いすゞオーナーズミーティング2011(後編)
2011.06.22 画像・写真(前編からのつづき)
2011年6月12日、愛知県岡崎市にある風光明媚(めいび)な「くらがり渓谷」の駐車場で、「いすゞオーナーズミーティング2011」が開かれた。SUVを除く乗用車生産から撤退してすでに20年近くが経過し、トラック、バスおよびディーゼルエンジンの専業メーカーとなって久しい「いすゞ」だが、かつては「ベレット」「117クーペ」「ジェミニ」「ピアッツァ」といった個性的な乗用車をもラインナップしていた。そうした「いすゞ」製の乗用車とSUV、一部の商用車をこよなく愛す人々によって、10数年前から毎年この時期に開催されているのが「いすゞオーナーズミーティング」である。当日、会場に全国から集まった約130台のなかから、リポーターの印象に残ったモデルを紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)

親会社だったGMの意向により、ドイツのオペルが開発を主導する「ワールドカー」構想から1974年秋に生まれた初代「ジェミニ」。これは通称「逆スラント」と呼ばれるノーズを持つ79年「1800LS」。当時マニアの間でお約束だった兄弟車の「オペル・カデット」用のグリルとミラー、エンブレムを装着した「カデット仕様」である。フロントのエアダム、カンパニョーロ103Eホイール、マーシャルのヘッドライトもドレスアップの定番アイテムだった。
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親会社だったGMの意向により、ドイツのオペルが開発を主導する「ワールドカー」構想から1974年秋に生まれた初代「ジェミニ」。これは通称「逆スラント」と呼ばれるノーズを持つ79年「1800LS」。当時マニアの間でお約束だった兄弟車の「オペル・カデット」用のグリルとミラー、エンブレムを装着した「カデット仕様」である。フロントのエアダム、カンパニョーロ103Eホイール、マーシャルのヘッドライトもドレスアップの定番アイテムだった。
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1981年秋に2度目の大がかりな変更を受けた初代「ジェミニ」の、おそらく「クーペ1800ZZ/R」。「ZZ」(ダブルズィー)は「117クーペ」に使われていた直4DOHC1.8リッターエンジンを積んだホットモデルで、79年秋に登場。この個体はドアミラーなので、83年秋以降の最終型かもしれない。ちなみに「ジェミニ」は「ベレット」の後継モデルということで、74年のデビュー当初は「ベレット・ジェミニ」と名乗っていた。
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初代「ジェミニ」のシャシーにジウジアーロの手になる流麗なハッチバッククーペボディを載せたモデルが、ちょうど30年前の1981年6月にデビューした初代「ピアッツァ」。ショーカーをそのまま市販化したような、フラッシュサーフェスが徹底されたボディは、いすゞ開発陣の志と技術力の高さを物語る。この個体は83年「XE」で、フェンダーミラーをドアミラーに替え、前後にスポイラーを装着したほかはオリジナルの面影をとどめている。
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「古いクルマと言われるのがイヤ」というオーナーが、他車用部品を流用して1986年「ピアッツァXS」をアップデートしたカスタム。ヘッドライトは2代目「三菱ディアマンテ」用、ドアミラーは2代目「スバル・レガシィ」用という。フロントグリル中央の「DMC」(デロリアン・モーター・カンパニー)のエンブレムは、「ジウジアーロつながりということで……」とか。
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1985年に「街の遊撃手」というキャッチコピーを掲げて登場、パリの街を縦横無尽に走り回るテレビCMが話題を呼んだ「FFジェミニ」。これは翌86年に追加されたホットモデルの「ジェミニ・イルムシャー」で、直4SOHC1.5リッターのターボエンジンにイルムシャー・チューンの足まわりと内外装を持つ。基本となるスタイリングを手がけたのはジウジアーロで、それゆえセダンはランチア・テーマなど同時代の彼の作品との近似性を感じさせる。
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閉会を待つように降り出した雨のなか、会場から去っていく「ジェミニZZハンドリング・バイ・ロータス」。1988年に追加された、当時いすゞと同じGM傘下にあったイギリスの「ロータス」が味付けを施したモデルで、直4DOHC1.6リッターエンジンを搭載。ロータスにちなんでブリティッシュグリーンがイメージカラーだった。「ハンドリング・バイ・ロータス」は、ピアッツァやビッグホーンにも設定された。
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1990年にフルモデルチェンジされた「ジェミニ」(先代の途中で「FF」がとれた)のセダンの高性能モデルが勢ぞろい。左端がDOHC1.6リッターエンジンを積んだ「ハンドリング・バイ・ロータス」で、あとの4台はDOHC1.6リッターターボ+フルタイム4WDの最強バージョンである「イルムシャーR」。スタイリングはいすゞの社内デザインだが、親会社だったGMの意向を反映して、当時のシボレーやポンティアックのコンパクトに近い雰囲気だ。
