ。
ただしノーマルの335iより2インチも径が大きいデメリットを痛感する場面があったことも事実。いつものように箱根の山道を走り回ったところ、バンプが連続するコーナーではバネ下重量の増加にたいして減衰力が追いつかず、路面をトレースしきれない場面があったし、また絶対的なグリップが増加したせいで、DSCをカットオフすると比較的唐突にテールを張り出す傾向も確認できた。こうした特性から考えると、やはりB3ビターボの標準サイズである18インチ(245/40ZR18と265/40ZR18)の方がベターであることは想像に難くないし、ルックスの点は別として、その方が乗り心地にも良い影響を与えることは間違いない。
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自然なステアリングフィール
またB3ビターボと335iのもうひとつ大きな違いとして明記しなければならない点にステアリングのことがある。ご存知のとおり日本仕様の335iはアクティブステアリングが標準装備されるが、アルピナにはそれがない。我々はBMWのアクティブステアリングを高く評価しているが、年季の入ったスポーツドライバーからは手応えが不自然だという声も聞く。
その点ロックからロックまでちょうど3回転回るB3ビターボのステアリングは決してレシオ自体は遅くないし、油圧パワーステアリングらしい自然な操舵感覚の点でも文句ない。一方でアクティブステアリングのつかない3シリーズは、1シリーズと同じく不自然に操舵力が重いと感じることがしばしばある。その事実を思い出すと、E90が本来持っているステアリングフィールは、このB3ビターボでこそ味わえるといえるかもしれない。
アルピナB3には4ドアボディのリムジン(995〜1018万円)の他にクーペ(1038〜1061万円)とカブリオ(1163〜1186万円)がある。995万円というと決して手が届きやすいという価格ではないが、車両本体価格668万円のBMW335iにオプション装備をつけていくと優に700万円を超えてしまうから、独特の本革シートとウッドインテリアが標準装備されるB3ビターボは、高性能な3シリーズが欲しいという人よりも、すべてに上質な3シリーズを求めるドライバーに相応しいと思う。ただし335iには標準装備されるHDDナビゲーションがB3には装備されていないので念のため。
(文=塚原久/写真=北畠主税<ARGOS>、アルピナ/『CG』2008年2月号)

塚原 久
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