トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”(4WD/8AT)/GRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ(4WD/6MT)/GRカローラRZ(4WD/8AT)/GRカローラRZ(4WD/6MT)/GRヤリスMORIZO RR プロトタイプ(4WD/8AT)
理想の走りを求めて 2026.05.04 試乗記 進化を続ける「トヨタGRヤリス」と「GRカローラ」の、最新バージョンに試乗。硬派な4WDスポーツならではの、サスペンションチューニングの難しさを知るとともに、100台の限定モデル「GRヤリスMORIZO RR」に、そのひとつの回答を見いだすことができた。間断のない進化に驚かされる
2020年の登場以来、細かな年次改良を繰り返して、進化を続けるGRヤリス。「BORN FROM WRC」のコンセプトが示すとおり、その目的はラリーでの勝利であり、コンペティションマシンとして、こうしたエボリューションを重ねていくのはしごくまっとう。むしろ称賛すべきことだ。とはいえ、2025年4月に「25式」(2025年イヤーモデルの意味)が登場し、同年9月に「エアロパフォーマンスパッケージ」が追加されたばかりだというのに、この2026年3月に、早くも次なる改良版が登場したのには驚いた(参照)。しかもGRカローラにいたっては、「25式」に後期型が登場する強引さだ。
ということで今回は、その「26式」GRヤリスと、2025年11月にバージョンアップした「25式後期」GRカローラ(参照)に試乗。また2026年の東京オートサロンでプロトタイプが公開された、国内100台限定(欧州も100台)の「GRヤリスMORIZO RR」も、富士スピードウェイの構内のみでだが走らせることができた。
最初に紹介したいのは、GRヤリスの26式。試乗は2ペダルとなる8段GR-DAT車からスタートだ。話題となっている「GRステアリング」でのパドルシフトを試すには、うってつけの組み合わせである。
しかし発着場となる富士スピードウェイの「モビリタ」を出て、東ゲート手前の荒れた路面でまず感じたのは、実はステアリングの取り回しではなくて、乗り心地の変化だった。あれっ、こんなに柔らかかったっけ? 段差を乗り越えたときの初期タッチが優しくて、そのあとダンパーが、素早くスッと縮む。今回から「RZ」グレードのタイヤにはブリヂストン製の「ポテンザ レース」が採用されており、その剛性が引き上げられたおかげで、ダンパー減衰力を前後ともに最適化することができたという。タイヤそのものも、ハイグリップタイヤとは思えないほどサラッとしていて、乗り心地が良好だ。
ただ、乗り心地をよく感じる最も大きな要因は、GR-DATだろう。6段MT車に比べて20kg増したフロント荷重が、路面からの突き上げを絶妙に抑えつけている。とはいえ足まわりそのものはハッキリと固めだから、段差だとこれが伸びきる前にドスン! と落ちる。低速域だとその乗り心地は、やっぱりまだまだスパルタンである。
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スパルタンな足まわりをどうみるか
しかし、このスパルタンさがあるからこそGRヤリスは“ゾーン”に入ってからの走りががぜん引き立つ。当日はワインディングロードでの走りに終始したが、むしろこの荷重領域では、速さよりも上質さを、余裕をもって味わうことができた。
ブレーキタッチのよさは相変わらずで、微妙な踏力に対しても、ソリッドかつなめらかに制動力を発生させてくれる。トルクセンサー内のトーションバー剛性を最適化し、ソフトウエア制御を変更したという電動パワーステアリングの操舵感も、ねっとりいい感じ。ブレーキからタイヤ、そして足まわりへと伝わる一連の動きが、そのフィーリングと一致しているのも見事だ。
話題のGRステアリングは、旧タイプとの比較試乗がなかったせいもあるけれど、正直その有用性はわからなかった。ステアリング径は5mm小さなφ360mm径となり、曲率の高いカーブでも持ち替え頻度が下がった。また小径化のおかげで、シフトパドルの操作もしやすくなった。さらにはスイッチ類がホーンボタン周囲に移設され、ステア時に手のひらでこれを押してしまう誤操作が抑制されたというのだが、あまりにその操作が自然すぎて、これらをまったく意識せずに試乗を終えてしまった。
GRヤリスに関しては、個人的にはクローズドコースなら6段MTのほうが好みだ。その排気量からは信じられないほどの爆発力を発揮する1.6リッター直列3気筒ターボエンジンのトルクを、剛性感あふれるシフトノブでさばききる刺激。反力の強いクラッチをためらいなくつないだときの蹴り出しの強さに、ドバッと湧き出すアドレナリン。まさにコンペティションマシンを走らせる楽しさが味わえる。
しかし今回、操作系や足まわりがスムーズさを増したことで、サーキットでもGR-DATのシームレスさが際立ってくるのではないかと感じた。いわんや常用域では、あのクラッチを操作しないでよいのだから、トータルパフォーマンスとしてはGR-DATに軍配が上がる。
「あとは、これでもう少し足まわりがしなやかだったら」。そんな風にも思ったけれど、このときは「このスパルタンさがあるからこそ、GRヤリスなのだ」と自分を納得させた。下手にトータルバランスを考えて牙がそがれるより、モータースポーツのベース車両として、締めるべきところは締めたほうが、コンセプトがブレないのだろう……。
