スズキeビターラZ(FWD)
毎日に+αのシアワセを 2026.05.09 試乗記 スズキが満を持して投入した、コンパクトSUVタイプの新型電気自動車(BEV)「eビターラ」に試乗。スズキの将来を占う量販BEVの第1弾は、「よいものを手ごろな価格で」という彼らのポリシーにたがわぬ一台に仕上がっていた。いうなれば出来のよい“ゲタ車”
2026年1月に発売されたスズキの新型BEV、eビターラに試乗した。結論から申し上げると――この単語を使うとメーカーやファンから怒られてしまうのかもしれないが、戸建て住宅に住む出来のよい“ゲタ車”を探している人には、すこぶるマッチする一台ではないかと思われた。
スズキeビターラとはどんなクルマかという点については、webCGの各種記事でこれまで何度も述べられてきたため割愛する。車両の詳細については、これとかこれとかをご参照いただければと思う。要するにスズキのBEV世界戦略の第1弾となるSUVタイプのモデルで、ボディーサイズは全長×全幅×全高=4275×1800×1640mm。グレードはベーシックな「X」と上級モデル「Z」の2種類あり、前者の駆動方式はFWDのみ(WLTCモードによる一充電走行距離:433km)、後者にはFWD(同:520km)と4WD(同:472km)が用意されている。
今回試乗したのは、容量61kWhのバッテリーと最高出力174PS(128kW)のモーターを組み合わせた、上位グレードZのFWDである。
無印良品やFrancfrancの品を思わせる
まずエクステリアデザイン。これはなかなか悪くない感じだ。待ち合わせ場所に駐車されていたeビターラを、後方から遠目で視認した際、それはシトロエンかなにかのニューモデルに見えた。リアビューはパリの6区あたりに路駐されているのが似合いそうなニュアンスであり、スズキの「S」マークが、シトロエンのダブルシェブロンに見える。まぁダブルシェブロンうんぬんについては「筆者が乱視だから」というのもあるかもしれないが、いずれにせよ、アルミホイールの意匠を含めてビジュアルは悪くない。
インテリアは「It's not bad(まあまあ)」といったところだろうか。デザインのトーン&マナーは今風でステキだが、質感的には、より高額なBEV、例えばおおむね同じボディーサイズの「ボルボEX30」あたりと比べると、一歩から一歩半ほどの差がある。もちろん、スズキeビターラとボルボEX30では車両価格も異なるので、これは当たり前の話でしかない。BEVとしては低価格なモデルのインテリアであることを考えれば、十分以上と評するべきだろう。eビターラの内装は、無印良品やFrancfrancあたりで売られているプロダクト、つまり「高額な製品ではないから質感がそこそこなのは当然だが、価格から考えれば十分なおしゃれ感と納得感はある」という製品群に似ている。
走りだしてみても、この印象は変わらない。ボルボEX30を走らせたときのような感動こそないが、その代わり、大きな不満もない。フロントに搭載されたモーターがもたらす加速は十分に力強く、その後の直進性も良好で、高速道路での乗り心地もまずまず良好。ほかの方のリポートでは「タウンスピードでは若干の硬さを感じる」という意味の報告があったかと思うが(その1、その2)、筆者の場合はそれも気にならなかった。
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実質的には非常にお安いクルマ
回頭時においては、筆者の私物であるそこそこの高性能車、つまり雑に運転してもクルマのほうで勝手に曲がってくれるタイプの車種と同じノリで「雑な進入→雑な回頭」を試みると、「おっとっと……」ということにもなってしまう。だが適切に減速させたうえで適切にステアリングを切っていけば、eビターラZ FWDはコーナリング性能でも特に問題はないと断言できる。
で、満充電状態からさんざんあちこちを走っても、バッテリーの残量計と走行可能な距離を示す数字は、そう大幅には目減りしない。それもそのはずで、Z FWDの一充電走行距離は520kmという、この車格としてはまずまずのもの。都内やその周辺を走り回ったぐらいではビクともしないというか、まったくドキドキはしないのである。
つまりスズキeビターラのZ FWDとは、筆者が確認したところによれば、おおむね下記のようなBEVであるということだ。
「すべてにおいて『ものすごくいい!』というわけでは決してないが、すべてにおいて『まあまあいい』」
一充電走行距離と後席の居住性(広さ)という個別のポイントについては「すごくいい」と評価するべきかもしれないが、総合的には「すべてにおいてまあまあいい」ぐらいの評価が、おおむね妥当であるはずだ。
そしてそんなスズキeビターラは、実質的には非常にお安いクルマである。
