日産デュアリス 20G(FF/CVT)【ブリーフテスト】
日産デュアリス 20G(FF/CVT) 2007.08.08 試乗記 ……273万5750円総合評価……★★★★
イギリスで生産される日産の逆輸入車「デュアリス」。クロスオーバールックのスタイリングだけではなく、走りも欧州仕込みなのか?
ヒットの予感
「日産デュアリス」は素直にカッコよさが光る。これならスタイリングだけで選んでも間違いではないだろう。インテリアもなかなか魅力的に処理されており、あえてセダンを買う必要のない顧客にもアピールしそう。SUVの中でも大き過ぎないサイズとあってヒットする予感あり。
走行性も上々。乗り心地はしっとり落ちついておりSUVにつきまとう荒さがない。ボディもしっかりしている。ロードノイズ的な微振動はやや気になるも、路面によって変化があるのでタイヤのせいにできる。ハンドリングも破綻なし。「マツダCX-7」の出現で判断基準は変わってしまったが、デュアリスは重量が思いのほか軽く仕上がっており、ドタドタした鈍重感とは無縁。4WDでなくとも普段の使い途にはFFで十分。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2004年のジュネーブショーにコンセプトモデルとして登場。2007年2月から「キャシュカイ」として欧州で販売されてきたクルマが、邦名「デュアリス」。日産の欧州デザインセンターでデザインされ、生産もイギリスのサンダーランド工場で行われる逆輸入車である。
日産ルノーアライアンスの「Cプラットフォーム」を、「日産ラフェスタ」「同セレナ」や「ルノー・メガーヌ」などと共有。スタイリングは、「オンとオフのデュアルライフを提供したい」というネーミングの由来どおり、都会派クロスオーバースタイルが採り入れられた。
(グレード概要)
デュアリスのパワートレインは、2リッターの直列4気筒エンジンと、6段マニュアルモードつき無段変速機(CVT)の組み合わせのみ。駆動方式は、FFと4WDがラインナップされる。
テスト車は販売の主力になると思われるFFモデル。「20G」は中でも上級グレードとなり、キセノンヘッドランプやガラスルーフ、イモビライザーなどが標準装備となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
エンジン回転計と速度計を主体とするメーター類やダッシュ・センター部の凸凹した立体的な処理は造り込みも上々で魅力的。平坦な棚状ではなく傾斜をつけたあたりはGT風でもある。
オーディオや空調関連もシンプルにしてすっきりとわかりやすい。ナビの位置も適切で角度も問題なし。ステアリングホイールのホーンパッド付近はやや大きめで目障りなところもあるが、ホイールは真円に回って気持ちよく精度感も伝わってくる。
(前席)……★★★★
クッションの厚みを感じさせるデザインのシートは、座るとやや小ぶりに感じる反面、タイトにフィットしてホールドを助ける。座面の後傾角もちゃんとあり、総じて腰の位置決めに貢献するが、座面クッションの硬さ配分が中央寄りとなり反発感として硬めに感じる。もうすこし中央部から後ろを柔らかくし、前端にいくに従い硬くすると背面への依存が増えてくるはず。レバー式のサイドブレーキはやっぱりコレだよなと納得。2度踏みリリース方式の不安感とは対照的に頼もしくみえる。
(後席)……★★★
広々感は多少そがれるものの、座面は高くきちんと膝を曲げて座れる。背面の角度は比較的立っているが、デレッと崩れるよりもキチンと背筋を延ばして座るほうが疲れない。折り畳めるタイプにしてはクッションの厚みも確保されている。ヘッドクリアランスの余裕はそれほどでもないが、窮屈に感じることはない。高めのフロアによじ登る感覚はこの手のクルマゆえ、やむなし。
(荷室)……★★★
外見上はさほど広く見えないが、フロア面積だけでもこのクラスの乗用車のトランクよりは広い。高さ方向は、絞られたルーフ形状のため上は低めながら、バンパー高より低いフロアのおかげで、小物を転がしておいてもゲートを開けたとたん転がり落ちる心配はなさそう。スタイリング重視のバックドアは傾斜も強く大きく湾曲しているから、四角く大きな箱物などは苦手か。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
車両重量は1430kgと、見た目より軽く仕上がっており、2リッターでも走りは軽快。CVTによる加速はエンジン回転が頻繁に上下しないので、エンジンの良さを実感しにくいが、ギアを固定して走るとトルク/レスポンス共に良好なのがわかる。
最初にエンジン回転が上がってそのまま維持する感覚ゆえ、騒音として喧しさが持続することになる。とはいえ、ゆっくり回転を上げてゆくと動きはトロいから、気がつけば発進時はマニュアルにして、速度が上がればDへ戻すという操作をしていた。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
もっと重いクルマを思わせるような一種重厚な乗り味があり、総じて姿勢はフラットで快適。慣れてくると微細な領域が気になってくるが、小ストローク域の微振動においてダンパー減衰力がややでしゃばり過ぎ。こうなるとシートクッション(座面)の硬さも気になってくる。
ハンドリングは見た目の重心高の高さを感じさせないもの。ロールセンターも十分に高く重心高に近づけられている。ロール感もいい。しかしCX-7ほどのソリッド感はなく、コーナリングを楽しむ領域には至ってない。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2007年7月3日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年式
テスト車の走行距離:4783km
タイヤ:(前)215/60R17(後)同じ(いずれもブリヂストン DUELLER)
オプション装備:カーウイングス対応TV&HDDナビゲーションシステム+ステアリングスイッチ+バックビューモニター+サイドブラインドモニター=34万6500円/SRSカーテンエアバッグシステム+運転席・助手席SRSサイドエアバッグシステム+VDC+後席ELR3点式シートベルト=13万6500円/フォグランプ=3万2000円(ディーラーオプション)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:647.7km
使用燃料:61.63リッター
参考燃費:10.5km/リッター

笹目 二朗
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