珠玉の自動車模型がズラリ! 「オートモデラーの集い in 横浜 2014」
2014.02.18 画像・写真2014年2月1日、神奈川県横浜市にある日産自動車横浜工場ゲストホール内のエンジン博物館で、「オートモデラーの集い in 横浜 2014」が開かれた。このイベントは、日産グループの車両開発会社である日産テクノの社内同好会「日産テクノモデラーズクラブ」が、「モデルカー愛好家が作品持参で集まり、交流を深める」ことを目的に、3年前に始めたもの。昨年は約250名のモデラーが集まったそうだが、3回目となる今回は、遠くは北海道や大阪からの参加者を含め、およそ300名のモデラーが全国から集合。年齢層は中学生から還暦過ぎのベテランまで幅広く、模型専門誌などで活躍するプロモデラーも数名が参加した。持ち寄られた作品は、すべてのパーツを素材から作り出したスクラッチモデルを筆頭にハイレベルな力作ぞろいで、総数はなんと約800台! それらのなかから、リポーターが独断で選んだ作品を紹介しよう。
(文と写真=沼田 亨)

「日産テクノモデラーズクラブ」のコーナーに展示されていた1/12の「日産R380-AII」。タミヤのホンダF1用というタイヤを除いてはすべてスクラッチビルドで、ボディーはまだ原型の状態。右端に立つフィギュアは、開発責任者の故・櫻井眞一郎氏である。
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「日産テクノモデラーズクラブ」のコーナーに展示されていた1/12の「日産R380-AII」。タミヤのホンダF1用というタイヤを除いてはすべてスクラッチビルドで、ボディーはまだ原型の状態。右端に立つフィギュアは、開発責任者の故・櫻井眞一郎氏である。
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「日産R380-AII」のパワートレイン周辺。GR8型エンジンのウェーバーキャブやエキパイを留めるスプリングなど、精緻な表現には驚くばかり。
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メガネのカタチを含む表情、作業ジャンパーのシワと汚れまで巧みに再現された櫻井眞一郎氏のフィギュア。
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タミヤの1/12「ダットサン240Z サファリラリー仕様」をベースに、1972年のモンテカルロ・ラリーでラウノ・アルトーネン/ジャン・トッドが総合3位に入賞した仕様にアレンジしてディテールアップした作品。エンジンルームのパイピングなどがバッチリ再現されている。
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総合優勝を果たした「510ブルーバード」や「ダットサン240Z」のサファリ仕様は有名だが、「410ブルーバード」と「510ブルーバード」の間に、日産は型式名130と呼ばれる2代目「セドリック」でもサファリに参戦していた。そのセドリックの、1967年と68年の参戦車両を作り分けたマニアックな作品。ベースは往年のテレビドラマ『特別機動捜査隊』とタイアップした、マニアの間ではお宝キットである三共製の1/24。
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ピート・ブロック率いるBRE(ブロック・レーシング・エンタープライズ)が北米のレースで走らせていた型式名SRL311「ダットサン2000ロードスター」(国内名「ダットサン・フェアレディ2000」)。カラーリングとレタリングが非常に美しく、コックピットも精密に再現されていた。ベースはニチモの1/24フェアレディ2000。
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1980年代にイマイからリリースされていた1/24の初代「日産シルビア」(CSP311)を、実車ではシャシーを共有する兄弟車である、日東の同スケールの「フェアレディ2000」(SR311)のパーツを流用するなどしてディテールアップした作品。エンジンのヘッドカバーをフェアレディのSOHCからシルビアのOHVに作り替えるなど、細かい部分に製作者のこだわりが見える。
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タイヤを除いてすべてスクラッチビルドされた1/24「日産R382」。1969年の日本グランプリで、北野元が駆り2位に入賞した仕様である。各部の作り込み具合は、圧巻というほかない。
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「日産R382」の作者が製作した、左から「R381」「R380-AIII」「プリンス・スカイラインGT」という、プリンス/日産の日本グランプリシリーズ。1/24のフジミのキットをベースにしたスカイラインGTを除く2点はR382と同じくスクラッチビルドで、これらもシビれる出来栄え。ボディーはレジンを使った成形ではなく、プラバンを主材料として製作しているという。