今回の試乗車であるZ FWDの車両価格は448万8000円だが、2026年4月1日~2026年12月31日登録分に交付されるCEV補助金の額は127万円。加えて各都道府県からさらなる補助金が出る場合もあるだろうが、国のCEV補助金だけで考えてみても448万8000円マイナス127万円で、eビターラZ FWDの実質的な車両価格は321万8000円。WLTCモードで520km走れるBEVの値段としては、なかなかのモノである。
ベーシックなXグレードでもよしと考えるなら、399万3000円マイナス127万円で実質的な車両価格は272万3000円。これはハイブリッドのCセグSUVとだいたい似たような価格である。こちらは一充電走行距離が433kmにとどまり、シート表皮はファブリック、運転席10wayパワーシートも付いていない等々あるものの、ADAS(先進運転支援システム)を含めクルマの基本的な部分は上級グレードと大きな違いはない。どうせボトムレンジでしょうと、隅には置けないグレードなのだ。
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お出かけのクオリティーを上げてくれる
このように、「BEVとしては非常にお安い」と「すべてにおいてまあまあいい」が合わさっているからこそ、スズキeビターラは冒頭で申し上げたとおり、「出来のよいゲタ車を探している人にはすこぶるマッチする」と考えられるのだ。
もしもあなたが、革靴やよそ行きのスニーカーみたいなBEVを探しているのであれば、それこそボルボEX30あたりを選ぶべきだろう。だが、ちょっとした用事やざっかけない集まりなどのために、わざわざお高い革靴を履く人などいない(……いませんよね?)。そういった用事や集まりであれば、なんてことはないゲタ的な履物にて、サクッと気軽に出かけたいところである。
しかしながら、あまりにも履き心地が悪かったり、あまりにもダサかったりするゲタは勘弁願いたい。できれば、ちょっといい感じのゲタやスニーカーで出かけたいと思うのが人情であり、お出かけのクオリティーを上げるための行為でもある。
そういったもろもろを考えると、このスズキeビターラというBEVは――特にその比較的安価なグレードは、かなり素晴らしいゲタであるように、筆者には思えるのだ。
「日産サクラ」ではさすがにちょっと小さいし、かといってボルボEX30あたりだとやや大仰すぎるし、正直ちょっと高いし――と考えている戸建て住宅に住む人=自宅に充電設備を設置可能な人にとって、スズキeビターラは「気軽に付き合えるBEV」として、なかなかよき一台である。
(文=玉川ニコ/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資/車両協力=スズキ)
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テスト車のデータ
スズキeビターラZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4275×1800×1640mm
ホイールベース:2700mm
車重:1790kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:174PS(128kW)
最大トルク:193N・m(19.7kgf・m)
タイヤ:(前)225/55R18 98V/(後)225/55R18 98V(グッドイヤー・エフィシェントグリップ2 SUV)
一充電走行距離:520km(WLTCモード)
交流電力量消費率:131Wh/km
価格:448万8000円/テスト車=463万1440円
オプション装備:ボディーカラー<オピュレントレッドパールメタリック ブラック2トーンルーフ>(5万5000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ジュータン>(3万4100円)/ETC車載器(1万5400円)/ドライブレコーダー(3万8940円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:2379km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6)/高速道路(4)/山岳路(0)
テスト距離:110.5km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:6.1km/kWh(車載電費計計測値)
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玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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