しかし、最後に試乗したMORIZO RRで、その思いは180度ひっくり返されることとなった。
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より幅広い層に受け入れてもらうために
このままMORIZO RRの話をしたいところだが、試乗の順に、次いでは25式後期となったGRカローラに触れておこう。これは2025年9月に発表された改良モデルだ。25式からの進化は、ボディー/エンジン/サウンド系の3つ。骨格強化としては、海外サーキットでテストした結果から、構造用接着剤の塗布量を新旧「RZ」同士の比較で13.6m延長し、合計で32.7mとした。
エンジン面では、スーパー耐久やジムカーナでのデータから、エアクリーナー下方に二次吸気口となる「クールエアダクト」を追加。GRカローラは高回転までエンジンを回した際(具体的には4500rpm以上だという)にエンジンルームに熱がこもりやすく、吸入空気温度を下げたかったという。そのクオリティーはメーカーならではで、GRヤリスにもつけたいと思うユーザーもいることだろう。これについては検討中とのことだった。
そして最後は、「JBLサウンドシステム」(メーカーオプション)を軸としたサウンドコントロールだ。具体的には、今回からサブウーハーを追加することで9スピーカー化。「アクティブノイズコントロール」のチューニングも最適化し、車内の不快なこもり音を低減した。いっぽうで、加速時や減速時の駆動力変化に応じたサウンドを「アクティブサウンドコントロール」で車内に流し、アクセルオフ時に鳴るバブリング音も再現したという。
GRカローラがこうしたサウンドエフェクトに熱心なのは、競技色が強いGRヤリスに比べて、想定されるユーザー層が幅広いからだろう。そして、GRヤリスよりひとクラス大きなCセグメントのボディーに、同じパワーユニットを搭載しているから。排気系に3本出しのアグレッシブなマフラーを採用したのも、よりGT的な乗り味となるカローラを、スポーツカーに仕立てたかったからだ。とはいえちょっとやりすぎたようで、この25式後期からは、「エコ」モードに入れると排気バルブが閉じて、排気音を静かにできるようになった。
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求む「ツーリング仕様」
GRヤリスと比べてホイールベースが80mm長く、車重も200kg重いGRカローラの乗り味は、確かにどっしりと重厚だ。またGRヤリスと同じ理由で、GR-DAT車のほうが常用域での突き上げ感が和らいでいる。相対的な加速感や瞬発力は、当然GRヤリスのほうが強い。しかし常用域で走らせる限り、GRカローラの韋駄天(いだてん)ぶりだって十分以上に刺激的だ。45mmワイドな全幅がもたらすコーナリングには踏ん張り感があるし、フルタイム4WD「GR-FOUR」のトラクションは力強く頼もしい。
だからこそ思うのだが、GRカローラにこそ、GRヤリス以上に、もっとしなやかな足まわりが欲しい。4枚のドアを持ち、荷物もたくさん積めるカローラボディーだからこそ、「ポルシェ911 GT3」でいうところの「ツーリングパッケージ」のような仕様があれば、実はそれが一番人気になると思うのだ。
聞けば25式で採用したリバウンドスプリング内蔵式ダンパーにも、高速領域で姿勢を安定させるだけでなく、常用域での乗り心地をよくする狙いがあったという。リバウンドスプリングを備えることで、伸び側の減衰力を和らげることができるからだ。
それ以上、足まわりの特性を乗り心地の側へと振らなかったのは、本気で走らせたときの性能を落としたくなかったからだろう。両者をバランスさせるには電子制御式ダンパーが有効だけれど、それを使えばコストも上がる。だからぜひとも、ツーリング仕様の足まわり設定を考えてほしい。
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「GRヤリスMORIZO RR」が示したひとつの解
このように、最新のGRヤリス/GRカローラの試乗を通じて感じた「走りを取るべきか、乗り心地を取るべきか」の問題だが、その答えは最後に乗ったGRヤリスMORIZO RRが持っていた。2026年5月下旬に注文受け付けが開始されるこのクルマの試乗車は、あくまでプロトタイプ。ナンバーも取得していないことから、当日は富士スピードウェイの構内をゆっくりと走らせただけだったが、これがまさに、求めていた乗り味を示したのである。
GRヤリスとしては2度目となる“MORIZOネーム”の特別仕様車は、2025年のニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦を通じてつくり上げられた。それはモリゾウこと豊田章男会長が、あまりの楽しさから予定を大幅に上回る、合計15周の周回を重ねたレースだ。そうして出来上がったMORIZO RRの足まわりは、誰が乗ってもわかるほどしなやかに動いた。一番の立役者は新開発のリアウイングで、これが高速領域での接地性を高めてくれたおかげで、ダンパーの特性を低中速域での追従性にフォーカスさせることができたという。