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スクラッチされた「パブリカ・スポーツ」。通称ヨタハチこと「トヨタ・スポーツ800」のプロトタイプで、近年復元された1/1は各地のイベントに展示されているが、こちらは1/10ほどもある大作。メーカーが製作した縮尺模型のようなすばらしいプロポーションと精密さを備えた逸品である。
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型式名230こと3代目「日産セドリック・スタンダード」。模型専門誌『モデルカーズ』オリジナルの1/24レジンキットを、プロモデルフィニッシャーの北澤志朗氏が仕上げた作品。北澤氏いわく「ピンとこないかもしれませんが、カタログに出てくるスタンダードはこのブルーなんですよ」とのことだが、筆者はまったく違和感を覚えない。なにしろ筆者が通った自動車教習所の無線教習車が、年季が入ってくすんではいたが、このブルーの230スタンダードだったのだから(年がバレるね)。
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同じ形式名230でもこちらは童友社の1/24「セドリック・ハードトップGX」をベースにしたストックカー仕様。1972年のむつ湾ストックカーで、ポール・トゥ・フィニッシュを飾った松本之孝選手のマシンを正確に再現している。ボンネット上に3000ccとあるのは、当時のストックカーの主流だった、「日産プレジデント」用の3リッター直6 OHVのH30エンジンをチューンして搭載しているから。
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アポロ製の1/24「三菱ギャランGTO-MR」。ボンネット、ドア、トランクはオール開閉式にモディファイされており、リアウィンドウの熱線プリントや点滅式のテールランプなど、ディテールアップもバッチリ。
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アオシマの1/24「トヨタ・ハイエース」をベースに作られたハイメディック(高規格救急車)。参考資料はネットで拾った画像だけというが、特殊装備が見事に作り込まれている。また赤色灯も点灯する。
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展示モデルは作り込まれたものだけとは限らず、なかには出展者がその昔作って、保存されていたキットなどもあった。これはそうした一台で、未塗装でストレートに組まれたバンダイ製1/20の「トヨタ7」。筆者も小学生時代に作った記憶があるが、白いビニールパイプで表現されたタコ足(エキゾーストパイプ)が意外に曲げにくくかさばり、おかげでリアカウルがきちんと閉まらずに悩んだものだった。当時はパイプを温めて柔らかくしたり、内部に針金を通して曲げることなど考えつかなかったのだ。
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1960年代半ばから70年代にかけて、三共というメーカーから発売されていた1/32の国産小型乗用車シリーズから、「三菱コルト800」。プロモデラーの手でディテールアップされてはいるが、プロポーションは基本的にキットのままではないだろうか。なかなかよく特徴をとらえていたのだ。
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同じく三共1/32シリーズの初代「マツダ・ファミリア」。シリーズにはこのほか「いすゞ・ベレット」「スバル1000」「ダットサン・サニー1000」「ダットサン・ブルーバード(410)」「トヨペット・コロナ(RT40)」などがあったと思う。クルマ単体のキットのほか、カーポート付きのデラックス版も存在していたと記憶している。
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船橋サーキットで走っていそうな、イカした塗り分けの1/32の「いすゞ・ベレット・2ドアサルーン」のレーシング仕様。ベレット・サルーンのキットは、先の三共から4ドアが出ていたが、2ドアは存在しなかった。ということは、これは4ドアからモディファイされたのだろうか。
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通称ベレGこと「いすゞ・ベレット1600GT」。この個体は1966年に開かれた第3回日本グランプリの特殊ツーリングカーレースで2位に入った、いすゞのエースである浅岡重輝氏のマシンを模している。アリイの1/32「いすゞ・ベレット1600GTR」をベースにモディファイしたと思われる。
