新型「日産エルグランド」はこうして生まれた! 開発のキーマンがその背景を語る
2025.11.07 デイリーコラム 拡大 |
日産が「ジャパンモビリティショー2025」に新型「エルグランド」を出展!(参照) およそ16年ぶりにフルモデルチェンジする大型ミニバンは、どのようなクルマに仕上がっており、またそこにはどんな狙いや思いが込められているのか? 商品企画の担当者に聞いた。
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「研ぎ澄ます」という戦略
新型エルグランドの商品企画を主導した中村智志さんは、当初「いまのマーケットを支配している競合とどうやったら戦っていけるのか。ブランド力や販売力、そして現状の販売台数の差からすると、まともにやっても勝てない」と、相当頭を悩ませた様子だ。そして「なにか研ぎ澄ませていかないと勝ち目はない」という結論に至ったという。
その「研ぎ澄ます」とは具体的にどういうことか。その一例として中村さんは、「新型のパワートレインは『e-POWER』(シリーズハイブリッド)と『e-4ORCE』(電動4WD)の組み合わせひとつだけ」と説明する。「通常ではバリエーションを持たせたいので、純エンジン車を用意したりとか、二駆と四駆を設定したりしたくなるが、新型ではコンセプトの『リミットレスグランドツアラー』を実現できるものに絞った。一点勝負という考え方でパワートレインはひとつのみにして、そこを研ぎ澄ませた」と説明する。より完成度を上げ、高みを目指したのだ。
もう見下ろされない
開発時にはユーザーの声も多く聞きに行ったという。具体的にどういう声があったのか。そこで聞かれたエルグランドの強みは、「運転して本当に楽しいんだよね」というもの。「それは自信にもつながるし、うれしいところだった」と中村さんは語る。「後席を重視していくと、運転の楽しさのプライオリティーは下がってしまう。インタビューしたなかでは『ミニバンを買うために運転する楽しさは捨てた。誰かが喜んでくれるのであればそれでいい』という話も出た。しかしエルグランドは、常に運転する楽しさを届けてきた。これこそが、日産しかお届けできないこと」と気づいたそうだ。
いっぽうで、改善の要望があったのは“高さ”だったという。「ちょっと背が低くて(競合等から)見下ろされるのが嫌なんだよねという声が多くあった。運転して楽しい。だから低床にしたのはいいのだけれど、昨今のラグジュアリーミニバンのなかでは背が低いので、見下ろされるんだよね」と。そこで新型では、新しいパッケージを与えて全高を現行車より90mm以上アップ。全幅も40mm近く拡大し、競合車よりもサイズアップを果たした。
中村さんはエルグランドが目指す運転の楽しさについて、「『GT-R』などのようなスポーティーな運転の楽しさではなく、ミニバンのなかでもシャキッと動いてくれるとか、自分で運転していて高揚感が生まれるとか、そういうことも含んでの楽しさ」と述べ、それを実現するために、e-4ORCEとともに『インテリジェントダイナミックサスペンション』を採用。これにより、ロール方向だけでなくピッチング方向の動きも抑えられることから、「本当に乗り心地がよいクルマに仕上がった」と自信をみせる。
運転の楽しさも“おもてなし”もおろそかにしない
今回のターゲットユーザーは、「子育てが終わった方」と中村さんは語る。「想定は50代の男性で、奥さまと、大学に入学したくらいのお嬢さまがいる。子育てが終わって第2の人生を始めるにあたり、このクルマで自分の親しい人や家族とどこかに出かけていくような使われ方を想定している」。
中村さんは、「後ろに乗っても本当に心地いいけれど、運転しても本当に楽しい」と何度も強調。奥さまがドライバーズシートに座るかもしれないですねと問うと、「どちらかというと、ドライバーは想定ターゲットの旦那さんで、『家族や親しい方をもてなすドライバーズカー』というイメージ。奥さまはどちらかというともてなされる側で、ぜひ助手席で会話を楽しんでほしい」とのこと。そのために、先代から引き続き助手席にもオットマンを採用したそうだ。
2026年夏ごろに正式発表される新型エルグランド。果たして市場がどう反応するのか、このクルマに対し、競合はどう動くのか、大型ミニバン市場の動きに注目したい。
(文=内田俊一/写真=日産自動車、内田俊一、webCG/編集=堀田剛資)

内田 俊一
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