フェラーリ430スクーデリア(MR/2ペダル6MT)【海外試乗記(前編)】
フェラーリの進化がとまらない(前編) 2008.02.15 試乗記 フェラーリ430スクーデリア(MR/2ペダル6MT)2007年の東京モーターショーに出展された「F430スクーデリア」。ミハエル・シューマッハーが開発にかかわったとされるスーパースポーツに試乗。『NAVI』加藤哲也が本国イタリアからリポートする。
『NAVI』2007年12月号から転載。
エンツォより面白いかも
ノーマルのF430にほとんど見劣りしない実用性を確保しながら、飛びっきりのドライビング・エモーションをもたらしてくれる。単に軽く(グラム単位で軽量化を積み重ね、計100kgのダイエットに成功している)、パワフルにしただけなら予想の範囲内。
しかしそれを大幅に凌ぐ魅力を430スクーデリアは身につけていた。何しろフィオラーノ1周のラップタイムは、エンツォと変わらないのだという。
FIAがいくらレギュレーションを改訂しても、ラップタイムが年々向上し続けるF1と同じ構図。つまりフェラーリはGPマシーン同様の技術革新を、ロードカーにも惜しまず注ぎ込んでいるということだ。
かつてモータースポーツへの参戦は、市販車への技術のフィードバックが主目的とされてきた。だからこそ“走る実験室”などといわれてきたわけだ。しかし今はどうだろう? 若々しくダイナミックなイメージを構築することの方に、軸足を置いているのではないか?
そんなご時世にあって、フェラーリは恐らく世界で最もレーシングカーと生産車の距離が近い。セミオートマチック・ギアボックスの“スーパーファスト”然り、電子制御デフのE-DIFFまた然り。このふたつが今回もまた大幅にアップデートされた他、いくつかのF1技術の応用が図られ、大きく甘い実がなった。
試乗会はいつも通りフィオラーノのテストトラックを舞台に始まった。日本人グループでは、いの一番でコースインする。前夜ホテルで資料にザッと目を通してからずっと、早く操縦したくてウズウズしていたのだ。パワー/ウェイトレシオが2.45kgと聞いただけで、胸がザワついてくるではないか。
F430とは比べものにならない
案の定“BOX”からスタートしてすぐに気づいたのは、加速感が凄まじいことだ。前:235/35ZR19、後:285/35ZR19サイズのP ZEROコルサが路面を蹴立て、タコメーターの針が恐ろしいほどの勢いで盤面を駆け上がっていく。特定の回転域でピークを迎えるのではなく、スロットルを深々と踏んだ瞬間からレヴリミットの8500rpmまで、ずっとトルクとパワーのピークが続く印象だ。
90度V8はF430用の4308cc(92×81mm)の排気量はそのままに、吸排気抵抗の低減を慎重に吟味したうえで、新形状のピストンを採用。その結果圧縮比は11.88まで引き上げられている。加えてロードカーでは初採用となるF1譲りの特別なコイルと高性能プロセッサ−を用いることで、点火の正確さと燃焼効率の改善を徹底。何とベースユニットを20ps、5kgmも上回る510ps/8500rpm、470Nm(48.0kgm)/5250rpmのパワーとトルクを絞り出すのに成功している。
ステアリングホイール上のシフトアップインジケーターに促され右のパドルを引いても、またすぐにLEDが瞬き、同じ動作を迫られる。しかもこの430スクーデリアから“スーパーファスト2”を名乗り第2世代へと進化したセミATは、高圧の油圧アクチュエーターを新装備。変速に要する最短時間(クラッチを切ってから繋ぐまで)をこれまで最速だった599の0.1秒から0.06秒!にまで短縮することに成功しているのだ。F1でさえ0.03〜0.04秒というから、マルチコーン・シンクロを備えた市販車用ギアボックスとしては驚異的な数値といえるだろう。
ピスタでの試乗ではもちろんスロットル全開のままシフトアップするのが基本だが、今までは必ずガツンと一発見舞われたショックはほとんど意識しないまで抑えられているし、それより何よりシームレスな加速感は快感の極み。フェラーリV8のサウンドを聞きながらがフィオラーノをドライブしていると、あたかも本物のレーシングカーを操っているような錯覚に陥りそうになる。
そう感じるのはもちろん、コーナリングスピードが高いこととも無関係ではあるまい。突っ込みで無理しすぎるとABSが働き、明確なアンダーステアを示すものの、ターンインは鋭く、安定感も高い。3速で切り返す中速SベンドにおけるスタビリティはF430とは比べ物にならないほど高く、安心して踏んでいけるのが印象的だった。
インラップはステアリング上のノブで走行モードを選べる“マネッティーノ”(ダンピング/変速スピード/CST=コントロール・フォー・スタビリティ&トラクションの介入度/E-DIFFのセッティングが予めプログラミングされたモードに切り替わる)のレースモードで走ったからなおさらのこと。CSTの嫌な介入もなく、敢えて早めにスロットルを開けていってもライントレース性が高いことが確認できた。
(後編につづく)
(文=加藤哲也/写真=Roberto Carrer/『NAVI』2007年12月号)

加藤 哲也
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。