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これも三共の1/32「ダットサン・サニー1000」。初代サニーの基本である2ドアセダンだが、これは1969年のサファリラリーにプライベートで出場した仕様。隣はテスト的に数レースにしか出場していないと思われる日産ワークスのレーシング仕様。作例のモデル選びからして、なんともマニアックである。
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1/24の「アルファ・ロメオ75エボルツィオーネ」。1/43の完成品なら見たことがあるが、1/24のモデルは珍しいと思っていたら、なんとフルスクラッチとのことだった。
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往年のオオタキ製1/16「アルファ・ロメオ・ティーポ33/2ストラダーレ」をモディファイした作品。タイヤはタミヤの1/18「マクラーレンM8A」から流用し、インテリアはムゼオアルファ仕様にアレンジしてあるという。
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イタリアのエッシー製1/24「フィアット・アバルト131ラリー」をベースに、アバルトが俗にシルエットフォーミュラと呼ばれるグループ5参戦を想定して1台だけ試作したという「アバルト035」にモディファイ。プラバンとエポキシパテを使って、グラマラスなボディーの造形を巧みに表現している。
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1970年代、ボンネット、ドア、トランクが開閉式で、モーターライズながらエンジンや室内も当時のレベルでは精密に再現された、国産スポーティカーを中心とする1/20のキットが、バンダイやニチモなどから数多くリリースされていた。バンダイは「ポルシェ914」「フォルクスワーゲン・ゴルフ」「ルノー5」「BMW 2002」などの輸入車もモデル化していたが、これもそのひとつである「フィアットX1/9」。もともとボディーはフル開閉が特徴だが、さらにアレンジを加えてディテールアップしている。
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ナカムラというメーカーからリリースされていた1/24キットをベースに、というものの、実際はほとんどの部分を作り直したという「フィアット・アバルト2000クーペPF」。ピニンファリーナが1969年に製作したコンセプトカーだが、版権意識の希薄だった昔は、写真だけを頼りに相当にマニアックなクルマもモデル化されていたのだ。ちなみに私は、無名メーカーから出ていたゼンマイ駆動の「イソ・グリフォA3/C」を作った覚えがある。
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奥は1960年代にヤマダからリリースされていたという、希少な「ロータス・レーシングエランS2」。1/22という半端なスケールで、オリジナルはドンガラのみのモーターライズだったキットを、ボディー整形から始まって各部をディテールアップ。手前はオーロラ(アメリカ)製の1/32「ローラT70」。
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ジオラマも展示されていた。中央はディズニー映画『ラブ・バッグ』の主役である「ハービー」こと「フォルクスワーゲン・ビートル」が、ルート66で朽ち果ててしまっている図。塗装のカスレ具合、ウィンドウのくもり方、サビ具合などのウェザリング(汚し)がお見事。
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1/32初代「マスタング」にサイクル野郎風の少年をあしらったジオラマ。こちらも触れたら手が赤くなりそうなサビサビのボディーパネルや割れたウィンドウガラスの表現がすばらしい。
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1/10という大スケールの「フィアット124」。プロポーションといい、ディテールといい、文句のつけようがないと思っていたら、なんとフィアット社内で製作された“ワークス作品”で、1930年代から70年代までフィアットの設計を統括したダンテ・ジアコーザが所有していたものという。そんな品がなぜ日本に? と尋ねたところ、イタリアのebay(オークションサイト)に出品されていたとのこと。
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過去にマンガ『サーキットの狼』の主人公である風吹裕矢の愛車「ディノ・レーシングスペシャル」や3リッター時代の「トヨタ7」のレプリカなどを製作しているカスタムカー工房のノーチラス・スポーツカーズの出展。右は1/3のトヨタ7のボディーで、左は1/5の「日産R381(グループ6仕様)」の原型である。