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SUVを除き、いすゞ最後のオリジナル乗用車となった3代目「ジェミニ」に、セダンより少々遅れて加えられた「クーペ」のホッテストモデルである「イルムシャーR」。スタイリングはこれより3年後に登場する4代目「シボレー・カマロ」の縮小版のようでもあり、GMの影響力の強さがしのばれる。双子車としてヤナセ系列で販売された「PAネロ」があり、これはアメリカでは「ジオ・ストーム」の名で販売された。
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クーペよりさらに半年ほど遅れて1991年に3代目「ジェミニ」に追加された「ハッチバック」。ドアから前はクーペと共通で、スポーツワゴン的なモデルである。発売から2年ちょっと後の93年7月をもってジェミニは生産中止されてしまうため、今となってはかなりのレア車。これにも「クーペ」と同様に「PAネロ」バージョンがあるが、そちらはさらに希少であるはず。
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ビッグホーンなどのSUVも、20台以上来場していた。
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1997年にデビューした「ビークロス」。ビッグホーンをベースに、サイモン・コックス(現GMデザイン部長)の手になるユニークなボディを着せた、いすゞお得意の「市販ショーカー」のようなSUVである。マニアックなファンが多く、以前はクラブ単位で多数エントリーしていたときもあったが、今回は参加2台とやや寂しかった。ただしギャラリーとしては数台来場していた。
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1994年「いすゞロデオ・ダブルキャブ」。88年から94年まで国内販売されていた4WDピックアップトラック。前身となるのはピックアップトラック「ファスター」の4WD版の「ファスター・ロデオ」である。ちなみに初代「ビッグホーン」も、この「ファスター・ロデオ」から派生したモデルであり、当初は「ロデオ・ビッグホーン」と名乗っていた。
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刻み込まれた年輪が貫録を感じさせる1972年「エルフ・ハイルーフ」。2トン積みキャブオーバートラックのベストセラーだった2代目「エルフ」のシャシーに、アルミ製ボディを架装したウォークスルーバンである。茨城からやってきたというオーナーに「大変だったのはでは?」と尋ねたところ、「ぜんぜん。いつまでたっても飽きないから楽しいよ。クルマは乗ってて楽しいのが一番だね!」とのこと。ごもっともです。
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今回は大型バスが4台参加した。右の3台は恒例となっている「ボンネットバス試乗会」に供される1950〜60年代のボンネットバスだが、奥に見えるのは現代の路線バスではないだろうか?
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そのとおり元・路線バスだった。カラーリングでおわかりの方もいるだろうが、都内の某バス会社から払い下げられた1996年「いすゞKC-LV380L改」。バスマニアのオーナーは、これまた茨城から経費節約のために下道も使って9時間かけてやってきたという。ちなみに駐車場は地元のバス会社に間借りしており、ときおりボランティアで近隣の老人会や子供会のリクリエーションの送迎をしているそうだ。超マニアックな趣味が、じつは地域社会に貢献している。とってもスマートで、カッコイイ。
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今回の参加車中、最長老の1959年「いすゞBX841」。直6OHV6.1リッターのディーゼルエンジンを積んだ、全長8.2m、定員49人、空車重量5360kgという大型バス。「ボンネットバス試乗会」で、来場者を楽しませた。
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「BX841」を軽々と操るドライバーが、ギアチェンジの際に「ダブルクラッチ」をキメたところ。ステアリングをはじめ、操作類はもちろん「オール・ノンパワー」である。子供の頃、バスに乗ると運転手さんの一挙手一投足を見逃すまいと、熱心に眺めた記憶のある人も少なくないのでは?
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木張りの床も懐かしい、「BX841」の客席。
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ミーティングを締めくくるプログラムは、大人も子供もいっしょに楽しめる恒例の「ジャンケン大会」。勝ち抜いた人から好きな賞品をもらっていくというシステムで、大いに盛り上がった。
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来年の再会を約して、参加者とスタッフ全員がそろって記念撮影。