もちろん、この足まわりが、ダウンフォース量の異なる基準車に即マッチするとは思わない。しかし、少なくともローダウンフォース領域での乗り心地は、明らかに快適だ。この快適性を生かしながら、いかに高速域での安定性を増して行けるかが、「27式」でのテーマになるといい。
高いボディー剛性を基盤に、バネ下のタイヤをしっとり動かすMORIZO RRの走りは上質で、あらためてGRヤリスが持つ素性のよさを確認できた。もし自分がGRヤリスを手に入れたとしたら、こうした足まわりを与えたい。限定100台となるMORIZO RRの試乗は、むしろクルマ好きのカスタム意欲を盛り上げる、すてきな締めくくりとなった。
(文=山田弘樹/写真=向後一宏、トヨタ自動車/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1805×1455mm
ホイールベース:2560mm
車重:1300kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:304PS(224kW)/6500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3250-4600rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y XL/(後)225/40R18 92Y XL(ブリヂストン・ポテンザ レース)
燃費:10.8km/リッター(WLTCモード)
価格:538万7200円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
テスト距離:--km/リッター
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1805×1455mm
ホイールベース:2560mm
車重:1290kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:304PS(224kW)/6500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3250-4600rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y XL/(後)225/40R18 92Y XL(ブリヂストン・ポテンザ レース)
燃費:12.4km/リッター(WLTCモード)
価格:553万2200円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
テスト距離:--km/リッター
トヨタGRカローラRZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4410×1850×1480mm
ホイールベース:2640mm
車重:1500kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:304PS(224kW)/6500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3250-4600rpm
タイヤ:(前)235/40R18 91W/(後)235/40R18 91W(ヨコハマ・アドバン エイペックスV601)
燃費:10.4km/リッター(WLTCモード)
価格:598万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
トヨタGRカローラRZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4410×1850×1480mm
ホイールベース:2640mm
車重:1480kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:304PS(224kW)/6500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3250-4600rpm
タイヤ:(前)235/40R18 91W/(後)235/40R18 91W(ヨコハマ・アドバン エイペックスV601)
燃費:12.4km/リッター(WLTCモード)
価格:568万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
トヨタGRヤリスMORIZO RR プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:--mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:--PS(--kW)/--rpm
最大トルク:--N・m(--kgf・m)/--rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y XL/(後)225/40R18 92Y XL(ブリヂストン・ポテンザ レース)
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:プロトタイプ
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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